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第13話 初討伐戦

「それじゃあ、早速行かせてもらうぜ!」


 荒々しい声とともに男の魔族ゲイルは突貫した。その先にいるのはラストである。しかし、その前にリナが立ち塞がった。


「あなたを潰してもう一体の悪魔を潰せばそれで終わりよ」


「ま、そう簡単に上手くいけばな」


「っ!?」


 その瞬間、リナの体は突如として浮かび上がる。

 そのことに驚きながらもゲイルを見てみるが特に何かした様子はない。

 そのことがわかるとすぐさまもう一体の魔族へと目を向けた。


「浮遊――――あんたの相手は私だから」


 そう告げた女の魔族レダンは魔力で浮かせたリナをそのまま吹き飛ばしていく。

 その間にゲイルはラストへと拳を振るった。


「貫け――――穿爪」


 ラストは咄嗟にその拳を受け止めようとしたがすぐさま嫌な予感がして避けへと切り替える。

 直後、半身になって避けたラストのすぐそばを頬を切り裂くような風が通り抜け、地面に穴をあけた。

 ゲイルの魔力特性「貫くもの」による風の槍である。


「よく避けたな! だが、まだ俺のターンだってな!」


 ゲイルはすぐさま追撃を食らわせるように空中で回し蹴りをしていく。

 それに対し、ラストは左手をかざして熱い風を吹かせていく。


「熱波」


「熱っ!――――ぐっ」


 ゲイルの蹴りは熱波によって弾き飛ばされ、さらには熱による追加ダメージで一時的に硬直した。

 その一瞬の隙に紅黒く染めた右拳をゲイルの腹部へと叩き込んでいく。


 ゲイルはそのまま吹き飛ばされゴロゴロと地面に転がっていった。

 その姿をすぐそばにいたレダンはバカにするように笑う。


「アハハハ! 粋がって突っ込んだら返り討ちにされてやんの!」


「そういうお前も油断してると普通に食らうからな」


「あんたと一緒に――――」


 レダンがそう言いかけていると正面からいくつもの氷の礫が向かって来ていた。

 しかし、レダンの魔力特性「浮かすもの」で半径10メートル範囲では全てが浮かす対象になるため、その礫すら魔力で捉えて跳ね返していく。


 だがその瞬間、まるでその礫を跳ね返す瞬間を狙っていたかのようなタイミングでレダンのすぐそばの地面から斜めに氷の杭が突き出してくる。


 それを目の端で捉えたレダンはすぐさましゃがんで攻撃を避ける。

 しかし、その避けることすら把握していたかのようにしゃがんだすぐ下の地面から氷の拳が突き出してきて、その攻撃がレダンの顔面に直撃していく。


 空中で大きくのけ反りながら吹き飛んでいくレダンに近くで見ていたゲイルはバカ笑いで告げていった。


「ギャハハハ! だから言っただろ! 油断してっからだ!」


 空中で体勢を整えたレダンは地面に着地すると鼻から流れた血を親指で拭っていく。

 そして「絶対殺す」と呟きながらゲイルに提案した。


「ゲイル、ここは一緒に戦うとしましょう。

 あの悪魔憑きを活かして捕らえるなら今のままじゃダメみたいだし」


「同感だ。アイツら思ったより面倒だしな」


 そう二人がタッグを組むことを考えた一方で、ラストとリナも同じようなことを考えていた。


「エストラクトさん、ここは共闘しない?」


「そうね。中級魔族が二体はさすがに厄介。それにこれ以上悪魔に好き勝手されてる本来の体の持ち主が可哀そうだしね。

 なら、最初に厄介な女魔族の方から。私がサポートするからあなたの機動力で接近して」


「わかった。その後に男の魔族の方だね」


「いや、そいつは私に任せて」


 ラスト達も魔族達もそれぞれで作戦が決まると最初に動こうとしたのは魔族――――であったが、その動き出しはすぐに止めた。

 なぜならラストが不可解な体勢を取っていたからだ。


 両手を地面につけてお尻を突き上げる――――まるでクラウンチングスタートのような体勢で準備していてその後ろには両手を突き出しているリナの姿が。


「何をするつもりだ?」


「なんだっていいわよ。さっさと攻撃しなさいよ」


「わかってるわ!」


 レダンに急かされるようにゲイルは先ほどラストに放った透明な風の槍を連続で突き出していく。

 それに対し、ラストはリナに「行くよ」と聞くと「大丈夫」と帰って来たのでそのまま思いっきり走り出した。


 憤怒の悪魔の持つ身体強化を未だ10分の1ほどしか使えないとはいえ、魔族側からしたら目で追うのがやっとのほどの速度で走るラストはその風の槍を空気中の不自然な歪みから判断して避けていく。


 さらに走るラストに合わせてリナが道の両サイドに斜めの氷の板を作り出すことで、ラストはその板蹴り進みながらジグザグに走行しレダンとゲイルを翻弄していく。


「レダン来るぞ!」


「わかってるわよ!」


 レダンは魔力範囲でラストをすぐ捉えれば魔法で拘束し吹き飛ばす予定であった。

 だが、そうさせないように動くのはやはりリナである。


「チッ」


 リナはレダンの両脇から同じように氷の杭を突き出させる。

 それをレダンはバックして避けるが、その直前にはラストが迫っていた。

 ラストは拳を大きく振りかぶっていく。


 だがまだ届くまで1秒ほどあり、その時間があればレダンには弾き返すことは出来ずとも軌道を逸らすことは出来る。

 しかし、結果から言えばそれは出来なかった。


「もう君に悪さはさせない」


「なっ!?」


 ラストは拳を振りかぶった直後、肘から「熱波」を出して僅かにブーストさせたのだ。

 それによって、レダンが防御しようとした僅かな時間を潰した。


 レダンの腹部にラストの鋭い拳が突き刺さり風穴を開けた。

 また同時に殴られた勢いで吹き飛んでいくレダンはそのまま空気中で全身を魔力へと変えて消えていった。


「レダン! クソがああああああ!」


 そのほんの数秒の出来事を見ていることしかできなかっらゲイルは怒りに表情を歪ませ、せめて一人でも殺そうとラストではなくリナへと突貫した。


 その移動速度はラストに襲い掛かるよりも倍近く速くリナに避ける隙を与えなかった。

 リナも避けられないと悟ると自身の前に氷の分厚い板を作り出す。


「そんなもんで俺の攻撃が防げるわけねぇだろ!――――穿爪」


 ゲイルは雄たけびを上げながらその拳を氷の板へ叩きつける。

 その直後、触れた箇所はドリルで穴をあけられたように貫通し、その空いた穴から広がるようにして氷が崩壊していった。


 「仕留めた」と思ったゲイルであったが貫通した氷の壁の後ろには血どころか肉片すら何もない。


「あなた、短絡的って言われない?」


 そうゲイルが聞いた声の方向は後ろ。

 僅かに振り返ってみるとそこには本物のリナがある。

 その瞬間、ゲイルは理解した。


「まさか俺が殴ったのはお前を映した氷の鏡か!?」


「ご名答。そして安らかに眠って――――氷の棺(アイスコフィン)


 リナは凍てつく風を当ててゲイルを手足の先から凍らせていく。

 その氷は下半身、上半身と広がっていきやがてゲイルの顔を覆いつくそうとしていた。

 その時、ゲイルは悔しがるわけでもなくただ不敵に笑ってリナに告げる。


「もうすぐ集まる。俺達だけじゃない」


 そしてゲイルは氷漬けにされた。すぐに氷の棺は自壊していくと同時にゲイルは魔力となって空気中へと消えていく。


 中級悪魔を無事に討伐出来たことに安堵したリナはふとラストの方へ振り返るとラストは大きく手を振りながら小走りにやって来ていた。

 そんな姿をどことなく犬っぽく感じながら話しかける。


「初戦の割には大丈夫そうね」


「エストラクトさんがいてくれたからね」


「私は別に。それよりもそのエストラクトさんっていう他人行儀な――――伏せて!」


 何かを感じ取ったリナは咄嗟にラストを突き飛ばす。

 その次の瞬間、リナの横っ腹を鉄槍が抉っていった。


「エストラクトさん!」


 大ダメージを受けたリナはその場に倒れ込み、白い雪が一部深紅に染まっていく。

 そんなリナをすぐさま抱きかかえたラストはリナの安否を確認しながら、同時に周囲から感じる複数の強い魔力反応に戦慄した。


「......どうして?」


 思わず見上げたラストの視界には道の両脇の家の屋根に見下すように立つ10人ほどの中級魔族の集団がいたのだ。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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