八
『花咲華の危険を感知、救難信号を受信、虫除け(結界)を展開、一部魔物を撃破、次の跳躍の着地点に転送魔法陣を展開、転送先は魔物の真上です』
魔物が結界を破ろうと殴っている様子が画像で送られてきた。 今までで一番デカい。取り囲んでいた小鬼みたいな魔物たちは、居なくなっていた。
取り敢えず、花咲は無事みたいだ。 次の跳躍の為の足跡が見えた。転送の為の準備をする。 急がないと、この魔物も何するか分からない。 さっきの様子を思い出し、ドス黒い感情が胸に渦を巻く。足跡を踏み跳躍する。
『転送魔法陣を展開します』
着地点に転送魔法陣が現れる。あんなデカい魔物だと、不意打ちを狙うしかない。このまま転送魔法陣で魔物の真上に降りて、一発で決めるしかない。 木刀に魔力を込めるといつもと違う感覚があった。いつの間にか二本に分かれていて、二つの真逆な感覚が手を通して感じた。
左手には、氷を素手で触った時の様なあの刺さるような冷たさ。 右手には、火で炙られたような熱さ。 それでいて痛みではなく、何故か心地良さが感じられた。
転送魔法陣の中央を落ちていく。一瞬だった、何も感じなくて、瞬きの間に魔物の真上に落ちていく所だった。
「来たよ! 」
「あのままだと外すか、力を抑えきれなくて暴走するわね」
岩山の影に隠れて、二匹は覗き見ていた。 丸いフォルムだったのが形を変えていき、10歳くらいの少女に変わる。 むんずともう一匹を掴むと前方へとぶん投げた。
「おりゃ〜! あの子の暴走、止めてこ〜い!」
「うぎゃー!ぼくの扱い酷すぎない?!」
さっきは心地いいと思っていたのに、今は熱い、血が沸騰しそうだ。 体の中で魔力が暴れてる感覚。 抑えきれない。
「……くっ」
ポフンと頭の上に何かが乗って、同化したような感覚。上から声がした。
「うわっ! 凄い魔力!」
「えっ!何だ?……」
「話は後、彼女を助けたかったら、言う通りにしてもらうよ。 このまま魔法を放っても外すし、無駄打ちになるからね。 まだ、魔物はこっちに気づいてない。不意打ちで一発で殺るなら確実に殺らないとね。こいつには核がある。そいつを壊さないと倒せない。核は心臓だよ。この一発が最初で最後のチャンス。外したら皆、死ぬからね。魔力の制御は、手伝って上げるから。いくよ」
信用できるのか疑ったが、実際にさっきより魔力が抑えられているのが分かった。今は、花咲を助けることだけを考える。頷くと木刀に魔力を込める。
「うひゃ。これ以上まだ上がるの?!」
木刀から魔法が飛び出そうとする感覚を何とか抑えて、出力をあげる。魔物と目が合った。魔物が動く前に、力の限り二本の木刀を振った。二つの魔法が、クロスの形を作る。魔物の核、目掛けてぶった切る。魔物は炎に巻かれたあと、氷漬けにされ砕け散って死んだ。地面に足跡が見える。踏むと衝撃もなく、広場に降りたてた。少し、グラ付いたけど、花咲の場所まで急いだ。花咲は洞窟の側にいて、呆然として俺を見ていた。
「花咲! 大丈夫か? 怪我は……ないな。変な後も……ない……良かった」
俺は無意識にスキルを使って花咲を透視していた、いやらしい気持ちじゃなく。そこに居るんだと感じたくて花咲を抱きしめた。
「小鳥遊くん、ごめんなさい。私……」
あ、力を使い過ぎた。 意識が朦朧とする。 これは、やばいな。 グッと何とか腕に力を込める。
「花咲……俺から離れないで……なんだ」
後半は言葉にならなかった。そのまま意識を失った。