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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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 花咲が居なくなった。 突然一人になった事と、何かあったんじゃないかと恐怖に駆られる。

「花咲ーー! 聞こえたら、返事しろーー!」

返事がない。 もしかして、魔物に……。血の気が引く。 不安で心が押し潰されそうだ。

木刀が微かに光って、桜の香りが漂う。

嗅ぐと、不思議と落ち着いた。 花咲は、側で薬草採取をしていた。 もしかしたら、残ってるかもしれない。

花咲の一番最後の動画をだせ。

『花咲華の最後のは動画はこの一本です』

脳裏に、草原の奥にある森に向かって、歩く花咲の姿が映し出される。 下を向いてるから、離れた事に気づかなかったのか?  動画の花咲を追って森に入った。 暫く歩くと、開けた場所に出る。

薬草が生い茂っていた。

『『花咲華を守る』スキルの、感知出来る距離外の為、位置情報の確認が出来ません。』

ここからまだ離れてるのか?  何か手掛かりは?

あれは?  少し薬草の山が出来ている。 集めた薬草と…… 失敗作の回復薬。

ここに、花咲が居たのは間違いないな。

側にデカい動物の足跡があった。  一気に、不安と焦りが生じる。 血の跡や、争った形跡がない。

連れ去られたのか?  何処に? まさか巣穴に?

足跡は、森の奥に続いていた。 足跡が消える前に、必ず見つけ出す。

花咲、無事で居てくれ。 今、行くからーー!


『『花咲華を守る』スキルの、感知出来る距離外の為、位置情報の確認が出来ません』

随分、走った筈なのに、まだ距離があるのか?

このスキルを手に入れてから、数時間しか経ってないけど、常に頭の中に花咲の様子が入って来るから、一人じゃない事に安堵してたんだ。

花咲を失ったら……俺はどうなるんだろう。 目を離してしまった事に後悔の念が止まない。

「……っ」

どうにか感知範囲を拡げられないか?  花咲の事を思い浮かべて、花咲の気配を感じてみる。 駄目だ、どうやって気配を感じればいいか、分からない。 草や土に足を取られる。

なんで俺は、こんな滑りやすい革靴で走ってるんだ。 もっと速く!  足を出せ!  滑っても踏ん張れ!  二・三メートル先に足跡が見えた。 魔物じゃない、人間の足跡だ。 銀色に光ってる?

ドクンと心臓が鳴る。

『足跡を踏め!』

脳裏に浮かんだ言葉に反射的に足跡を踏む。 次の瞬間、俺は跳躍していた。  着地でバランスを崩して、転びかける。  止まるな!  足に力を入れて踏ん張れ、さっきのジャンプで結構な距離を稼げた。 足跡は定期的に現れる。 その度、跳躍して魔物との距離を縮めていく。

『花咲華の位置を確認、危険を感知、周辺に複数の魔物を感知』

キターー! でも、喜んでいられない。 魔物に取り囲まれている画像が送られてきた。

岩山の洞窟の前、やっぱり、巣穴に連れて行かれてたのか。 あそこにどうやって行けばいい?

洞窟の前は広場になってるけど、広場の先は崖だ、あの崖を登らないと行けないのか。

花咲の顔が、恐怖で歪んで青ざめている。  魔物たちが、そんな花咲を見て色めき立ち、奇声を上げている。 その様子に不穏な空気を感じる。 あいつら、花咲に何するつもりだーー!


 怖い……。 ここに降ろされてから、食べられるのかと思ったけど、襲ってこない。 食べる気はないって事?  何とか、ここから逃げ出さないと……。 でも、どうやって?  先には崖しかないのに。

 何か、攻撃系の魔法陣とかないの?  ファイルを捲ってみるけど、見つからない。 それにこの魔物たちの変な笑い方が気持ち悪い。  一斉に奇声を上げて襲いかかってきた。 背筋がゾッとして嫌悪感と恐怖心が頂点に達した。 小鳥遊くんの顔が浮かぶ。

嫌だ、助けて!

小鳥遊くんに、頼りきっりで嫌になる。 身構えた時、周囲の魔物たちが声も無く、消し飛んでいった。  私の周りを見ると、魔法陣が展開されていて、透明の膜みたいな物が、球状に張られていた。 微かな桜の香り、少し落ち着いてきた。

「これって、結界?  桜の香り……もしかして小鳥遊くんの?」

ドシンと地響きがして、デカい魔物が近づいてくる。  恐怖で身が竦む。ゴクッとのが鳴って、再び小鳥遊くんの顔が浮かぶ。  小鳥遊くん……。

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