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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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二十ニ

 華が放った光は、城の敷地を超えて王都の街まで届いていた。 王様と勇者御一行と、兵士たちから出ていた黒いオーラが消えていた。 華をフィンに任せて、男を見上げる。 男は、華が放った光を浴びて、全身から煙を出して、片腕が肘から溶けて無くなっていた。 今は遥か空中に避難している。 

 「あっぶねぇ! 危うく浄化される所だった。 あの女……俺の下僕を全員、浄化しやがった。 (ただの人間に、こんな事出来わけない。 何者だ。 俺の影を付けとくか……)」

 男は、華を凝視してから、忌々しく溶けた片腕を見ている。 フィンはでかいスライムになって、華をフィンの中に入れている。 何か、華を食べているみたいだな。 


 『真上から攻撃が来ます』


足元に黒い影が落ちてきた。 ギリギリで避けてかわす。 上を見上げると、もうそこに男は居なかった。 



 華の部屋に初めて入った。 気絶した華をベッドに寝かせて、部屋の周りを見る。 これは……華の妄想の世界なのかな? 

 男が消えた後、王都の別邸に住んでいる王弟陛下が騒ぎを聞きつけて、私兵を連れて登城して来た。 

王弟が魔族に操られてるかどうか分からないけど、城の現状から居ない方がいいだろうと思い。 こそこそと見つからないように隠れ家に戻る事にした。 王様たちがどうなったか分からないけど、良くなればいいと思う。

 華の部屋の現状を見て、恥ずかしいやら嬉しいやら、ちょっと居心地の悪さにどうしたらいいのか分からない。 華の部屋には、立体映像の俺が色々なポージングをして、部屋のあちこちに飾られている。 着ている衣装は、俺が絶対着ない物だ。 部屋に入って目の前の窓際にベッドが置いてある。 横に机が置いてあって、卓上には魔法陣の羊皮紙が並べてあった。 あんまりジロジロ見るのも気が引けるので、椅子をベッドの横まで持っていって座る。 じぃと寝顔を見てると、華の身体が突然光った。 華から透明の女性が出て来た。 まるで幽体離脱したのかと思うくらいに神秘的だった。 女性の姿を見て唖然とする。 天国に旅立ったはずのセレンティナアンナさんだった。 もしかして、華に憑りついてるのか? 

 「……なっ」

言葉にならなくて、上手く声が出せなかった。 セレンティナアンナさんは、よっと片手を上げて軽く挨拶してきた。 相変わらず軽い人だな。

 「……セレンティナアンナさん? 天国に逝ったんじゃ……」

 『ん? ああ、本体はちゃんと逝ったわよ。 今、目の前に居るのは残留思念で、ブレスレットに残ってた残りかすみたいなものね。 憑りついてる訳じゃないから、安心して』

 「ブレスレット……」

 『そう、この残留思念も、もうじき消えるけどね』

セレンティナアンナさんは、明るい感じで言った。 華は、ブレスレットをまだ持ってたのか。 

彼女は、華の部屋を見回して、俺の立体映像に目をやる、ニヤリと笑った表情に、嫌な予感がした……

 『面白い部屋ね』

俺は何も言わずに視線を逸らす事で、揶揄われるのを回避した。 気恥ずかしくて、話題を変える。

 「もしかして、華が放った光はセレンティナアンナさんが? 華が真っ白な姿になったのも?」

 『そうね、前に二人に飲んでもらった薬に関係してるんだけどね。 でも、もう使えないからね。 今度、魔族に落ちそうになっても助からないわよ』

 「あの薬って、何だったんだ? 何の薬を飲ませたんだ?」

 『ふふ、それはね……ひ・み・つ。 その時になったら分かるから』

唇に人差し指を当てて、彼女にとって蠱惑的に見えるだろうという表情で笑う。 俺は全然笑えない。 

彼女の身体が光り出して、少しずつ消えていく。 早いな、もう時間らしい。 

 『約束、覚えているわよね。 子孫をエルフと結婚させる事! 絶対に守ってよね』

それには、無言を貫く。 彼女が俺の耳元で囁く。

 『それと、忠告 ハナちゃん、あの男に目を付けられたわよ。 気を付けるのね』

セレンティナアンナさんの残留思念が光の粒になって消えた。 最後に気になる言葉を残して。


 セレンティナアンナさんの残留思念が消えた後、華が目を覚ました。 身動ぎして、瞼が開いた。 

寝ぼけた顔で俺を見ている。 目をこすって何度も瞬きをしている。 華は突然、体を起こした。 自分の部屋を確認して、真っ赤になって俺を見て、ベッドに潜り込んでいった。 

 「何で、私の部屋に小鳥遊くんが居るの?!(小鳥遊くんの立体映像、見られたよね!! 見ないわけないよね!! 絶対に引かれてる)」

布団でくぐもった声が響く。 

 「気絶した華が心配だったから」 

何となく、華が考えてる事が分かる。 俺の立体映像を、見られたのが恥ずかしいんだろうな。 ずっと気になってる事を訊いてみる。 

 「なぁ、何で、皆ポージングしてるんだ?」

ベッドに潜ってる華が僅かに動いた。 掛け布団から勢いよく出て、ベッドを抜け出して一つ俺の立体映像を天井を掲げ持った。 

 「小鳥遊くん! ポージングは大事なんだよ! 頭から足の爪の先、手の爪の先まで綺麗に見えるようにラインを作るの! 衣装の風ではためいてる様子とか、武器を持ってたら武器の先まで綺麗に見えるように作っていくの。 顔の表情も大切よ。 ああ、君は何て美しいの!!」

キラキラした目で俺の立体映像を見ている。 うん、あの立体映像は俺じゃない。 華が、妄想している何処か他所の世界の、俺のそっくりさんだ。 そう思う事にする。 

 我に返った華の顔が死んでる。 大丈夫、引いてないから。 それから、俺は自分のスキルの詳しい話をして、華が理解している部分と分からない部分をすり合わせていった。 

 華が、スキルの名前を何度も訊いてくるのには参った。 それと、俺の声が聞こえるのは、華が結界の中に居る時だけだと分かった。

『異世界転移したら……。』を読んで頂き誠にありがとうございます。

気に入って頂ければ幸いです。 毎日、12時から14時の間に投稿しています。

良ければ読んでやってくださいませ。

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