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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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二十

 『次の階に、高い魔力を感知、魔族が待ち伏せしています』


上の階に着くと、ツンツン頭が待ってるのかと思ったけど、違った。 春樹とかいう勇者だった。 こいつが勇者の力を手に入れたのか。 どんな力なのか分からない。 身体からは、黒いオーラが出ている。 

 「彼も、まだ魔族に操られてるだけだね」

頭の上のフィルの声に頷く。 勇者の他には、兵士も王もいない。 華の位置を確認する。 


 『花咲華の位置を確認、斜め後方です。 結界が強化されました』


頭の中で、華の画像が映し出される。 心配そうにこちらを見ている。 華が壁側まで下がって、俺たちの為に場所を開ける。 後方の扉が乱暴に蹴破られる音がして、そちらを振り返ると、黒い何かが俺の足元の横を滑りながら通って、窓際の壁にぶつかった。 縛られて、気絶してるみたいだ。 黒い何かはツンツン頭だった。 振り返ると瑠衣が不適な笑みを浮かべている。 鈴木は華の方に駆け寄っている所だった。 結城が何もして来なかったのは、瑠衣と合流させるのを妨害する為か。 


 『勇者から魔法攻撃が来ます。 複数の魔弾です』


魔力を循環させて木刀を強化する、魔法石が光って、花びらが舞う。 木刀を薙ぎ払う。 複数の氷の刃が、魔弾目掛けて飛んで行く。 魔弾とぶつかって霧散していく。 煙が立ち込める中、互いに飛び出した。 

 木刀と剣で打ち合い。 蹴りで勇者を引き離す。 着地で銀色の足跡を踏んで、勇者の間合いに飛び込む。

腹に突きを入れたけど、勇者の身体が歪んで消えた。 後ろから気配を感じて、しゃがんで勇者の剣を避ける。 お互い何も言わずに打ち合う。 誰も何も言わない。 木刀と剣が打ち合う音だけが響いていた。 


 『魔弾が来ます。 木刀で受けてください。 カウント 直撃まで五・四・三・……』


トルネードみたいなのが飛んできた。 いや、実際そうなんだろう。 避けたら後ろの華たちに当たる。 木刀を強化しながら氷の剣に変えていく、魔法石が光って花びらが舞う。 氷の剣を構えて、衝撃に備える。


 『ニ・一・零』


轟音と共にトルネードが俺に向かってくる。 周りの家具やらが吹き飛んでいく。 トルネードを正面で受け止める。 火花と稲光が光る。 トルネードを押し返して、勇者に跳ね返した。 トルネードは勇者に届く前に霧散して消えた。

 「お前たちは、何で邪魔をするんだ? 帝国の魔王を倒せば元の世界に帰れるのに」

黒いオーラが、大量に体から出てきた。 勇者がゆらりと揺れる。 桜の香りが強くなった。

 「皆で……帝国を……潰そう……ベネディクト様の為に」

さっきと言ってる事が違うぞ。 目の焦点が合ってない。 勇者が右腕を天井に向けた。 

 剣の先が光る。 剣から大量の魔力が発射された。 


 『大きな魔法の発動を感知、止められません。 城が吹き飛びます。 結界が強化されました。 結界に入ってください』


急いで、結界に入って皆に声を掛ける。

 「でかい魔法が来る。 衝撃に備えろ!」

俺は華を庇って抱きしめる。 結界の魔力を【追跡】スキルで感知する。 俺たちの周りの魔法陣が光った。 結界の魔法陣に魔力を流して、結界を強化出来る最大まであげる。 結界はキラキラ光って強化されていく。


 『結界の強化が最大まで上がりました。 勇者の魔法が発動されます。 備えてください』


勇者を中心に魔力の波紋が拡がり、爆発したように空気の波紋が一気に放たれる。 一瞬の静寂の後、轟音と暴風が吹き荒れて拡がった。 この光景は、世界樹ダンジョンで視た街が吹き飛ぶ映像と同じだ。 

 天井と壁が吹き飛んでいく音、家具も何もかもが吹き飛んでいった。 結界に当たってて、瓦礫が砂埃に変わっていく。 地鳴りと衝撃が止んで静かになった。 顔を上げて周りを見ると、六階から上が全て無くなっていた。 


 『魔法の衝撃で、お城が崩れます。 避難してください。 崩れるまで五分です』


急いで、城を出る。 王都の街を見ると無事だった。 城だけが吹き飛ばされたみたいだ。 良かった、映像通りにならなくて。 瑠衣が呆然として顔で壊れた城を見ていた。 

 「あいつ、城を潰しやがった……」


 『城の奥から大勢の魔族が来ます。 警戒してください』


確かに大勢の足音が聞こえる。 よく見ると、奥にある離宮と隣の小さい城がある。 そこから大勢の兵士と、王冠を被った男性が走って来ているのが見えた。 集団の頭の上には、黒いオーラが漂っていた。 桜の香りが俺たちの周囲に漂ってきた。 頭の上でフィルの声がする。

 「王冠を被ってる人、王様だ! 王様、魔族に操られてるんだ。 まだ、魔族になってない!」

俺たちと壊れた城を交互に見て、ニヤリと笑った。 目が笑ってなくて怖い。 

 「そちたちが城を壊したのだな。 帝国の手先か!」

まぁ、そうなるだろうなって思ってた。 パターンだし、使い古されてるしな。 

壊れた城から、瓦礫が崩れる音が聞こえる。 瓦礫の陰から手が出てきた。 顔を出したのは勇者だ。 

 「おお、勇者よ! 無事であったか! こちらの者どもが城を壊したのだ! 魔王だ! 倒してくれ!」

魔王に格上げした!! 無理過ぎるだろ!! 誰も信じないぞ!!

 「そうか、お前が魔王だったのか……」

勇者が剣を構える。 えっ!! 信じるの?! 嘘!! 何、この茶番!! 瑠衣たちも口を開けて呆気に取られている。 誰も何も言えない空気の中、勇者がまた、大技を出す構えをする。 

 うん、もう面倒くさい。 一人一人相手にするのも大変だし。 前に出ると華たちに離れるように言う。 

 「瑠衣、後ろに下がってくれ。 フィル、魔力制御手伝ってくれ」

 「分かった」

瑠衣は大人しく華たちを連れて下がってくれた。 フィルと同化する感覚がした。

 

 『花咲華により結界が発動されます。 強化されました』


魔力を循環させて木刀に魔力を流す。 地面に木刀を刺すと魔力の波紋が出来る。 今回は、離宮以外の城の敷地内を凍らす。 周囲の気温が下がる。 吐く息が白くなる。 勇者が攻撃を仕掛けてくる。 

 『全てを凍り尽くせ!!』

木刀から大量の魔力が流された。 音をたてて、勇者の攻撃が届く前に、一瞬で離宮以外の城の敷地内と、兵士と王様と勇者たちが凍った。

 後で、瑠衣の鞭でお縄にしよ。 何処からか若い男の声が聞こえてきた。 辺りを見回しても誰もいない。 

 「優斗? どうした?」

 「いや、気のせいか……今、誰かいたような気がして」

瑠衣は不思議そうに俺を見ている。 促されて兵士たちに縄を掛ける作業をする事にした。

『異世界転移したら……。』を読んで頂き誠にありがとうございます。

拙い文章ですが、気に入って頂ければ幸いです。

毎日、12時から14時の間に投稿しています。 良ければ読んでやってくださいませ。

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