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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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十七

 どういう事だ? 勇者が力を手に入れたって。 さっきの洞窟ダンジョンで手に入れたって事か?

瑠衣を見ると瑠衣も俺を見ていた。 口に手を当てて青ざめている。 記憶を探っても俺はあの場にいなかったし……あ、華が居たか。 華の動画でボス部屋は、記録したか? フィルが元の姿に戻って、頭の上に乗ってくる。 俺の考えを読んだのか、フィルが同化して来た。


 『洞窟ダンジョン攻略の記録は、最初から最後まであります。 ボス部屋の動画を再生します』


 頭の中で、華を中心にボス部屋の時の様子が再生される。 ボス部屋に入ってから皆、ボスの後ろの祭壇の薬瓶を確認している。 確かに二つ置いてあるな。 特別に、他におかしい所はない。 何度か再生させて視る。 皆が、祭壇の後ろの転送魔法陣まで移動した時に、祭壇の足元で何かが光った。 祭壇の足元をアップにしてくれ。 祭壇の足元がアップにされる。 丁度足の裏に薬瓶が転がっていた。 

 「あ……あんなとこに……」

あ、ついうっかり口が滑った。 皆が怪訝そうに俺を見てる。 隣の華からは、無言の圧を感じる。 

 「そっか……祭壇の下に一個、落ちてたんだ。 もしかして、王国に昔の武器が残ってる?」

フィルが頭の上から降りて、銀色の少年の姿に変わっていく。 瑠衣と鈴木が、何でフィルにそんな事が分かるのか、不思議そうに見ている。 

 フィルは俺の従魔で、俺と同化する事によって、俺のスキルを使う事が出来る。 頭の中で、華の動画を一緒に視たから分かったんだけど。 なんて説明しようか……俺のスキルの事は、まだはっきりと説明してない。 華にも詳しくは説明していない。 口に出して言うと、本当にストーカーみたいで嫌だ。 結界の説明なんてそれこそ、それっぽい。 常に華の周りで待機してるなんて! 

 「じゃ、武器を能力付与したのね。 それで、勇者の力を手に入れたんだわ」

フィンが瑠衣たちの疑問をよそに話を進める。 

 「王様が魔王になってるかも知れないね。 まだ、確証はないけど……」

 「でも、良いように考えれば、二つは阻止できたんだよね。 良かったんじゃないかな」

華の前向きな発言で、空気が和む。 砂埃と木屑が落ちて、埃が小さく舞う。 天井を見上げると、青空が見えて太陽の光が眩しい。

 「じゃ、ちゃちゃとお城に乗り込んで、王様やっちゃうおうか」

鈴木、簡単に言うな。 

 「取り敢えず、ここ片付けてからな」

 「だな……」

 「「……」」

リビングの惨状に溜め息しかでない。 もう少し、穏やかな伝言方法はなかったんだろうか。 

それとも、怒りMax何でしょうか? 主様


 王都まで馬車で三日かかったけど、何とか無事に辿り着いた。 王都の街は、どの街よりも整備されていた。 けど、人があまり居ない。 もっと、賑やかな街を想像してたんだけどな。 道に敷かれている石畳から、黒いオーラが出ている。 桜の香りが微かにしてきて、俺たちの周囲に漂っている。 桜の香りのお陰で、洞窟ダンジョンの時のように、不安に襲われたりしない。

 城に着くと、黒いオーラが城をすっぽり包み込んでいる。 地面からも黒いオーラが染みだして来てる感じだ。 門番も誰もいない。 戦争の準備してるって聞いたけど、そんな感じ全然しないな……。 


 『城の中に複数の魔族を感知、危険度Maxです。 一人を除いて、中には魔族しか居ません』


頭の中で、城の見取り図が拡がる。 魔族が点で表示され、華の点が城の外に表示されていた。 一人を除いて? 城の奥に離れがあって、そこには、人間と表示された点があった。 人間は一人……結城たち、勇者御一行は魔族になってしまったのか? 

 「本当に戦争を仕掛けようとしてるのかな? 何か、誰も居ない感じじゃない?」

 「う~ん、変なオーラは感じるけど。 街にも人が居ないしな、様子が変なのは分かる」

 「もしかして、もうどっかの国に出張ってるとか?」

瑠衣と鈴木は、怪しい空気を感じてるけど、このまま乗り込んでもいいのか迷ってる様子だ。

頭の上でフィルの声がする。

 「中に人間は、一人しか居ないよ。 他は皆、魔族だ。 魔族の匂いが充満してる」

 「偵察をしてから、乗り込む? 中で何が行われてるか分からないし、人間が一人っていうのも気になるし」

鈴木がもっともな意見を言った。

 「人間が一人って事はあれか? 結城とか勇者御一行は、魔族になってんのか?」


 『魔族が二人、門前に出てきます』


城の扉を見ると、まさに扉が開かれる所だった。 急いで、瑠衣たちを引っ張って隠れる。

魔族と思しき二人は、兵士じゃなくて、勇者召喚の場に居た、俺たちと同じ学校の奴らだった。

 「優斗、あいつら確か、隣のクラスの結城の取り巻きだ。 勇者召喚に居た、その他大勢だな」

瑠衣の言葉に頷く。 こいつらも魔族になってんるのか、体から黒いオーラが出ている。 同級生たちは俺たちには気づかないで話を続ける。 十代でタバコって、体の成長妨げるぞ。 異世界では、俺たちの年は成人してるけど、抵抗ないのか? 相変わらずガラ悪いな。

 「それにしても、良かったよな。 勇者の力が手に入って。 これで、帝国の魔王やっつけたら王女様の病気も治るし、俺たちも元の世界に戻れるな」

同級生の言葉に四人の目がフィルたちを凝視する。 気になるワードが出てきた。 

 「でも、勇者の力を手に入れた奴、なんてたっけ? あいつに偉そうにされるのは、正直むかつくわ」

 「仕方ないだろ。 あいつ強いからな。 俺たちは魔物と戦える能力を貰えなかったからな。 あいつらに頼るしかないんだから。 でも、これで帰れる見込みついたんだからいいんじゃないの」

中は禁煙なのかタバコを吸い終わると、二人は門番の詰め所の中に入っていった。 俺たちは、急いで別の場所に移動する。 フィルたちに聞きたい事が出来た。 


 『魔族や魔物は居ません。 危険度は低です』


スキルに安全を確認してから、草陰に隠れる。 四人でフィルたちを囲む。 瑠衣が最初に口を開いた

 「どういう事だ。 俺たちはもう、元の世界には帰れないんじゃなかったのか?」

フィルたちは、銀色の少年少女の姿へと変わっていく。 フィルがフィンを庇うように前に出た。 

 「帰れないよ。 君たちの世界とは繋がってないんだ。 一度、勇者召喚された人間は、元の世界には帰れない。 勇者召喚は、魔王を倒す為に召喚する儀式で簡単には出来ないんだ。 その時にだけ、異世界に繋がるようになってるんだよ。 だから、魔王を倒したからって、君たちの世界に繋がるゲートは開かない」

フィルは真剣な顔で俺たちに訴えてきた。

 「じゃ、何で、あいつらは帰れるって思ってるんだ?」

 「勇者召喚に魔族が関わってるのは確かだね。 帝国の王が魔王なんて……」

フィルの言葉に俺たちは、益々、分からなくなる。 王女の病気も治るっていうのも気になる。 真相を解明する為にも、城の中を探ってみる事にした。 

『異世界転移したら……。』を読んで頂き誠にありがとうございます。

拙い文章ですが、気に入って頂ければ幸いです。 

毎日、12時から14時の間に投稿しています。 良ければ読んでやってくださいませ。

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