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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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十六

――ボス部屋【篠原瑠衣 視点】

ゴーレムの太い腕が振り下ろされる。 ギリギリで何とか避けて、横に飛んで踏ん張る。 でかい割に機敏に動くゴーレムは攻撃の手を緩めない。 ゴーレムから目を離せない、次の攻撃がくる。 勇者は、結界の中に入れないようで悔しそうにしている。 たなぼた、勇者に邪魔されないのはラッキーだ。 ゴーレムの怒涛の攻撃をかわすのに必死で、勇者の事は気にしていられないからな。 何とかあの装甲を破れないか。 もう一度、ゴーレムに焦点を当てる。 左目の視界には、ゴーレムの弱点が映るけど、さっきと変わらない。 ゴーレムが仁奈に腕を振り下ろした時、ゴーレムの関節が目に入った。 あそこだけ硬い装甲に覆われてない。 仁奈は、バク転しながらゴーレムの攻撃をかわしている。 一つ思いついて、仁奈に声を掛ける。

 「仁奈! 下がって!」

深呼吸して、矢を弓につがえる。 ゴーレムに焦点を当てると、左目の視界に七個の四角が現れる。 それぞれゴーレムの、関節と頭部にある一つ目に標準を合わせる。 弓を引くと風圧を頬に感じる。 発射された矢が七本に分かれる。 合わせた標準、目掛けて飛んでいく。 七本の矢は、狙い通りにゴーレムの関節と目玉に全て中った。 動きを封じる為に射った矢なので、今回のは直ぐには消えない。 

 よし! 皆中! ゴーレムは祭壇の横の壁に、矢で縫い留められて暴れている。 

 「仁奈! 何とか胸の装甲を抉じ開けろ!」

 「分かった!」

仁奈は、槍を首の隙間から突っ込んでこじ開ける。 装甲の軋む音と火花が散って、ゴーレムは苦しそうに咆哮を上げた。 こじ開けられた胸から、核である魔法石が見えた。 仁奈は何の躊躇なく、魔法石を手で引き抜いた。 火花散ってるのに熱いとかないのか? 祭壇にある薬瓶を思い出して、薬瓶を二つ掴むと片方を仁奈に投げて渡す。 能力付与する為の薬を手に入れた。 ゴーレムが煙を上げて、動かなくなった。 結界の魔法陣が煌めいて、消えた。 華ちゃんを振り返るとホッとしたような顔をしていた。 まだ、フィンの中に居るけど。 目の端に剣の煌めきが入った。 剣の切っ先を弓を引いて剣に中てる。

勇者に剣で打ち落とされた。 仁奈も華ちゃんをかばって槍を構える。 

 勇者と薬をかけて争奪戦か! 距離を取って矢をつがえて、勇者に矢を向ける。 勇者から黒いオーラが出ている。 何だあれ? 何か、様子もおかしくないか? 黒いオーラを見た時、心に不安が拡がっていって、言いようのない恐怖に押し潰されそうになった。 後ろで華ちゃんの結界が発動した音が籠ったように聞こえる。 視界が霞んで目の前が真っ暗になった。 フィンが何か言ってるような……。 でも、何も聞こえなくなった。 結界が光ったような気がして、目を開けた。 俺たちを包んだ結界から、香るはずのない桜の香りがした。 香りを嗅いだら、不安がなくなって頭がはっきりしてきた。 視界もクリアーだ。 夢から覚めたみたいだな。 天井から魔法陣が展開される音がして、見上げると優斗が降りてくる所だった。 優斗は体重を感じさせないみたいに羽根のように降り立った。

 「優斗!」

 「瑠衣! こいつら皆、魔族に操られてる! 今は、取り敢えず逃げるぞ!」

複数の走ってくる音がする。 王国の兵士か?

 「分かった!」

祭壇の奥の転送魔法陣が展開される。 薬は手に入った。 勇者は華ちゃんの結界に阻まれて近づけないでいる。 急いで転送魔法で外に出た。 だから、ちゃんと確認出来なかった。 武器は俺と仁奈の二つしかないと思ってた。 だから、薬瓶も二つだと思い込んでた。 確かに祭壇にあったのは、二つ。 だから、気づかなかった。 床にもう一つ落ちてたなんて。 


――【隠れ家】

何とか、能力付与する為の薬瓶を手に入れて、隠れ家に戻って来た。 リビングには暗い空気が漂う。

俺の前のソファーには、瑠衣と鈴木が座っている。 俺の右隣には華が座ってる。 フィルたちは銀色の少年少女の姿をして、それぞれ一人用のソファーに座って、いつも通り紅茶を飲んでいる。 

 能力付与の結果は、二人ともハズレだった。 勇者の力ではなかったらしい。 でも、鈴木は電撃能力を手に入れたし、瑠衣も何かしらの能力は貰ったらしい、教えてくれないけど。 瑠衣は、ソファーに持たれながら天井を見上げて例える。 

 「お年玉をつぎ込んで、ガチャぶん回して、微妙な武器を手に入れた時の気持ちに似てる……」

ゲームをやらない俺は、瑠衣の例えには共感出来ない。 瑠衣が微妙な能力を手に入れたのは分かった。


 『上方から魔力を感知、何か来ます。 避けてください。 カウント間に合いません。 落下します』


スキルが俺の頭の中で警報を鳴らす。 隣の華に覆いかぶさって庇う。 

 「皆! 伏せろーー!」

皆に声を掛けると同時に、魔力の塊がローテーブルの上に、強い光を放って落ちてきた。 天井には、大穴が開いて、瓦礫が崩れる音がする。 瑠衣も鈴木を庇ってしゃがむのが見えた。 


 『上方の魔力が消えました。 危険が回避されました。 花咲華の画像を送ります』


スキルの声にホッとすると同時に華と目が合った。 画像を送って来なくても分かる。 華は俺の下に居るんだから。 キスできる距離に華の顔がある。 華は真っ赤な顔をしている。 少し、瞳が潤んでいるように見える。 頭の中で、前に華が口移しで回復薬を飲ませてくれた時の動画が再生される。 次に鞄の奥にしまった薬瓶を思い出してしまった。 頭の中がピンク色に染まっていく。

 「おーい。 優斗、邪魔して悪いけど、ピンクの空気出してないで、戻ってこーい。 お前ら二人だじゃないんだぞ」

瑠衣の声が聞こえて、慌ててソファーの端と端に飛んで移動する。 くそっ! ニヤニヤする瑠衣がむかつく。 でも、してもいい関係になってるんだよな……俺たち。 また、頭の中がピンクになりかけた時、フィルの声がピンクな妄想を遮った。

 「あああああああああああああ! 主様からだ!」

主様って、世界樹ダンジョンの? まさか、力を手に入れに行ったのが駄目だったとか?

ローテーブルには煙が立ち昇っていて、文字が見えた。 皆がローテーブルの周りに集まって、文字を凝視する。 フィンが音読する。

 「勇者の一人が力を手に入れた。 王が戦争の準備を開始した。 街が吹き飛ぶ前に止めて欲しい」

「「「「えええええええええええええええええええええ!!」」」」

それどういう事だ!! 俺たちは、主様の手紙?に呆然として直ぐには動けなかった。

『異世界転移したら……。』を読んで頂き誠にありがとうございます。

まだまだ未熟ですが、気に入って頂ければ幸いです。

毎日、12時から14時の間に投稿しています。 良ければ読んでやってくださいませ。

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