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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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ハーフ顔に銅色の髪、薄茶色の目ときたら、もう日本人じゃないな。

 「はぁ〜〜」

花咲は手鏡で自分の顔を見て、信じられないという表情で、はわはわしながら凝視している。

頭に花が咲いてるぞ、花咲

カサカサ

ん? 今、何か居たか? 草陰から視線を感じた。 じぃと草陰を凝視する。 何も居ない? 気のせいか……。

脳裏にでかい木のイメージが入ってきた。 風が吹いて草木が鳴る。 呼ばれた気がして振り返る。

そこには、でかい大木があった。 この根元に落ちたのか、俺の鞄が転がってる。

この木……どっかで見たことがある。 テレビのコマーシャルか?  いや、もっと最近のような。 暫く考えて思い当たる、今朝の夢だ! この大木、夢に出てきたあのでかい木か。

ここに落ちてきた時の花咲とのやり取りも、今朝、夢で見たやつだ。  正夢だったのか、すっかり忘れてたな。  隣の花咲を見て、夢で見た泣き顔を思い出す。 泣いてないな。 あれの意味は?

 「小鳥遊くん? 」

首を傾げて、訝しげに見ている。

 「あ、いや、何でもない。」

大木に近づいて、吸い込まれるように身体が動く。 花咲も同じように動いて、同時に大木に触れる。 じんわり暖かいと感じた瞬間、突風が吹き上がってきた。

 「何だ! 」

足元から吹いてるみたいだ。いつの間にか、魔法陣が現れていた。 花咲を見るとスカートの裾を抑えて、俺と同じ状況になっていた。

 頭の中に写真を切り取ったような画像が、沢山の情報と共に入ってくる。  隣の花咲を気にしてる余裕はなかった。  知らない国同士の争い、尋常ではない魔法が放たれて、街が消し飛んだ。 魔法を放ったのは、黒髪に黒目の人間だ。  俺には、日本人に見えた。

この映像は何だ?  今、起こってる事なのか?  未来に起こる事なのか?

召喚場面が浮かぶ、数人の日本人の若者たち、皆、黒髪黒目だった。 中に見知った顔があったような気がする。 あれは……。確信する前に映像が消えた。 次いで、老人の声が聞こえた。

 『この者達よりも、先に力を手に入れよ』

 「えっ」

 『力を手に入れるまで、このダンジョンからは出られない。 手に入れられなければ、死あるのみだ』

頭の中に声が響く。

 「今、なんて言った! もっと、ちゃんと説明しろよ! おい! 」

俺の問いには答えはなく、言いたい事だけ言って、老人の声は聞こえなくなった。 理解が追いつかない。


 上から派手な木刀を持った男が、降りてきた。 その男は俺と同じ顔をしていた。

えっ!  俺? ちょっと引く。 桜柄の木刀を渡されて、反射的に受け取った。

もう一人の俺が俺の中に入ってきた瞬間、桜の香りと花弁が舞った。 もう一人の俺と融合した感覚と体の中心部分に、火が灯ったのが分かった。


今の何だったんだ?  もう、風は止んでいた。 頭の中で突如、声がした。 俺の声に似ている気がする。

 『[花咲華を守る]スキルを始動します』

ん? 何だそのスキル。

 『[花咲華を守る]スキルの概要 こちらのスキルはパシッブスキルです。 常に自動で発動されます。 スキルの内容を説明します。

 [位置情報:確認、検索、透視、傍聴、追跡]

 [危険察知:警報、虫除け(結界)、転送]

このスキルは花咲華にのみ有効です。 自動で発動されますが、ON/OFFの切り替えも出来ます。

尚、虫除け(結界)は、花咲華が拒絶した場合のみ発動されます。』

分かりやすく、イラスト付きで説明してくれる。 全て、俺の脳内で行われている事だ。


 [花咲華を守る]スキルが花咲の位置を知らせてくる。

 『周囲に敵は見当たりません』

さっきの声が、今の状況を知らせてくる。 次いで動画が送られてきた。 花咲は目を見開いて大木に触れている。 この間、俺は花咲の方を向いていない。 これは完璧な監視シムテムだな。 傍聴って、盗聴の間違いじゃないのか。 これじゃまるで、ストーカーじゃないか! 俺は頭を抱えて、かがみ込むしかなかった。

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