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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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 「これは、明日、私は女子全員に吊し上げに会うね。 皆、小鳥遊くんと乗りたがると思う」

 「物騒だな。 そんな女子とは乗りたくないけどな」

やっぱり女は怖いな。 今、俺たちは瑠衣の宣言通り、二番人気のアトラクションに乗っている。


二番人気のアトラクションは、二人乗りのマシーンを六台繋げた絶叫マシーンだ。猛スピードで急降下やカーブを走り抜けていく。

 このマシーンは、前後で膝を伸ばした状態で座る。 後ろの席にしか背もたれが無いため、安全ベルトで固定されれば、必然的に密着することになる。 所謂カップルシートってやつだ。


 まさか、カップルシートとは! 花咲、嫌なんじゃないだろうか。 前に乗る花咲の顔を覗いてみる。 見事に顔が強ばっていた。 俺はドキドキなのにだ。 出発準備が終了し、係員の元気な掛け声で発車した。

 「「「「「行ってらっしゃい」」」」」

ゆっくり走り出したマシーンは、アトラクションの外周を回り、急降下する頂上まで登り始めた。

 「もう、駄目!  怖い!  やっぱり辞めとけばよかった」

 「まだ、登り始めたばっかりだけど、花咲は絶叫系駄目な人か」

 「小鳥遊くんは絶叫したい人なんだね」

 「えっ、したい訳ではないけど、好きな方かな。 ずっと青ざめてたのって、怖かったから?」

今、何か残念な人を見る目で見られたような。

 「まさか、初っ端から絶叫系に行くとは思わないじゃない」

 「いや、結構並ぶし、人が少ないうちに早めに並んで行くけど」

 「そう(棒読み)」

 「そんなに怖いなら、断ればよかったのに」

 「空気読めない人間にはなりたく無かったから。 一人だけ乗らないなんて、出来ないでしょ」

クスッ。そうか、俺、嫌がられてなかったのか。

 「ああ、頂上に着く」

花咲が絶望的な声を出した。 ガタンと音がして止まった。マシーンが傾いて下を向く。 花咲が息を呑んだ。

 「ひっ!」

いや、花咲、ビビり過ぎだろ。

急降下を始めたところで、下から光が膨らんできた。  一瞬、地面に文字のような模様のようなものが見えた。

 「なんだあれ?」

 「なにあれ?」

くっ!  光に突っ込んだ!  目を開けていられない! 拘束感がなくなった、まさか、安全ベルトが外れたのか?  咄嗟に花咲を抱き寄せた。

 「小鳥遊くん!」

 「大丈夫だ。絶対、離さないから!」

今、離したら二度と会えない気がして、強く抱きしめた。 絶対、守るから!

光が弾け飛んだ後、光が収まって、落ちていく感覚の中、深い森の匂いがした。 遠くの方で鳥や動物の声、川のせせらぎが聞こえる。 でかい木のイメージが頭の中に入って来た。 柔らかい草の上に落ちた。  土の匂いがして、森の中に居るんだなと理解した。


 「花咲、大丈夫か? 起きろ」

身動ぎして、俺と目が合った花咲が、驚いた顔をして俺を見つめてくる。 花咲は俺の上に乗ったままだ。 この状況に覚えがある。

 「小鳥遊くん……だよね?」

そのセリフも聞いた覚えがある。何処で? それに花咲に違和感がある。 これはデジャブか?

 「花咲……だよな?」

俺の言葉にキョトンとする花咲 俺に乗ったままになっているのに気づいて慌てて退いた。

ドサッと腹に重いものが落ちてきた。

 「ぐはっ!」

息止まるかと思った。 腹を抑えて、痛みに耐える。 落ちてきたのは、ロッカーに入れてたはずの俺たちの鞄 乗る前に一緒に入れた覚えがある。 鞄には「HANASAKI」の文字 何でここに?

 「花咲、鞄に何詰めてんだ?」

 「あ、お弁当 仁奈の分も作ったから、仁奈、結構食べるんだよね。 パックにしたかったんだけど、足りなくて、重箱に……」

申し訳なさそうに語尾がしどろもどろになっている。

 「そうか」

さっきのは重箱の角だったか。 兎も角、自分の顔が見たい。 川面に顔を映す。 隣で花咲は手鏡で顔を見ていた。 二人で同時に叫んでいた。

 「「なんで──!」」

俺たちの黒髪は、銅に近い色の髪に、黒目は、薄茶色の目に変わっていた。 顔の作りはそのままだった。

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