三
『花咲華の位置と安全を確認 昨夜の就寝中の危険はありませでした。 今朝の画像を確認しますか?』
毎朝のスキルの報告が頭の中に響く。 少し、人間っぽい話し方だな。 前はもっと機械みたいだったのに。
画像はいい、危険な時だけにしてくれ。 ぼけっと窓の外を見る。 まだ、朝日が昇ったばっかりだ。
枕に顔を埋めて、寝返りで太陽の光を避ける。 起きて朝練するか。 あれから一週間経っても、花咲は何も言って来ない。
俺たちは街を移動しながら、冒険者ギルドで依頼を受けて、狩をしながらダンジョン都市を目指している。 いつもの朝練のメニューをこなす。 王国の勇者御一行とは、ニアミス以来出くわしていない。
裏庭に岩風呂があるけど、シャワーも完備されている。 脱衣所で瑠衣と鉢合わせした。 瑠衣はもう、シャワーを終えて身体を拭いている。
「はよ、朝練終わった?」
「おはよ、瑠衣も朝練か?」
「そう。 毎日、弓を引かないと鈍るからな。 弓道場、作ってもらって良かったよ。 でも、使うのが俺一人っていうのは勿体無いけどな……しかも何か、モンスターみたいなのが出てくるし」
花咲は、剣道場も作ってくれた。 やっぱり、使うのは俺一人だけだし……こっちにもモンスターみたいなのが出てくるけどな。 まぁ、思いっきり魔法が打てるし、練習になるからいいけど。
「あ、今日の朝飯当番俺らか……」
「瑠衣、卵焦がすなよ」
共同生活をする上で、円滑に生活できるように家事を分担しようと4人で話し合った。 洗濯は各自する事に。 キッチンで朝食の準備をする。 思った通り、瑠衣は卵を焦がしかけた。 意外に不器用だ。
花咲たちの声が食堂から聞こえてくる。 皆、揃ってご飯を食べる。 花咲とはあれから視線が合わない。
「なぁ、今日さ。 ちょっと道から外れるけど、小さいダンジョンに挑戦してみないか? この場所にあるんだけど、もう、攻略されてるかもしれないけどな」
「ああ、行ってみるか」
地図を広げて場所を確認する。 女子たちも賛成し、花咲は手から魔法陣を展開させて、立体映像を出した。
「丁度よかった。 仁奈と瑠衣くんの新しい防具を考えたの。 武器は世界樹ダンジョンで手に入れた物でしょ? 武器は無理だけど、防具は作りたくてずっと考えてたの」
ジャーンとテーブルの上に二体の立体映像、足元には魔法陣が煌めいている。 得意げな顔でどやってる。 瑠衣のは射手らしい衣装だけど、エルフの衣装を模しているみたいだ。 瑠衣の立体映像がポージングを決めている。 何で、ポージングしてるんだ? 問題は鈴木の方、どこの露出狂だってくらい攻めてる衣装だ。 鈴木の立体映像は堂々とした立ち姿だ。 花咲もこんなエロいの考えるんだな。 肝心の鈴木は……。 テーブルを叩きつけて立ち上がった。 テーブルの食器類が震えて鳴り響く。
「こんなもん、却下に決まってんでしょ! こんなの着て、街を歩けるわけないじゃない!」
「だよねぇ……そう言うと思って、こんなのも作ってみました」
次に出して来たのは、男装の麗人で宝塚風だった。 花咲は慣れてるのか、鈴木が激怒してるのに普通に会話を続けてる。 うん、そっちの方が合ってるな。 でも……
「私は、当分は世界樹で手に入れた防具で良いわ。 今度、私が考えた防具を作ってもらうから。 これ、部屋で飾らないでね、中学の時みたいに。 もし、飾ってたらあんたの部屋が今、どうなってるかバラすからね」
鈴木の目がギラリと光る。 花咲は、青ざめてこくこくと頷いている。 そして、徐に俺の方をじぃと見てきた。 何だ? 何でじぃと見て……あ、部屋は覗いてないよ。 ブンブンと顔を振って、覗き容疑を晴らそうとしたけど、信じてくれたかどうか分からない。
「取り敢えず出発しようぜ。 午前中に着いて、夕方には攻略したいし」
瑠衣は、花咲の作った防具を何の抵抗もなく、装着した。 恐ろしく似合ってるし、花咲も目がキラキラしてる。 その様子にイラっとする。 瑠衣が得意げな顔で俺を見てくる、その態度にも更にイラつく。
俺たちは昼前に目的のダンジョンに着いた。 入り口も小さいし、そんなに階層もなさそうだ。
『異世界転移したら……。』を読んで頂き誠にありがとうございます。
まだまだ未熟ですが、気に入って頂ければ幸いです。
毎日、12時から14時の間に投稿しています。良ければ読んでやってくださいませ。




