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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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 遠くに魔物の咆哮が聞こえる。 複数人の、草原を疾走する影 草を踏みしめ、駆け抜ける足音。

 『前方に魔物の群れを感知 危険度は中です』

俺のスキルが、魔物の群れが見えてくる前に教えてくれる。 前方に魔物の群れが見えた。 大虎の群れだ。 魔力を体中に循環させて、木刀を強化する。 いつもの桜の演出が入り、魔法石が光る。 

 「王子 何匹、倒すか競争しようよ」

鈴木が並走しながら、勝負を挑んできた。 銀色の足跡が前方に輝く。 その足跡を踏んで跳躍する。

 「鈴木 王子って呼ぶな!って言っただろ」

いつもよりも、跳躍の距離が大きい。 一歩で、大虎の群れに突っ込んで行く。 鈴木がその技ずるいとか、何か言っているのが聞こえたが無視する。 

 『花咲華の安全を確保 結界を展開しました』

頭の中で、花咲とフィンの会話が画像ともに聞こえてくる。 

 『私、何も出来ないのについて来て大丈夫かな……』

 『ハナにはハナの仕事あるのよ。 皆が倒した魔物から素材を取り出すのよ。 良い物は高く売れるから、傷つけないで採ってね』

花咲にそんな事出来るのか? 頭の上のフィルが声を掛けてきた。

 「ハナの事はフィンに任せて、今は大虎に集中しなよ」

目の前の大虎が俺たちに気づいて、攻撃を仕掛けてくる。 4本の爪が煌めいて、振り下ろされる。 その爪を木刀ですり上げて交わす。 体勢を崩したところを、魔法石である核(心臓)を突き刺す。 氷の魔法を放つと、体から木刀に魔力が流されていく。 魔物が内側から、凍りついて絶命する。 木刀を抜くと魔法石が転がり出てきた。 花咲の画像が送られてきた。 意外にも皆が倒した大虎から、平気な様子で牙とか血を抜いて採取していた。

 

 後方から、弓が放れる音がする。 瑠衣が放った矢が、数頭の大虎の胸を貫き絶命していく。 鈴木は、大虎を槍で空中に放り投げ、串刺しにしている……

次の大虎が襲い掛かってくる。 木刀を更に強化して、硬くする。 銀色の足跡を左足で踏み込んで、頭を狙って打ち下ろす。 大虎の頭が真っ二つに割れて、絶命した。 胸を刺して、核を取り出す。 俺たちは、大虎を倒して数を減らしていく。 大虎の大半を倒したが、まだ大分残っている。 

 「優斗! もう、そろそろいいだろ」

 「分かった」

瑠衣のその言葉に、皆の安全を確認して木刀を強化する。 花びらが舞い、魔法石が輝く。 地面に木刀をさして、魔力を流すと地面に魔力の波紋が広がる。 前に使った時よりも魔力の流れがスムーズだ。 体から魔力が抜け出る感覚、『全てを凍りつくせ』と思ったと同時に魔法が放たれる。 周囲の空気が凍りつく。 吐く息が白い。 地面が音を立てて凍る。 仲間以外の俺の周囲の全てが凍りついていった。 顔を上げると大虎の群れが氷の虚像になっていた。 そこから魔法石が零れ落ちていく。 前は氷刃が突き刺さったけど、今回は凍り付いたのか。 

 

 頭の中で、花咲は目をキラキラさせて、大虎の氷の虚像を見詰めている画像が送られてきた。 気に入ったのか? 花咲は離れた場所で零れ落ちた魔法石を拾っていた。 花咲の独り言が頭の中で響く。

 『この氷の虚像、持って帰りたい』

相変わらず花咲の趣味は分からない。 花咲、持って帰っても直ぐに解けるし、その後は腐るだけだぞ。

 『そうだよね。 直ぐ解けるよね。 腐ると匂うし……皆に迷惑かかるし、持って帰れないよね』

えっ?! 今、俺が考えた事が聞こえた? そう思った時、花咲がこっちを向いた。 その顔が驚いた表情をしている。 俺は花咲の方を向けなかった。 暫く何も考えないようにして、画像越しで見つめ合う。 確実に俺の方を見ている。 俺の声が聞こえたって事は、花咲の独り言が俺に聞こえた事が、花咲に分かったって事だ。 この距離で聞こえるはずないから、凄い驚いてる。 

瑠衣が魔法石の山を見て話しかけてきた。

 「結構、集まったな。 これ売ったら結構な金額になるんじゃない?」

 「やっと、お昼が食べれる」

 「仁奈は、そればっかりだな」

そう、冒険者ギルドに行った俺たちは、登録料金を請求されて、初めて気づいた。 俺たちは金を持っていないことに……。 魔法石が金になると聞いて、狩に来たわけだけど、俺は今、それどころじゃない。

瑠衣たちの声が遠くに聞こえる。 花咲は無言で俺たちの後ろついて来た。 どう説明しよう。

『異世界転移したら……。』を読んで頂き誠にありがとうございます。

まだまだ未熟ですが、気に入って頂ければ幸いです。

毎日、12時から14時の間に投稿しています。良ければ読んでやってくださいませ。

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