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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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二十ニ

アンバーさんの部屋に入って呆然とした。 壁が本で埋め尽くされている。 小さい窓が、扉の正面の壁に、等間隔に二つあるだけだ。 暫く、部屋の中を眺めてると、右奥の壁の端にある本棚が、半分以上空が出来ていた。 本棚の側に木箱が置かれていて、木箱に本が詰め込まれている。 荷造りの途中みたいだ。 アンバーさんは、部屋の中央のテーブルで、お茶の用意をしてくれている。 話してみると、とても物腰柔らかな人だった。 あの襲い掛かって来た人と、同一人物とは思えない。

 「何処かに行くんですか?」

 「ええ、エルフの里に帰るんですよ。 もうここに居る必要がないですからね。 セレンティナアンナが逝った後に、ここの後片付けをしたら出発します。 報告もしないといけませんしね」

 「報告って、花咲の事ですか?」

 「ええ、そうです。 しない訳にはいかないんですよ。 セレンティナアンナは村長の娘ですから。 今は代替わりして、彼女の、弟の息子さんが村長ですけど」

どうぞと席に勧められるがまま椅子に座る。 お茶を一口、飲んで話を切り出した。

 「……来ますよね? エルフの人たち、花咲に会いに」

 「来るでしょうね、それも数人は。 継承とか血筋を大事にする種族ですからね。 いくら私が彼女には、君がいるって言ってもね」

だよな。 秘術を受け継ぐんだから、黙ってないよな。 花咲、ちゃんと考えてんのか?

 「彼女はきっと、あなたの役に立ちたいだけだと思いますよ。 もし、エルフが来て、話しても分からない奴らなら、蹴散らしたらいいですよ」

俺の心を読めるのか、顔に出てたのか、ニコニコと笑顔で物騒な事を言う。 物腰柔らかなのに、中身は中々に好戦的な人だな。

 「俺、アンバーさんに簡単にやられたので、蹴散らせそうにないです。 アンバーさんが、血を受け継ぐことは出来ないんですか?」

 「私はもう、800歳だから。 体力的にも色々と……それに、もうそろそろ私も、寿命なんですよ」

 「ええええええええええ?!」

にっこり笑って、爆弾発言を投げてきたその言葉に仰天する。 てっきり30代位だと思ってた。 セレンティナアンナさんは? 幼馴染って言っていたから、同じ位か? いや、あの人はもう、死んでるんだった。 生きてれば同じ年って事か。 優雅にお茶を飲むアンバーさんは、どう見ても800歳に見えない。 しかも、もうすぐ寿命って……。 

 「セレンティナアンナさんって、昔からあんな感じなんですか?」

 「そうですね。 彼女は昔から変わりませんね」

クスクスと昔を思い出したのか、懐かしそうに笑っている。 その表情は、彼女を幼馴染以上に、思っている事を現していた。 彼女の死をどう受け止めているのだろうか。 そんな事は聞けないな。

 「魔力の籠め方はどうしてます? 魔力を体中に循環させて、使えば大分変りますよ。 結界は、破る時に分析しましたが、常に彼女の半径1メートルの位置で待機していて、いつでも魔法陣が展開出来るようになってますね。 発動条件は彼女が心から拒絶した時のみ。 だから、彼女が拒絶しなければ結界は発動されない。 エルフも人も善人ばかりではないですからね。 この話が広がれば、不老不死の秘術を欲しがる人は多い。 例え彼女が使えなくても、ハーフエルフを産ませれば、その子が使えますし、 子供は、洗脳しやすいですからね」

利用したい奴には、制作者が死ぬとか気にしないしな。 そんな薬、禁術にしとけよ。 

 「戦闘の方は、実際にやってみたら分かると思いますけど、ある程度のエルフなら倒せますよ。 魔法も強化出来るでしょうし、結界の方は、使うお二人で話合って、強化したらいいと思いますよ」

 「えっ」

話し合うって、このスキルの事を花咲に言うのか? それは出来れば避けたい。 芋ずる式に色々、バレる気がする。 一番、嫌なのは、気持ち悪がられて、嫌われて避けられることだ。

 「アンバーさんにも秘術とかあるんですか?」

 「私の家系は、セレンティナアンナと違い平民ですよ。 なので、そんなものは無いですね」

俺の言いたい事が分かったようで、素気無く断られた。 佇まいとか立ち振る舞いとか、平民に見えない。 貴族を知らないけど、そういうのじゃなくて、醸し出している雰囲気が、只者じゃないって感じなんだけどな。

 「実戦してみましょうか? 私は、里でも強い方なので、私と渡り合えれば自信になるのでは?」

 「お願いします!」

又もや俺の考えてる事が、顔に出ていたみたいだ。 二人で中庭に出る。 瑠衣たちも起きていて、俺たちが、手合わせするのを面白そうに見ている。 木刀を構えて、アンバーさんに言われた事を思い出し、魔力を体中に循環させてみる。 その流れで木刀に魔力を流し込んだら、今までよりも木刀と一体になった感覚がする。 魔法石の輝きもいつもより光ってるし、桜の香りも強いような気がする。 花びらが散る演出もいつもより多めだ。 この演出、要るのか? 花咲の趣味なんだろうな。 

頭の中で、花咲が起きだしてベッドから出る様子と、着替えを始める画像が映し出される。 ボタンに手を掛けた所で、【透視】スキルを停止させた。 だから、画像を出す前に聞いてくれ!

魔力が途切れて、木刀の強化が切れそうになる。 慌てて魔力を循環する事に集中する。 対面しているアンバーさんからクスッと笑いが漏れる。 この人、本当に心が読めるんじゃないか? 

『異世界転移したら……。』を読んで頂き誠にありがとうございます。

まだまだ未熟ですが、気に入って頂ければ幸いです。

毎日、12時から14時の間に投稿しています。良ければ読んでやってくださいませ。

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