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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
17/57

十六

──少し前

どうしよう。 あんな数、小鳥遊くん一人じゃ無理だよ。 私も何かしないと! 守られてばかりじゃダメだ。

「ハナ?」

足元で、怪訝そうな声が聞こえる。 今は、丸くて小さい。 羽根をパタパタさせている。

 左の頬に、三日月と桜が散った様な模様。 私の従魔の印らしい。 丸いフォルムが、段々と歪な形を取っていく。 そこに現れたのは、銀色の美少女だ。 身体は透けてるけどね。

内臓どうなってるのかな? いや、スライムだし無いか。 私は、この少女を[フィン]と名付けた。 もう、一人(一匹?)銀色の美少年がいる。 彼には[フィル]と名付けた。

フィンと同じ種類のスライムだ。 フィンの私を見つめる目は、何を考えてるの? って言っている。 私が考えてる事が、分かってるみたいだ。

「大丈夫。 私が出来る範囲で、小鳥遊くんを援護したいだけだから」

仕方ないなって感じの溜息をつくフィンが、呆れた顔で言った。

「ハナが行っても、邪魔になるだけだと思うんだけど……」

その時、背後から蹄の足跡が聞こえた。 振り返るとそこには、一角獣が鼻息を荒らげて、足踏みをして止まるところだった。 新手かと思って身構えたけど、見知った顔が覗く。

 私は、その顔を見た瞬間、反射的に動いた。 嫌な予感がして不安が広がる。 あ、結界から出てしまったと思ったけど、ススっと魔法陣が動く、私の動きに合わせて着いてくる。 ちょっと引いた。

目の端で、小鳥遊くんの後ろから、狼が襲いかかろうとしているのが見えた。 小鳥遊くんは、気づいてない。 私が結界から出てのが分かったのか、私の方を気にしてくれている。

殆どが反射的だった。 自分で言うのもなんだけど、こんなに早く動けるとは思って無かった。

「小鳥遊くん! 危ない!」

その後は、無我夢中だったから、あまり覚えていない。 私が放った魔法が、狼たちに当たったのは分かった。 私の横を風邪をきって、走っていったクラスメートの、後ろ姿が見えた。

二人が狼の群れを倒すのを、ただ、ぼぅーっと眺めていた。

「華……」

後ろから聞こえた声に思い出した。 何で、反射的に動いてしまったのか。 友人が怪我をして、青い顔をしているのが分かったからだ。

「仁奈!」

仁奈に駆け寄る。 太もものタオルが真っ赤に染まっている。 タオルを解くと、ザックリ切られた傷が露になる。

うぐっと喉を込み上げてくるものが……こんな傷、見るの初めて……。

フィンが後ろから覗いて、平気なそうな顔で診断をし始める。

「うわっ! 結構切ってるわね。 でも、鑑定してみたけど切れてるのは、脂肪だけみたい。 出血も結構あるから、造血薬を作った方がいいかな。……ハナ?」

青くなって、顔が強ばっている私に、怪訝そうな顔を向ける。

「華……無理しなくていいよ。 治療は街に行ってからでいいから」

仁奈は青い顔をして、強がっている。 絶対に凄い痛いし、街まで何て、我慢出来ないはず。

後ろから、二人分の足音が聞こえる。 狼の群れを殲滅したみたいだ。 篠原くんの怒ったような声が後ろから、背中に刺さった。

「何、言ってるんだ。そんなの無理に決まってるだろ。 今、治療出来るならした方がいい」

拳を握って心を決める。 振り返ってフィンに告げる。

「フィン、造血薬の薬草を見つけて来てくれる? 私じゃ見つけられないから」

「分かったわ」

「僕も行く!」

フィンはサッと立って、いつの間にか、少年の姿に変えたフィルと一緒に森の奥に消えた。鞄から消毒薬と軟骨を出す。 仁奈に説明をする。

「先に消毒するから、めっちゃ痛いけど、我慢してね」

痛みで呻く仁奈に、心を鬼にして、消毒を続ける。 私は、当たり前だけど医療の知識なんてない。 消毒をどれだけしたらいいか分からない。 どんな魔物のにやられたかも分からない。 だから、 消毒薬に消毒が出来たら、光るように加工魔法をかけている。 消毒が終わって軟膏を塗る。 これは止血と、自己治癒力を高める効能がある。 これでよしっと!

「後は、この体力回復薬飲んでね。 フィンたちが帰って来たら、造血薬も作るから」

「ありがとう、華。 ん! この飴、野菜ジュースの味がする。 華は……薬師とかそういうのなの?」

「ううん。 錬金術師かな……薬草から武器、防具、家具から家まで作れる。 専門は武器と防具!! このローブと、小鳥遊くんが着てる防具と武器も私が作ったの!」

「ああ、華らしいけど、ちょっとシンプルね」

仁奈は小鳥遊くんの姿を、上から下までジロジロと観察して批評した。

「うん、本人の強い希望によりあの様に……」

仁奈はその言葉で、全てを察したらしい。 仁奈には中学の時に私の趣味がバレた。

そして、仁奈のフィギュアが、あるのも見つかってしまった。 その時は、めちゃめちゃ怒られた。 あの時は本当に怖った。

『異世界転移したら……。』を読んで頂き、誠にありがとうございます。

毎日、12時〜14時の間に投稿しています。まだまだ、未熟ですが、気に入って頂ければ、

読んでやってくださいませ。

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