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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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十五

狼の魔物の咆哮と、強化した木刀で切り裂く斬撃と、魔法を発動する音が辺りに響く。 狼が飛び掛かってくる。 牙が届く前に横っ面をぷッ叩く。 ひっくり返った狼の腹に木刀を刺して、魔法を発動させる。

 ピキピキと物が凍る音がする。 狼は刺された場所から、氷の刃が突き出して絶命した。

やっばり、氷の魔法の方が使いやすいな。 頭の上に乗ってるフィルが、呆れたような溜息をつく。

 狼たちは、ジリジリと距離を詰めてくる。 一瞬の緊張の中、地面に銀色の足跡が現れる。

あれを踏んで、その通りに動けってことか。 木刀を構えて深呼吸する。 一つ目の足跡がある場所に影が浮かび薙ぎ払う動きをしている。 一つ目の足跡を踏んで、狼を薙ぎ払う。

足跡を踏んだ時からスピードが違った。 狼は俺の動きが読めず、吹き飛んでいった。

影が、氷の魔法を狼に向けて放っている。 起き上がろうとしてる狼に氷の刃を落とした。 何本もの氷の刃を受けて絶命した。

 次は二匹同時に襲いかかってきた。 銀色の足跡が地面で輝く、足跡を踏んで、二匹の攻撃を前方に移動して躱す、狼たちには消えたように見えただろう。 一匹目の背中に木刀を打ち込むと、背骨が折れる嫌な音がした。

 そこへ、二匹目が咆哮を上げる。 狼の全身から黒い煙幕の様なものが噴き出してきた。 大きく口を開くと、黒い炎の玉が俺に向かって放たれた。

木刀を持つ手に力を込める。 強化した木刀で打ち消す。 狼の足元に、銀色の足跡が地面で輝いている。

二発目を打たれる前に、足跡を踏んで踏み込む。 大きく開けた口に、木刀を突き刺した。 氷の魔法を発動させる。 内部から氷の刃が突き破って凍って絶命した。

 花咲が結界を出て、走り出したのが映った。 何してんだ? 結界から出たらダメだろ! そう思った時、地面の魔法陣がすぅっと動いて、花咲に着いて行く。 動くのかあの結界!  ちょっと引くな……。

花咲に気を取られて、後ろから数頭の狼が、襲いかかって来るのに気付くのが遅れた。 反撃が遅れて、数頭にのしかかられる。 木刀を二本に分けて、クロスに構えてガードする。 花咲は俺が襲わてるのを見て、目を見開いて驚いてる。

「小鳥遊くん! 危ない!」

キュイーンという機械音みたいな音が鳴る。  花咲の腕輪が光ると、突き出した手のひらに、

魔法陣が現れる。 飴玉大の球を取り込むと、再び腕輪が光る。 同時に、花咲の手のひらから魔法が放たれた。 花咲が放った魔法が、俺に襲いかかっている狼の数頭に当たった。 倒せなかったけど、体制を立て直すには役に立った。 魔法が当たった狼は、目をしきりにかいていた。 目潰しか何かか?

「伏せろ!優斗!」

その声に咄嗟に地面に腹這いになる。 髪に風圧を感じる。 六本の矢が、俺が立っていた場所を、

猛スピードで飛んでいく。 狼の群れに放たれ矢は、一本で何匹もの狼を串刺しにして、地面に突き刺さった。 心臓を貫かれたのか、狼たちは動かない。 矢は狼たちが絶命すると、煙のように跡形もなく消えた。 残りの狼の数を目算する。 この数なら全滅、いけるか。

「フィル、魔力制御手伝ってくれ」

「OK」

狼が俺の周囲を囲む。 仲間が大分殺られて、怒りは最高潮のようだ。 魔力回復薬を飲むと、口の中で、スっと溶けて魔力が全回復した。

木刀の強化を最大にする。 地面に突き刺したと同時に桜の花びらが舞い、香りが辺りを包む。

落ち着け。 落ち着いて制御すれば大丈夫だ! 囲んでいた狼が、距離を縮めて一斉に襲いかかってくる。

「優斗!」

瑠衣の声が遠くに聞こえる。 魔法を発動させる。 地面を突き刺した場所から、魔力の波紋が拡がる。 周囲の気温が下がる。 瑠衣が、立ち止まって固唾を呑んでるのが分かった。

『全てを凍りつくせ!!』

ピキピキと凍る音が鳴る。木刀から魔法を放った感覚を感じる。 地面が凍り、周りの空気も凍てついていく。 吐き出した息が白い。 狼たちに氷の刃が、突き刺さって殲滅したのが分かった。

魔力を大量に使い膝を就く。 回復薬を飲むと、体力と魔力が全回復する。

これで中くらいの技なんだよな。 きっつぅ!

 瑠衣が近付く気配がして、顔を上げると心配そうな顔が覗き込んで来る。 遊園地で分かれて、アトラクションに乗ってから、まだ、一日も経ってないのに、随分と懐かしく感じる。 瑠衣も、髪と目の色が変わっていた。

「優斗! 大丈夫か?」

手を差し出してきたから、その手を取って立つ。

「大丈夫だ。 その髪色と目の色、似合ってんな」

「お前ほどじゃないだろ。 魔物の大群に追われてるの見た時、どこのそっくりさんかと思ったよ」

「言ってろ」

「でもまぁ、互いに生きてて良かったな」

そう言って笑った瑠衣の言葉に、胸にじんわりと来るものがあった。

「ねぇ、あの子大丈夫なの?」

頭の上でフィルが、方向を変えるのを感じた。 パタパタと、羽根の音がする。

花咲の顔が青ざめて、強ばっている様子が送られて来た。 花咲、何か合ったのか? そんな様子は送られて来なかった。 慌てて花咲の所に急いだ。

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