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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
14/57

十三

銀色の少年少女はごくあっさりと帰れないと言った。 私はその言葉に最初に浮かんだのは母の顔で、次に思ったのは押し入れのコレクションどうしようだった。

 押し入れには私が今までに出会った美男美女の自作のフィギュアがある。 自作の衣装を着せて飾っている。

アニメのキャラとかならアニメ好きだったのね〜で終わる。 けど、芸能人でもない、実際の人物となるときついでしょう。中には母の見知った人もいる。 小鳥遊くんが心配そうにこっちを見てる。

きっと落ち込んでる私を心配してくれてるのかな。 自作のコレクションを発見される心配してるなんて言えないわ。 その後も色々話してたみたいだけど、全く耳に入らなかった。

「花咲、大丈夫か?」

「いや、母にコレクションが見つかっ!」

やばい! つい口が滑った。 慌てて口を押さえた。

「コレクションって?」

聞こえたよね。 言えない。 小鳥遊くんとその他の美男美女の自作フィギュアを母に発見されるのを心配してるなんて!!  チラッと小鳥遊くんの格好を確認する。 今、小鳥遊くんは私が作った防具を着ている。 こんな日が来るなんて、とても似合ってる。 でも、やっぱり物足りない。 アレが足りない。

「やっぱり竜が欲しいな」

「まだ、諦めてないんだ」

銀色の少年の呆れたような声が聞こえる。 小鳥遊くんも困ったように苦笑いしてるし。 声に出してしまった。小鳥遊くんと目が合わせられない。 クスッと笑い声がした。

「コレクションって、もしかして……」

じっと見つめられると辛い! ポロッと自白してしまいそう。

「うん、深くは聞かない事にする。 俺も知られたくない事あるし」

少し、赤くなって視線を逸らされた。 小鳥遊くんの知られたくない事ってなんだろう?


絶対に知られたくない。 俺のあのスキル。 ずっと、頭の中では花咲が映し出されている。

流石にじぃと見つめるのは出来ないしな。 あれ?  花咲も制服じゃない。 ローブっていうのか? アニメとかゲームで出てくるやつだな。 ローブの腰紐の飾りが光った。 あれ、あの時の魔法石か。 あの時の無意識に花咲を透視した画像が映し出される。

うわぁぁ! け、消さないと! 流石にこんなの持ってたらダメでしょ!  つかあの時、俺は告白混じりの事言ったような。

『花咲……俺から離れないで……なんだ』

あの時の動画が再生された。 俺のセリフも記憶されてるんだな。

うわ! 恥ずっ! 俺のセリフ再生するな!

あ、花咲の表情で分かった。 俺の言った事、聞こえてる。 それで何も言わないって事はスルーされてる?  画像は暫くして消えた。 あの後、すぐに気を失ったからな。 あの後、微睡みながら夢見た気がする。 考えたら俺、危なかったんでは?  動画が流れてきた。  困ったような泣きそうな花咲が映し出された。

『ごめんね、小鳥遊くん』

花咲の顔が近づいてくる。 顔に影が掛かって見えにくい。 暫くして離れた時、花咲の顔が真っ赤だった。 そして思い出した。 柔らかい感触と野菜ジュースと青汁の味を。 同じ動作が繰り返されて、最初の時より更に真っ赤になっていた。 夢じゃなかったのか。 そうだ、考えれば分かる。 花咲の回復薬で助かったんだ。

ガタン!

勢い良く椅子から立ち上がって、花咲を見る。 驚いて目を見開いている。

「小鳥遊くん?」

「花咲! 俺、今、気づいた。 花咲が回復薬を……」

言いきらないうちに、その時の画像が流れ出した。 顔に熱がこもる。 多分、茹でダコになってる。

 花咲は俺が何を言わんとしているか分かったようで。 花咲も真っ赤になった。 二人とも茹でダコだ。

「小鳥遊くん! その事は言わないで!」

「えっ……あ、でもっ」

花咲は食い気味に言葉を被せてきた。

「大丈夫だから! って、何が大丈夫か分かんないけど、それ以上言わないで〜! あの、それに新しい回復薬を作ったから、これで意識不明になっても大丈夫! 小鳥遊くんが辱めに合わなくて済むから」

俺に飴玉がいっぱい入った、丸い瓶を二つ押し付けるように渡してきた。 一つは体力回復薬で、もう一つは魔力回復薬だった。

真っ赤になって俯いている。 これ以上は無理だった。 花咲の顔を上げさせて微笑んだ。

「お礼だけ言わせて、助けくれてありがとう」

花咲はこれ以上赤くなれないくらい真っ赤になってる。 消え入りそうな声で

「私の方こそ、お礼も謝罪もしてなかった。 私の所為で大変な目に合わせてごめんなさい。 それと助けくれてありがとう」

笑顔でそう返してくれた。 この笑顔は、俺的ベストショットだな。

銀色の少年の声が現実に引き戻す。

「そろそろ僕たちのお願い聞いてもらってもいい?」

あ、こいつらの存在、忘れてた。

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