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異世界転移したら……。  作者: 伊織愁
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十二

 うららかな春の陽気の中、川のせせらぎが耳に入ってくる。 太陽の光を受けた草花の匂い。 そよ風が世界樹の葉を鳴らす。 眠りを誘う中、銀色の少年少女はお茶の用意をしだした。 いつの間にか椅子が現れ、座るよう促される。 テーブルには見たことない果物が並んだ。 俺と花咲、銀色の少年少女の四人?のお茶会が始まった。 銀色の少年が勧めてくる。

 「お腹すいたでしょ? 食べて食べて!」

そういえば、今何時か分からないけど、 朝、食べたっきりだ。 言われて気づくなんて、やっぱり冷静じゃなかったんだな。

 「私、お弁当持ってるんだった。 持ってくる。 ちょっと待ってて」

花咲のお弁当を開けると、見事におかずが寄ってぐちゃぐちゃだった。

 「まぁ、仕方ないよな。 だいぶ高いとこから落ちたからな」

 「……うん」

花咲はお茶と紙コップも持ってきていて、お茶を出してくれた。 飲んだら急激に腹が減って来た。

 「「いただきます」」

銀色の少年少女たちはお弁当に興味津々だ。

 「僕たちも食べていい?」

 「どうぞ」

 「じゃ、食べながら話しましょ。 時間も勿体ないし、これ不思議な味ね」

卵焼きだけど、他のおかずのタレやらソースが掛かってるから味は複雑になってるだろうな。

花咲は苦笑いだ。  銀色の少年が口を開いた。

 「僕たち、頼まれたんだ。 このダンジョンの主さまに。 君たちを助けてあげてって、でも力を手に入れるまでは干渉しないようにって」

  「ホントだ色々な味が混ざってるね」

 「私たちはここの管理を手伝ってるの。 主さま怒ってたからなぁ。 このダンジョンで手に入れられる力は魔王討伐以外では使ってはダメだって」

  「この赤くて丸い実は酸味があって甘くておいしい」

 「世界樹に触れた時に映像が見えたでしょ?」

そういえば、凄まじい魔法だったな。 街が消し飛んでたし。俺、そんな力を手に入れたのか。

 「魔力を最大値まで上げて、制御出来るなら使えるよ」

俺の心を読んだのか、銀色の少年が笑顔で言った。

 「魔王が居ない今は、そんな力要らないんだけどね。 どっかの王様が、私利私欲の為に勇者を召喚したのよね」

 「あ、これおいしい」

「勇者召喚も魔王討伐が大前提なんだけど、無理に召喚したから、その余波が凄くてね」

 「どれ?うん、おいしい。 これもおいしいよ」

 「ん! うん、おいしい」

 「分かってると思うけど、あなた達は勇者召喚に巻き込まれただけだから」

 「そう、主さまがどうして君たちを選んだのかは分からないけど、戦争にここの力を使われるのは嫌だったんだと思う」

ここまで銀色の少年少女は、黙々と食べながら話した。 口を挟む余地がない。 花咲なんて口を開けてポカンとしてる。

 「え〜と、つまりその主さまは、どっかの馬鹿な王様が召喚した勇者には力を与えたくなくて、俺たちをこのダンジョンに落とした。 理由は戦争回避?  これであってる?  余波っていうのは?」

 「そうだね。 無理やりに召喚をしたから、制御が難しくてね。 巻き込まれた人が多くて、助けられたのは君たちを含めて十数人だよ」

 「俺たちの他にも巻き込まれて、この世界に来た人間がいるのか?」

 「全員、この世界に来てるんじゃないかな?」

俺たちの後ろの席は瑠衣たちだ。 瑠衣たちもこの世界にいるのか。 ここを出たら見つかるか分からないけど、何とかして探すか。

 「何で、俺たちの見た目が変わったんだ?」

 「ああ、それはこの世界の平民の色だよ。 力を手に入れた後は、王様に見つからないようにする為に。 黒目黒髪は勇者の証なんだ。 この国には無い色なんだ」

 「平民?! このキラキラしい色が! 」

花咲が凄い驚いていた。 クオリティの高さがどうのってぶつぶつ言っている。

 「何かおかしい?  王侯貴族は、金髪に青い目、銀髪に碧眼だよ」

 「……目に優しくないな。 (ずっと、光ってそうだ)」

何処も彼処も、キラキラしてるのを想像してしまった。

 「召喚の余波で、身体が破損したから、修復したから。 もしかしたら、ちょっと違う所があるかも。それと魔力の受容体も入れてあるから……今更だけど帰れないわよ」

 「君たち元の世界で、魔法なんて使えなかったでしょ?  今、魔法が使えるのは受容体のお陰だよ」

まじで帰れないのか。 分かってたけど、現実を突きつけられると結構きついな。 花咲も真っ青になってる。

 「君たちは、これからどうするか考えて話し合って。 僕たちからも君たちにお願いがあるんだ」

これからどうするか……か。

 「魔王って本当にいないんだよな?」

魔王と闘うことになるのは避けたい。 銀色の少年少女は顔を見合わせて神妙な様子で話し出した。

 「魔王っていうのは悪魔に魂を売った人間のことなんだ。 誰しも心に闇はある、そこに悪魔はつけ込んでくるんだ」

 「心の弱い人が落ちていくのよね、悪魔に魅入られた人たちを私たちは魔族と呼んでる。 その魔族たちの上に君臨しているのが魔王よ」

 「だから、誰でも魔族になる素養があるんだ。 君だって、魔王にならないなんて保証はない」

 「あなたにはなってもらっては困るけどね。 さっきの質問だけど、今のところ魔王はまだ、発見されてないわね」

俺が魔王に? そんな事、ある訳ない。 悪魔か……そんなのまでいるのか。 大変な所に来たな。

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