十一
「本当に、これがいいの?」
呆れたような少年の声が聞こえる。何処かで聞いた事のある声だ。
「うん。かっこいいでしょ? 絶対、似合うと思う」
「似合う以前の問題だと思うわ」
花咲と少女の声が聞こえる。誰と話してるんだ。 花咲の位置情報が送られてくる。 次いで画像が送られてきた。 川辺で全身が銀色の少年少女と話している。 しかも、体が透けている。
『休憩ポイントの為、危険はありません』
休憩ポイント、そんな場所があったのか。 花咲の前にあるのは、俺の立体映像か……。 ファンタジーな格好をした俺の立体映像が色んなポーズを決めている。
立体映像の俺の足元に、魔法陣が展開されてるから、花咲の錬金術なんだろうな。
皮鎧なのか、 ベルト……結構付いてるな。 背中に桜吹雪、クリスタルか何かなのか? 光ってるな。 しかし、問題は……。
「僕なら着ないかな」
「私もちょっと遠慮するわ」
銀色の少年少女に無惨にも切り捨てられて、花咲は不満の声を上げている。
「俺もちょっと遠慮したいかな。 竜に巻き付かれる趣味もないし、ベルトも減らして欲しいかな。 背中の桜吹雪もちょっと、後、裾長くない?」
あっ……やばっ、ダメ出しし過ぎたか。 怒った? せっかく考えてくれたけど、もうちよっとシンプルなのがいい。
「小鳥遊くん! もう大丈夫なの?」
「うん、心配かけてごめん。 それよりこれ……何で竜が巻きついてるんだ?」
「元気になって良かった……やっぱり竜はダメかぁ」
「うん、ダメかな」
ちょっと悲しそうな感じだったけど、ごめん。
俺の防具は、ベルトも減って背中の桜吹雪もなく、竜も外されて大分シンプルになった。
裏地が……派手だな。 裾に桜吹雪が散ってる。 どうしても桜柄にしたかったのか。 まぁ、裏地だし見えないからいいか。 これ? 宝石か? しげしげと眺めていると銀色の少年が教えてくれた。
「それは君が倒した魔物から取り出した魔法石だよ。 それに色んな加護を付けてるから、皮鎧だけど、結構頑丈に出来てるよ」
魔法石なのか! 当たり前だけど初めて見た。 不思議な色だな。 ピンク色なのに虹色に光ってる。
「木刀にも魔法石加えてみたんだけど、これで魔法使っても暴走しないし、魔力も込めやすくなってるはず」
桜柄が立体になってる。 更に派手になったな。
「俺ってそんなに桜のイメージある?」
「えっ! 元々、魔法陣に入ってて、防具も……だから私が考えたわけじゃ……(桜っていうか、柔らくて優しい桜の香りがイメージに合うっていうか……たまに私に向けてくるあの笑顔のイメージなんだけど……)」
なんだ? しどろもどろだし、花咲の顔がめっちゃ赤いけど。 俺、何か変なこと言ったか?
銀色の少年が話に割って入ってきた。
「武器と防具の柄は、主さまが考えたんじゃないよ。 主さまが与えたのは彼の武器や防具を作る為の魔法陣だからね。 その人にあった物を作る為には鑑定とかして魔法陣を組まないと出来ないから、鑑定道具とかいるんだけどね」
それをすっ飛ばして、花咲に与えたって事か。 なら、俺に桜のイメージを抱いてるのは花咲か。
ん? 今、主さまとか言ったか?
「主さまって? それにお前らは何者だ?」
銀色の少年少女たちが待ってましたとばかりにニヤと笑った。




