寄り道
勉強を終えた俺達は、予定通りゲームセンターに足を運んだ。
入った瞬間に耳に爆音が響く、っうるさ。
「ゲーセンなんて久々だなぁ……」
「だな、どれからいく?」
「うーん……じゃあアレやろう!」
周が指したのは、銃を使ったシューティングゲームだった。
「了解。藍川達は?」
「おぉ、俺はそれでいいぞ、交代しながらやろうぜ。結月と天童さんは?」
「いいよー。ましろんと組んでやるー」
「お手柔らかにお願いしますね、結月さん」
「えへへ~、お任せあれ」
五人で交代しながらプレイすることに決まり、最初は周と藍川で組むことなり、俺達はそれを観戦していた。
「悪いな櫻井、彼氏を借りてしまって」
「別にいいよー、ヒロくんも楽しそうだし、二人のこと気に入ったみたいだしねー。多分学校でも絡まれると思うよ」
「そ、そうか……天童も付き合わせて悪かったな」
「いえ、ゲームセンターは初めてで驚きましたけど、大丈夫ですよ」
やっぱり初めて来たのか、ずっと耳押さえてるし。
「まぁこの音も直に慣れるさ、ていうか二人はホントにあれでいいのか?あれゾンビとか出るホラー系だぞ?」
「余裕」「え?」
返事のタイミングは同じだったが、反応はそれぞれ違った。明らかに天童が「聞いてません!」といった感じだ。
「あー、もしかして天童ってホラー苦手?」
「………………全然平気です」
「そのわりには間があったような……」
「別に……」
無理なら無理って言った方がいいと思うけどな、……あっ周達がやられた。
「だーくそ、負けた~」
「惜しかったんだけどなー、じゃ交代しますか」
次は櫻井と天童のペアだ、「よーし」「いきます」と意気込んでいたものの――
「わー、くるなー!こっちくるなー!!」
「ぜ、全然当たらないです、結月さん!」
「ましろん!銃向けるだけじゃなくトリガー引いてー!!」
「と、とりがー?どれですか?」
「「………」」「あはは、結月~がんばー」
俺と周は二人のあまりの下手さに唖然、それでも藍川は彼女に声援を送る。
櫻井の撃った弾はゾンビ達に全く当たっておらず、天童は撃ててすらいない。
結果……二人は瞬殺された。
「あーあー」
「……やられてしまいました」
「ドンマイ、二人共」
少し落ち込んでしまったようだが、何事も経験だろう。
さてと、次はなにをやろうかな、簡単なのがいいなー。
「よし、いくぞ御幸」
「え?まだやるのか?」
「負けたままは嫌だからな、リベンジだ。天童と櫻井と藍川の仇もとる」
「周……」
ま、眩しい。そんな純粋な瞳で俺を見るな!
藍川達も「海藤お前……」「海藤、いやカイくん」「海藤さん」とちょっと感動してるし。
「分かったやる、やるから」
「そうこなくっちゃ」
でもホント久々だなぁ、まぁとりあえずやってみますか。
「これでラストっと(バン)」
最後のボスキャラを倒すと、画面上に『congratulation』と表示される。
ふぅ……なんとかクリアできたようだ、ストレスも発散できたし、よかったよかった。
ちなみにノーダメージでハイスコアだった。
「どうだ?スカッとしたか?」
「あぁ!でもまだ足りない、次行こうぜ」
「ん」
頷きながら藍川達の方に戻る、次やりたいのあるか聞かないと。
「藍川、次どうする?」
「……大神ってこういうの得意なのか?」
「えっと、そうだな、前はゲーセンよく来てたし、一人で」
「それがどうした?」と聞くと藍川達は温かい目で俺を見てきた。……なんなんだ一体……
「一人で……か……」
「大神……」
「大神さん……」
「ん?どうかしたか?」
「「「い、いや、別に」」」
「そ、そうか」
三人がシンクロしてセリフが重なった、ホント仲いいね君達。
「御幸!次はアレをやる!んでその次は――」
おいおいどんだけ遊ぶ気だよお前、言い出しっぺは俺だし付き合いますけども。少しは休ませ――ダメ?
……はぁ、仕方ないか……
「うぷ、少し酔ったかもな……」
散々ゲームを満喫できたが、その分ダメージもあった。慣れないゲームをやり過ぎて3D酔いしたのだ、気分はあまり良くない。
落ち着かせるために、周を藍川達にまかせて俺は今クレーンゲームをやっている。
狙いは適当なスナック菓子だ。小腹が空いたし、なんか食べたい。
お金を入れてクレーンを手慣れた手つきで操作し、比較的落ちやすそうなのを狙う。
(昔母さんに仕込まれたおかげだな……懐かしい……)
子供の頃は両親に連れられて、アクティビティやらビリヤードやダーツ等、少し大人な遊びも母さんたちに教えてもらった。
そのおかげか、こういったゲーム類はけっこう得意なのだ。
「よし、落ちた」
取ったお菓子を片手に他のクレーンも見て回る。辺りを見ていると、ネコのぬいぐるみをじーっと見つめている天童がいた。
どうやらクレーンに挑戦中らしい、すごい集中力だ……
アームがネコの頭に引っかかり、持ち上がった。「よし」とガッツポーズする天童、だが――
「あっ……」
あと少しというところで、アームから落ちてしまった。顔を俯かせて「がーん」と落ち込んでいる。そんなにほしかったのか……
「天童」
「……なんですか?」
「……アームで持ち上げるんじゃなくて、爪で穴の方に押し出してやれば多分落ちるぞ」
「え?」
半目で睨まれて一瞬ビビったが、アドバイスしてやるときょとんとした顔になった。苦笑し、コインをいれる。
「ネコほしいんだろ、もうちょっとだしやってみたらどうだ?」
「……はい……お金は後で」
「いいよ、これくらい」
そんな俺の様子に何故か天童がムッと不服そうにする。そして「だめです」と返された。
「お金の貸し借りはしたくありません。なので返します」
「別に貸したなんて思ってないし、俺が勝手にやったことだから返されても迷惑だ」
「ですが……それでは私の気がすみません」
「本当に気にしなくていいから……ほら、ネコが天童を待ってるぞ」
強情な天童をネコというエサでつる、すると「うぐっ」と口をつぐみ、ネコをチラ見し……クレーンを操作し始めた。
アドバイス通りアームの爪でぬいぐるみを動かし、転がしてやる。それを数回繰り返すとポテンと穴に落ちる。
「やった……と、取れました」
「だな、お疲れさん」
取り出し口からぬいぐるみを取り、「ほら」と天童に渡す。
天童はじーっと見つめた後、包み込むようにぬいぐるみを抱きしめた。いつもツンとした表情の彼女だが、今の彼女は穏やかなで無垢な微笑みを浮かべていて、普通に可愛いらしい。絵になるなぁ……
「おーい。御幸ー」
そんなこと考えていると、周達が近づいてきた。満足げな表情の周に、疲れた顔の藍川と櫻井、……どうやらかなり振り回されたようだ。
「満足したのか、周?」
「おう。いやー遊んだ遊んだ」
「そっか。じゃ、そろそろお開きにするか」
「そうだな……少しはしゃぎすぎた」
「うん……ヒロくん一緒に帰ろー」
「おう、いいぞ」
(悪いな二人共)
後でなにかお礼しよう、と決めた俺だった。




