人は怒ると怖い
「その噂……誰が言ったの?クラスの子?」
「え、えっと、その……」
周の雰囲気がさっきと別人のように変わった。
普段は爽やかなイケメンで優しいのだか、怒るとけっこう荒れるのだ。
心なしかさっきよりも寒くなってきた……カゼかな?
櫻井も周のあまりの変わりように少し震えてる。藍川と天童が緊張した面持ちでこちらを見てくる。
そんな心配した顔しなくても、分かってるって。
「周、少し落ち着け」
「御幸が俺に媚びる?女子目当てに?一体なにを根拠に言ったんだそいつは?」
「周~聞いてる~?」
「どいつもこいつも勝手なことばかり……」
うーん、ダメかぁ。……こうなったら。
「周…………帰りにゲーセン寄ろうか?」
「行く!!!」
「「「…………」」」
さっきまでの怒りが消えた。
……ふぅ、なんとか危機を脱することができたようだ。
恐らく仕事にテストと重なってストレスが溜まっていたのだろう、少しくらい問題ないはずだ。
三人は周の変わり身の速さに声もでないようだし。
これにて、一件落着。
「じゃあ、残りの問題ちゃちゃっと終わらせな」
「おう!帰りはゲーセンだからな!!」
「はいはい」
さっきとはうって変わって笑顔になった周は再び机と向き合い、集中する。
タイミングを計り俺は小声で藍川達に話しかける。
「驚かせて悪いな」
「……正直めっちゃビビった」
「まさかあんな怒るとは……」
「以外ですね……」
案の定、三人共驚いていたが嫌悪感は感じられない。
良かった。俺の噂のせいで周が嫌われるとかたまったもんじゃないからな……あいつの薔薇色な高校生活は俺が守る!!
と心に誓いを立て、三人に向き合う。
「普段は穏やかだけど、たまに感情的になることがあるんだ、でも本人に悪気はないから、許してやってほしい」
「頼む」と頭を下げてお願いすると、櫻井が慌て口を開く。
「あ、謝らないでよ。原因は私が軽はずみなことを言ったからだし」
「そうだぞ大神。確かにヒヤッとしたが、全体的に結月が悪い」
「そうですね。結月さんが悪いです」
「二人共……少しくらい庇ってくれても……」
「あはは……」
苦笑すると同時に安心した、話しの分かる人達でよかった。
天童もだけど、藍川と櫻井もいい人だな。
俺がほっといていると藍川が
「大神、俺も一緒にゲーセン行っていいか?」
「あーヒロくんズルい、私も行く!ましろんも行こ?」
「え?えっと……はい、私でよければ」
あれ?お、おかしい、なんでそうなるんだ?
てか天童も来るのか?ゲーセンとか行くんだ……少し以外。
……まいっか別に、俺も最近ゲーセン行ってないし、息抜きには丁度いいだろう。
「俺はいいけど……いいのか?」
「ん?なにがだ?」
「だって俺暗いし、地味だし、一緒に遊んでも多分楽しくないぞ」
昔からそうだった。
他人が楽しそうにしてることに興味が持てず、輪の中に入れずに一人で過ごす。
地味で暗いのも相まって周りからは露骨に避けられてた。
だから無理しなくてもいいんだぞ、という意味で聞いたみた。
すると藍川が「そんなの関係ないだろ」と言った。
「ついさっき話したばっかりだけど、俺は大神は友達思いのいいやつだと思うぞ」
「私も。まぁ最初はちょっと苦手なイメージあったけど、大神無表情で何考えてるのか分かんないし」
ごめんな櫻井、この顔は生まれつきなんだ……
「でも海藤は大神のために怒って、大神は海藤のために謝った。お互いに信頼してるのがよく分かったよ」
「えぇ……少し羨ましいですね」
藍川に次いで櫻井と天童も俺と一緒でも大丈夫だと言ってくれた。
あまりにもハッキリと言われて少し気恥ずかしくなり、俺はそっぽを向き「ありがと」と呟く。
……藍川と櫻井はニヤニヤし、天童はクスリと笑っている。
「な、なんだよ」
「いや、露骨に照れくさそうにしてるから(プルプル)」
「ぷふふ、大神って分かりやすいね」
「ふふ、ホントバレバレですね」
「うるさい、……ゲーセン行くならお前らもある程度は勉強しろよ」
そう告げた後、櫻井と天童は再び勉強し始める。
一方藍川は「大神はなんのゲームするんだ?」「普段なにやってるんだ?」「髪切らないのか?」等と質問してきて、俺は集中出来なかった。
……随分グイグイくるなー、周みたい……
そう思わずにはいられなかった。




