勉強
「周、そこの計算間違ってるぞ」
「どこ?」
「ここ。使う公式はそれじゃない、あと代入する数も違う」
放課後の図書館で、俺は周と勉強していた。
というより周に勉強を教えている、ヤバいとは言ってのはマジだったらしい。
「いやー助かるぜ御幸、流石に赤点はまずいからさー」
「数学だけなら問題ないさ、俺も復習できるし、ほら集中」
「おっとそうだな。時間は有限だもんな」
お互いに集中して、机に視線を戻す。――が
「ねぇましろん、これで合ってる?」
「はい。正解です」
「やった!」
「大分解けるようになってきましたし、これなら大丈夫そうですね」
「ありがとう、ましろん」
「いえ、結月さんが頑張ったからですよ」
……隣で天童とその友達が勉強している。
テストが近いということもあり、図書館の利用者がいつもより多く、席が空いてなかったのだ。
周は「別にかまわない」と言ってるからいいけど、少し落ち着かない。
「海藤、大神。勉強捗ってるか?」
「……ボチボチだ、お前は勉強しないのか藍川?」
「俺は結月がサボらないよう見張ってるだけ」
話し掛けてきた藍川こと藍川祐人、学校ではバカップルとして有名なので覚えていた。
赤髪で少しチャラい印象だが、誰にでも明るく親しく接するコミュ力オバケで、リーダーシップもあるイケメンだ。
その藍川の彼女というのが――
「失礼な、ちゃんと真面目にやってるし」
「みたいだな、偉いぞ結月」
「ヒロくんこそ勉強しなよ~」
「俺はコツコツやってるから」
「うえーん、ましろーん。ヒロくんが余裕アピールでいじめるー」
結月と呼ばれている櫻井結月だ。
橙色の髪をショートカットにしていて、明るい雰囲気で人当たりもいい。活発でにぎやかな美少女だ。
「はいはい、大丈夫ですよ。藍川さんもほどほどに」
「分かってるよ、天童さんも勉強はほどほどにね」
「はい」
三人は同じクラスだからなのか仲が良いらしい。
まぁ、天童と櫻井が仲いいのはこの間一緒に店に来たから知ってたけど……見ていた参考書から視線を周に移す。
「………」
ちゃんと集中できているようだ……よかっ――ん?
「ぐー」
「………」
参考書を丸めて棒状にし、スパァンと周の頭を打ち抜く。
「!いった!な、何事!?」
「起きたか?クソ野郎……」
「み、御幸!?……もしかして俺寝てた?」
「あぁ、見事にな」
「悪い悪い、ついうっかり……」
全くコイツは……でも、最近仕事忙しいみたいだし、仕方ないか。
はぁとため息をつくと……隣から視線を感じる。
見ると藍川達がポカンとしていた。どうしたんだ?
「なにか用か?」
「い、いや、ちょっとな……大神っておとなしいイメージだったから、以外だと思ってさ」
櫻井と天童も「うんうん」と頷いていた。そうかな?
「今のは寝てた周が悪い、だから起こしただけだ」
「随分アグレッシブな起こし方だな」
「この方が手っ取り早いからな」
「けっこう厳しいんだな……」
「愛の鞭だ、いじめているわけではない」
でも端から見れば、そう見えてもおかしくないかもな。
……いや、今さらか……
「ていうか二人っていつも一緒にいるよね?やっぱり仲いいの?」
櫻井が質問してきた、そもそも俺みたいなやつが周と釣り合うわけがない。
人気上昇中の現役モデルと根暗な陰キャだぞ。
俺が「そんなわけないだろ」と否定しようとした時――
「ああ。御幸とは中学三年間同じクラスだったし、部活も一緒だったからな、ちょっと口は悪いが俺の自慢の親友だ」
周が真っ先に肯定してきた。
……嘘偽りなく言っているだけに質が悪い。否定しづらくなっちゃうだろ。
頬を引き攣らせていると、藍川と櫻井がニヤニヤして、天童は澄ました顔をしている。
「へぇーそうなんだ。やっぱ噂は噂ってことなんだね」
「噂?」
「うん。海藤ってモデルやってて人気あるから、大神はそれをステータスに女子と仲良くするために媚びてるんじゃないかって」
……なにその噂、初耳なんですけど俺……
てか、端から見るとやっぱそういう風に見られてんだな、分かりきったことだけど少しへこむ。
「……それ……誰が言ったの?」
「え?」
周が信じられないほど低い声を出した。
おっと。これはヤバいな。




