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始まりの出会い

「俺と付き合ってください」


 放課後。


 誰もいない静かな教室で私は告白された。


「申し訳ありませんが、私は誰かと交際するつもりはありませんのでお断りさせていただきます」


 そう言って私は静かに男子生徒の顔を見ます。


「……どうして?」

「私はあなたのことをよく知りません。ですからあなたの気持ちに応えることはできません」


 はっきりと言い切られた男子生徒は唇を噛んで「……そっか」と告げて教室を出ていく。




 これで何回目だろう。


 客観的に見て自分の容姿が整っている自覚はある。今まで自分磨きを怠ったことはないし、勉強も運動もそれなりにできるよう努力してきた。


 でも別にモテたいわけではなかった。


 なのにいつもキッカケを作ろうと迫られたり、しつこく連絡先を聞かれたり、今日みたいに告白される。特に後者はそれを断らないといけないので、精神的に疲れてしまう。


 そんなことを考えながらいつもより重たい足取りで歩いていると、家の近くの公園に通り掛かる。無意識に視線を公園に向けると――私の高校と同じ制服の男子が木に登っていた。


「あれうちの制服ですよね?どうして?」


 よく見ると、木の前には小さな女の子がいて、木枝には帽子が引っ掛かっていた。恐らく女の子の帽子なのだろう。


 私が一人で納得している内に、男子生徒は枝から帽子を取って木から降りていた。帽子を女の子に被せて、手を振り返し、こっちに歩いてくる。


 ――彼と視線が合った。


 肩まで伸びた長い黒髪。眼鏡をしていて、目は前髪で少し隠れている。身長はけっこう高い、多分百八十はあると思う。


 名前は確か大神さん、のはず。先月の中間テストの結果で上位にいたので覚えていました。


 クラスは違いますが、モデルをやっている人ととても暗い人がよく一緒にいるって。クラスの人達が言っていました。


 私が考えていると、彼が素通りして行ってしまいそうだったので思わず――


「待ってください」


 と言ってしまいました。


「なに?」

「大神さんですよね、同じ高校の」

「そうだけど、なにか用?」


 返事をしてくれましたが、どこか面倒くさそうな感じです。まるで誰とも関わり合いたくないと言わんばかりです。


「いえ特にこれといった用はありません。ただ、普段の学校のイメージと真逆の行動をしていたので少し驚いただけです」

「あっそ。じゃあ俺はこれで」


 あっ、行ってしまいます――私の家と同じ方向です。


 もしかしてご近所さんなのでしょうか。


 取り敢えず私も帰路につくために歩き始めます。


 スタスタ。

 スタスタ。


 スタスタ。

 スタスタ。


「……君の家こっちなの?」


 大神さんが話かけてきました。


「はい、ここは普段通っている道なので」

「ふーん」


 ……会話が終わってしまいました。いつもはすぐ言い寄られて、連絡先を聞かれるから少し新鮮ですね。


 すると――


「天童」

「はい?」


 名前を呼ばれます。


 ――あぁ。またいつもやつが始まるのかと思い、警戒していると――


「あぁ、悪い。君の名前さっき思い出して……」

「え?……今まで私が誰なのか分からなかったんですか?」


 拍子抜けしたと同時に……なんか悔しさを感じますね。


「いや、その、あっ!俺の家ここだから。それじゃあな、天童!」

「え?ちょっ――」


 ……行ってしまいました。



 …………なんか、すごいモヤモヤします…………




 正直、私は男性が苦手です


 何かふとしたキッカケで「連絡先教えて?」「一緒に遊ばない?」等としつこく迫ってくる。


 今までそんな男性ばかりでしたから、どうせ彼もその一人だろうと思っていました。



 ――でも彼はなにもしてこなかった――


 それどころか終始面倒くさそうにしていた。


 ……ですが私を油断させる演技である可能性もある以上、警戒を怠るわけにはいきません。


 でも……



「……ああゆう人もいるのですね……」






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