表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

理想の自堕落な生活を見つけた

 さて、僕に敵意を燃やす、他の妃候補達。あれからも、あの手こので僕の命を狙い、手を引けと言わんばかりに脅してくる。

 ギリギリ気付くようにしている所を見ると、本気で命を取ろうとはしていない。


 シルエットだけで退場となったのに、しつこいったらありゃしない。ただ、今も姿は見せていません。


「そこのあなた! どうかしら? いい加減――」


「うわぁ……窓からの逆光で~からの捕獲」


「うきゃっ!! ちょっと……またシルエットだけ?! 酷くないかしら!?」


 そこに立っているのが駄目なんですよ。しかも、ちょうど日の当たる所に……。

 とにかく、カーテンを使ってグルグル巻きにして、その人の身動きを奪うと、カーテンの重さを変えて、更に動けなくしました。


「うっ……なにこの力……」


「僕のちょっと変わった力です~」


 僕の能力に関しては、まだ確定していないから、あんまり迂闊に話して、色んな面倒を引き寄せるわけにはいかない。

 だからって、使わないのはもったいないから、言葉を濁して使っていきますよ。


 こんな風に命を狙われていたら、いつまで経っても自堕落に生活出来ない。それなら、早いこと妃になっちゃえば良いけれど、そこはやっぱり男のプライドがね……。


「認めるも何もないんだよ……あの人達はもう……」


 適当にあしらっても、しつこく妃の座を狙ってくる。

 確かにこの国は、豊かだし、もっと便利な生活を実現出来れば、夢の理想郷だよね。ビーチもあったし……あれは絶対に、ルドルフのお母さんの賜物だ。


 しかし、この国の外は、獣人や亜人の差別のある場所もあって、ちょっと面倒くさい。


「そういえば、あの別荘大丈夫かなぁ……」


 だいぶ王都兵に敵視されていそうだから、焼き払われていたりして、そうなると無事かどうか気になってくる。

 かといって、そうそう行けるものじゃないし、やってしまったかも知れない。


「こう、なんか……自由に色んな場所に行ける、ワープみたいな能力もあればなぁ……鳥居とか作ってさ、そこを潜れば別……荘……とか」


 廊下を呟きながら歩いていたら、本当に目の前に赤い鳥居が現れた。どうなってるのやら……いや、イメージした通りになるから、可能性はあったけれど、万能過ぎませんか? それだけの力なんだって事だけれど、そろそろ何か反動が起きそう。


「ん~今のところ大丈夫そうだけれど、まぁ良いか。これ、僕の行きたい所に飛べるのかな?」


 とりあえず、ものは試しだ。その鳥居を潜ってみる……と。


 一瞬で背景が代わり、見たことのある山の景色が目の前に広がった。


 ここは、最初に居たあの区に、あの山だ……本当に一瞬でワープした。


「やった……! ルドルフ君は悪くないけれど、ちょっと跡継ぎやら妃候補とやらで大変だったし、久しぶりにここでのんびりしよう~」


 意気揚々と扉を開けて、中に入る。多分、ナティアがちゃんと綺麗に――


「はぁぁぁ……サクラ様……次はいつ会えるんでしょう。ちょっと寂しくな――」


 僕のベッドに寝転がり、シーツやら布団をクンカクンカしているナティアが居ました。

 僕が恋いしいと言っても、まるで長い期間お留守番させられていた犬みたい……。


「わぁぁぁあ!! サクラ様!? はぇ? えっ、いったいいつ……!」


「まぁ、今さっきですね。ちょっとワープ出来たので、のんびりしたくてやって来ました。だけど、ナティアちゃん。流石に女の子同士だよ?」


 中身は男だから、こんな可愛い子に好かれるのは悪くないけれど、ちゃんとお相手出来そうにないから、申し訳ないんだよね。というか、僕に助けられたからって、ここまでとはね。


「あ……あぅ。あの、ひ、引いてないですか?」


「ん、大丈夫。それより、鉱石士さん達は居ないですよね?」


「あ、はい。今日の仕事が終わられて、麓の街に帰りました」


 良かった。あんなムサイおっさん達に見つかったら、またバシバシと叩かれそうだし、飲めや食えやのドンチャン騒ぎになりそうなんだよね。


「それよりサクラ様。なんだか疲れた顔をされていますが?」


「あれ? そう見える?」


 なんだかんだ、あの国に行ってから、全くのんびり出来ていないんだ。それなら、ここでしばらくのんびりさせて貰うしかないよね。


 ◇ ◇ ◇


「えぇ、それは大変ですね」


「大変なんてもんじゃないよ、毎日毎日全くもう……」


 晩御飯を用意され、久しぶりのナティアの手料理に舌鼓を打ちながら、これまでの事を愚痴っています。

 この子は友達みたいな感じで、僕の愚痴もこうやって聞いてくれるからありがたいよ。


 自堕落な生活をしたかったのに、結局最初のこの場所に戻る始末。


 だけど、この場所は教会とか王都兵とかが面倒くさいんだよね。


 宗教関連は面倒くさいよ。お寺のお坊さんは、結構貰える時は貰えたりするし、教祖とかも大変だろうけれど、信者から――信者、信者? あれ……もしかして、信者付けるとあれやこれや命令してやらせられる? 当然、僕も何かしないといけないけれど、そんなのこの能力でちょちょいのちょいだよ。


「…………」


「サクラ様? 何か悪い顔をされてますが……」


「あはぁ、良いこと思い付いちゃった。君、信者1号ね」


「えっ? 信者? まさか、サクラ様……」


「そのまさかぁ~ルース教会の本部はどこだっけ~?」


「えっと、航海不能な海の……」


「あ~だいたいの場所で良いよ」


 そして僕は、ナティアからだいたいの本部の場所を聞き、早速鳥居を出して、そこへと繋げる。あとはダイブして移動する。


 そして事を終えれば、僕は今日から自堕落に生活出来るはずだ。


 ◇ ◇ ◇


 海の孤島にあった、例の教会の本部に来ると、早速僕は行動を開始した。


 こんな海に囲まれた所にあったら、なおさら僕の自堕落な生活の、安定した基盤になるね。


 さて、僕の登場で泡食ってる信者達は、僕の能力で1つの所に纏めて、団子みたいにコネコネして、丸めて放置です。


「……あ、あぁぁ、狐の亜人。あの狐の亜人が来たぞ~!!」


 そういえば、丸めた中に見知った顔があったけれど、まぁ良いや。


 中に入ると、広々とした礼拝所に出て、その先に上等な冠を被り、これまた高級そうな法王らしい衣装を纏った男性が現れた。


「これはこれは……教会への入会ではなさそうですね。いえ、魔の者の手さ――」


「あ、そういうのどうでも良いんで」


「あはぁぁぁぁぁ!!!!」


 浮かせてグルグル回して、そのまま逆さにして叩き付けておけば、あっという間に気絶だよね。


「ルース教会の諸君~今から僕に襲いかかるのは止めた方が良いよ~何せ僕には、地帝からの贈り物があるからね~僕を攻撃するのは、大地を掘る事と同じで、魂を砕かれちゃうよ~」


 もちろん、そんなのはでまかせさ。本当にそうかもしれないけれど、地帝から貰ったものには代わりないし、こいつらには一定の効果があるだろうね。加えてこの能力。

 早速教会の全てをバラバラにし、僕好みの、神社のような建物へと作り替える。


「あぁぁぁぁ! 何をする!?」


「うるさいなぁ、今日から僕が、信仰の対象になるんだよ? 僕が、この世界の神様になるんだよ」


「何を……亜人ごときが――んぐっ!?」


「そ~んな口の悪い人は、お口にチャックして、永遠に開かなくしておくよ」


「んんん!! ん~!!」


 ただの教会関係者だろうけれど、そんなの関係ない。有無を言わさずに、僕の力を見せつけて、地帝の力も見せつけて、信仰したくて堪らなくしてあげる。


 ◇ ◇ ◇


 その後――


 新興宗教「サクラ教」が産まれ、人々の熱心な信仰を一心に集め、獣人国をも巻き込み、世界が1つの宗教に統一され、ある意味平和な世界が産まれたのだった。


 1人の自堕落な神の誕生ともに……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の性格からしてこんな終わり方になるのは仕方ないとしてなんか不完全燃焼感が...
2021/12/17 13:52 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ