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獣人王の奥様は転生者?!

 魔女化した、ピューマの獣人の子のお母さんは――


「うぐぅぅ……がぁぁぁあ!」


「とりあえず大人しくしておいてください」


 一撃で取り押さえたけれど、この魔女化を治す方法が無い。どうしよう……。


 今は地面を盛り上げて、それで獣人の女性をグルグル巻きにしているけれど、あんまり魔女化が長いと、命を落とすって言われているんだよね。それなら、急がないといけないんだけど。


「お母さん! お母さん~!」


 何とかする方法が思い付かない。

 首にかけているネックレスが、淡く輝いているくらいしか……って、何でこれが輝いているの? 地帝から貰ったネックレスが、何で……まさか。


「…………」


 手にしたネックレスを、イメージで槍っぽくして……。


「えぃ」


 それで、獣人の女性を突いてみた。すると――


「がぁぁ……ぁぁぁ」


 黒い部分が弾け飛び、禍々しい骨みたいな部分も、砂みたいになって崩れた。


「なんてことでしょう……」


 これじゃあ、ルドルフの存在意義がなくなるぞ。僕までこんな事が出来てしまったら、彼のプライドが……は、気にしない。

 これからは、僕も魔女化を止められると言うことになるから、戦力が増えて一石二鳥じゃん。やったね。


「ふふ、これなら自堕落に……って、あれ?」


 ただ、心なしか動機が早くなっている。

 しまった……こんな力を使った反動で、身体に何か負担がかかってるのかな。


「う~ん、始めてだな。こんな事……」


 ただ今は、泣きながら僕にお礼を言ってる、この獣人の子に返事をしないとね。


「ありがとう、ありがとう……お母さんを……助けてくれて」


「また泣いちゃって。男の子だったら泣かないで、ちゃんと誰かを守れるように強くなるんだよ」


「うん!」


 その時、ようやくメイドさん達が戻って来て、武器を持った獣人の人達を連れて来た。

 遅いというか、それでも早い方なんだけれど、僕が一発で解決しちゃったもんだから、獣人さん達は呆然としています。


「これほどなんて……」


 と、メイドさん達も呟いています。聞いていても、実際目にするまでは信じられないよね。


 ◇ ◇ ◇


 そのあと、獣人の女性は治療所へと運ばれ、僕はメイドさん達に連れられて、僕にはあてられた部屋に連れて来られた。


 能力は分かったけれど、やっぱり女性としての仕草とか、メイクとか、そんなのを叩き込もうとしている。


「あなたの力は分かりました。確かに、この獣人の国に相応しい程です。ルドルフ様が選ぶのも分かります。ただ――」


「ただ?」


「座り方」


「う~」


 ピシャリと言われ、座り方を直されてしまった。足を組むのは、別に女性でもやるでしょう……骨盤が違うから、ちょっとやりにくかったけどね。


 ただ、だからといって、足を閉じて斜めにはしたくないです。


「良いから、しっかりと座り方を――」


「嫌です。というか、何で僕にそこまでさせるの? 別に良いでしょ、女らしくしなくても」


 すると、目付きのキツいそのメイドさんが、大きくため息を突き、僕にお説教をしてくる。


「王族の妃となると、国民等に、その容姿や姿勢を見られます。国民の手本となるべく、女性らしい振る舞いは必須です。中身が男だろうと、関係ありません!」


「む~~」


 お説教は正直、社畜時代に死ぬほど受けたから、もう勘弁なんだよ。勘弁して欲しいことが沢山あるな……僕は。それでも、あれだけ怒られてきたんだから、どうしても身体が拒否反応を示しちゃう。


「だからあなたは――クドクドクドクド――それから――クドクドクドクド」


 あ~ちょっと眠たくなってきた。ヤバイなぁ……。


「あいたっ!!」


 お説教しながらひっぱたいてきた、この人。やだ怖い。

 そうなると、ちょっとしっかりと聞いておいた方が良いか……聞いておくだけね。


 ◇ ◇ ◇


 その後、色々と女性としての仕草、身だしなみを徹底的に注意され、メイクの事を言われた。ただ、メイクと言っても、僕の居た世界のような、メイク道具はない。単純に、肌を整える精製水と、髪の毛をサラサラにする特殊な水で、お手入れをするだけだった。これも全て、女神の加護から作られたようです。


 そして夕食時になると、お説教していた目付きの悪いメイドに連れられて、食卓に付いた……けれど、ここからまたテーブルマナーとかでうるさくしだした。


 やれフォークの持ち方や、やれナイフの持ち方や、食べ方やでうるさかった……。


 そこまでやられても、絶対に女らしくするんだなんて、そんな決意はしていない。


「はぁ……どうしたものか……」


 食後、お風呂に入りながら、僕はあのメイドさんに文句を言う……が。


「ため息とは、感心しませんね」


 隣に居ました。うっかりため息を突いちゃったよ。


「あなた、男だ男だと言うけれど、お風呂は普通に入っているじゃないですか」


「そんなの、一週間くらいで慣れましたよ」


 そりゃ、最初こそ戸惑いはあったけれど、実際はこんなものでしょう。耳と尻尾は未だに慣れませんけどね。


 というか、それを言うならあなたの方が……。


「あの、僕は中身男ですよ。一緒に入るのは不味くないですか?」


「私は、あってないようなものなので、大丈夫です」


「いやいや……」


 確かに、僕に比べたらほぼぺったんこだけれど、それでもねぇ……と思っていたら、全く気が付いてなかったようで、今更腕で身体を隠しています。僕も紳士なので見ませんよ。


「それと、あなたとは少し、話をしたかったので」


「話ですか……」


 相手の真剣な顔からして、あんまり良い話じゃなさそうだな。


「ルドルフ様の事ですが……あの方は、もっと知的で女性らしい方を、妃として選ぶかと思いました。私達も、そうであって欲しいと思っていたので……それが、あなたみたいな人を……」


 どうやら、ルドルフの事らしい。

 それと、僕を妃候補に選んだ事に、少し不満があるらしい。それは分かるよ。僕だって不満だ。


「ルドルフ様は、幼い頃に、母を亡くしています」


「あ……あぁ~なるほどね……」


 そういえば、獣人王は居たけれど、その奥さんの姿が無かったんだ。あんまり聞くのは良くないと思って、敢えて聞いていなかったけれど、やっぱりそういうことでしたか。


「奥様はとても知的で、この国に様々な事をなされました。生活の基盤が、他の国と大差ない程になったのですから」


「ふ~ん」


 他の国って言われても、僕は1つしか知らない。しかも貧困で、だいぶ後退した国だったよ。


「そんな奥様を母に持つルドルフ様は、どこか母の面影を女性に求めていました」


「それは、メイドである君達にも?」


「そうですね。ただいつの頃からか、それもそこまで求めなくなられましたね。少し寂しいですが、私達はルドルフ様に仕え、あの方が幸せになられるのが、何よりの夢なのです」


 ルドルフも大人になって、色々と知って、そこまで女性に求めなくなったんだろう。それなら、何故僕に惹かれた? そこが不思議だ。


「これ以上は逆上せますね、上がりましょう。とにかく私達は、あなたをルドルフ様に相応しい、私達の思う理想の妃にして差し上げます。それこそが、ルドルフ様の幸せになるのですから」


「う~ん……」


 僕の隣に居た彼女は、湯船から立ち上がり、僕の方に視線を落としてきた。

 それが絶対だと信じて疑わない、しっかりとした視線に、僕はちょっとうんざりしたけれど、それが本当にルドルフの為なのかは、彼自身に聞かないと分からない事だ。


 だから、ちょっとルドルフに話を聞かないといけない。


「……それより、このお風呂って……」


「あぁ、地下から噴き出しているので、沸かす必要もないのです。この国は便利ですよ」


 それって温泉……。

 何だかちょっとしっとりしていて、肌がスベスベになっていたから、もしかしてと思ったんだよ。硫黄の臭いは無かったんだけれど、どこか遠いところから引っ張ってきているのかな。


 それも、そのルドルフのお母さんがやったのなら、その人って……。


「あの、ルドルフ君のお母さんって、人間?」


「いえ、獣人ですが。奥様が人間でしたら、ルドルフ様は亜人になられていますよ」


「あ、そっか……」


 それは残念。僕と同じように、僕の世界から来た転生者かと思った。この世界では、既に別の転生者に1人あってるからね。


「しかしそうですね……奥様は、時々変な事を言ってましたね。『でんわがないのは不便ね……』と」


 転生者じゃないですか。その人完全に転生者。

 そうか、何も人間に転生する訳じゃない。僕だって、狐の亜人じゃないか。


 そうなると、ルドルフが僕に惹かれた理由も分かった。

 そのお母さんは、彼には話していたんじゃないかな。自分が転生者で、別の世界から来たってこと。そして、その世界の話しも。


 そして、同じような事を言う僕に、そのお母さんの影を重ねたんじゃ……。


 どっちにしても、そのお母さんの残した業績とやらを探ってみよう。もし途中までのものがあったなら、それを続けて上げれば、この国の生活はまた豊かになるね。


 早速探してみよう。

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