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21.後輩魔術師

 翌日――私はアーシェを校舎まで彼女を送った。

 朝方は少し機嫌のよかったアーシェだが、学園に向かうとやはりその表情はこわばったものになってしまう。

 アーシェに友達を作るように、と言ってしまったのは、彼女にとってはかなり負担になるかもしれない。

 けれど、彼女が学園生活を楽しむようになるにはきっと必要なことだ。

 私はアーシェが授業を受けている間に、また学園の敷地内をチェックする。

 昨日で大体のところは確認できている――それほど時間はかからないだろう。


「あれ、セシリアさん……?」


 私が移動しようとした時、不意に私の名を呼ぶ声が耳に届いた。

 振り返ると、そこには私と同じくメイド服に身を包んだ少女が一人。


「! あなたは……」

「ルーア・ヴェーナルですっ! 以前、何度かお仕事させていただきましたが、覚えていらっしゃいませんか?」

「もちろん、覚えていますよ、ルーア。お久しぶりですね」

「わぁ、光栄ですっ」


 笑顔で答える少女――ルーア。

 昨日遭遇したクルスと同じく、彼女も騎士団に所属する魔術師の一人だ。

 クルスとは違い、私は彼女と仕事をしたことがある仲でもある。


「セシリアさんがここにいるということは……もしかして、セシリアさんもお仕事で?」

「そういうあなたも、ここの生徒の護衛として雇われたわけですか」

「えへへ、その通りですっ。わたしも日々のお仕事を評価いただいたようで、ようやく大役が回ってきました! でも、セシリアさんまでここにいるなんて知りませんでしたよっ。誰の護衛としてここに?」

「――アーシェ・フレアード様の」

「!」


 私が答えると、ルーアは驚いた表情を見せた。

 どのみち、お互いに騎士団に所属する魔術師である以上、遅かれ早かれ知られることだ。

 特に、クルス辺りが私の情報を流布していてもおかしくはない。

 だから、隠すことなく答える。

 彼女もフレアード家の噂くらいは聞いていることだろう。


「フレアード家……さすが、セシリアさんですっ。大貴族の護衛を任されるなんて……!」


 ――だが、ルーアの反応は予想とは全く異なるものだった。

 逆に、私の方が彼女の反応に驚いてしまう。

 だが、それを表情に出すことはなく、平静を装って答える。


「そんなことはありませんよ。ルーアこそ、ここで仕事を任されている以上は、私と変わらない立場なのですから」

「えへへ、そうだといいんですけど……ただ、ちょっと不安なこともあって」

「不安なこと? なんですか?」

「! そ、相談に乗っていただけますか?」


 食い気味にルーアが私の手を掴む。仮にも彼女は後輩だ――不安があると言うのなら、相談くらいには乗る。

 私とルーアは場所を変えて、話を続けることにした。

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