表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

春の残月

作者: 夕月朝日


春の残月吹雪に遭ひて

宵明色の空へと流る

所狭しと押し並べられた

達磨が私を見つめる

石造りの大きなそれは

闇夜の中に溶けてしまって

私だけが取り残された

本堂に桜吹雪

両手に溢る夢をのせ

願いの種を一つづつ

叶えては届けては日も暮れた


春の残月吹雪に遭ひて

暁のうち空は白む

所狭しと押し並べられた

陵墓が私を眺める

誰かの想いの詰まるそれは

闇夜の中に浮かび上がって

私と共に明日が来るのを

静かに見守る

両手に溢る愛を載せ

想いの種を一つづつ

叶えては届けては日も登る


春の残月もうすぐ終わり

そして暑い夏が来る

季節の移り変わりは早く

色褪せた私の世界

数百年の時を越えて

誰かの為に力を尽くして

私だけが取り残された

永遠の監獄

身体に溢る時を持ち

願いを賭ける夜空には

何度でも何度でも日が昇る


春の斬月私の月よ

優しさと哀しみの世界よ

跡形もなく散ってしまうのか

春の花たちよ

夜空に高く薫るその香は

私と違い何処まででも

私だけが取り残された

本堂に雨が降る

静かに眠るこのからだ

陽の目を浴びることもなく

いつまでもいつまでもひとりきり


春の残月吹雪に遭ひて

命は土に還りゆく

所狭しと押し並べられた

絵馬が私を苛む

願いと想いの詰まるそれは

闇夜の中でも光輝き

私だけに与えられた

重役の責任

両手に溢る想い載せ

願いの種を一つづつ

叶えては届けては夜は明けた


はるのざんげつあさひにあひて

にげまどひてそらにながる

あたたかくふりそそぐやさしき

あさひがわたしをてらす

さくらながしももうすぐおわり

きせつはめぐりあすがくる

わたしだけがとりのこされた

ほんどうにもかぜがふく

りょうてにあふるきぼうのせ

ねがいのたねをひとつづつ

かなえてはかなえてはきえていく


春の斬月私の月へ

愛と希望と夢の世界

優しきその御心のままに

私を照らし給へ

私に与えられた宿命

いつまでも消えない烙印

私だけが取り残された

本堂に桜吹雪

私に溢るこの役目

願いの種は一つづつ

叶えては届けては夜がくる


春の残月吹雪に逢ひて

宵明色の空へと流る

昨日と今日と明日を望む

あなたが私を見つめる

思いの丈を綴ろうとも

闇夜の中に溶けてしまって

私だけが取り残された

本堂に桜吹雪

両手に溢る夢を載せ

願いの種を一つづつ

叶えては届けては季は巡る


春の残月吹雪に遭ひて

春の斬月吹雪に遭へば

花の香いと美しゅうて

高く空に薫る

感想などくださるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ