俺達はこの呪術王への道を歩み始めたばかりだ
一党は老婆に教えられた浴場跡へとたどり着く。
昔、水が湧きでていたであろう場所。その横に竜の立像があったらしい跡が残っている。どうやら、スラムの連中に削り取られて最早原形をとどめていないらしい。これでは、ここが古代の遺跡だと気付かないのも無理はない。
一党は周囲を探る。と、すぐに床面に蓋がはまっているのを見つけた。おそらく地下へ続く道のはずだ。どうやら盗賊技能で静かに開けられるらしい。そこで一党は盗賊技能なんて頼らずに、力任せに運動技能を使って蓋を静かに開けるのだった。
早速下へと降りる。だが、そこはただの小部屋であった。一面にレリーフが彫られている。
「行き止まり?」
「……前の遺跡で坑道が掘られてたよな? その坑道が向かってた方向はわかる? もしわかるなら、その方向の壁を探る」
そう言ってイモコが壁を探ると、そこが隠し扉になっていることが明らかになった。
「どうしたの? 今日冴えてるね?」
「出かける前に味の素5キロ舐めてきたからね」
イモコは味覚障害者みたいなことを言った。
どうやら片目のサダームが目指していたのはこの先の遺跡のようだ。岩盤に阻まれて、他の遺跡や地上からでは到達できないのだろう。
一党は隠し扉の奥へと進む。埃一つない綺麗な通路。そして壁には凝ったレリーフが続く。
と、ようやく部屋らしき空間に辿り着く。
そこは奇妙な部屋だった。壁面に、数字の振られた開閉口が並んでいる。部屋の手前側には大きな亀裂がある。飛び越すことは容易そうだが、落ちたらえらいことになりそうだ。そして、部屋の向こう側には髑髏が1つ床に置かれ、その先に棺桶が2つ、くぼみの中に安置されていた。
どう考えても、壁の開閉口が怪しいのであった。歩いていくと、矢がピュッピュッ飛んでくるのではないか。
「じゃあ走っていこう!」
一党は全力で部屋を横切ろうと試みる。亀裂を飛び越え、その先へと駆けた。と、当然のように罠が作動。開閉口から多量の砂が吐き出されるではないか。同時に、棺桶からゾンビが2体這い出てくる。
一党は砂に足を取られて流されかける。具体的に言うと、頑健のチェックに失敗すると亀裂の方へ押しやられてしまうのだった。
「やばい、ゾンビが邪魔で砂の流れてない場所に辿り着けない! このままだと次の頑健チェック失敗したら亀裂に落ちる!」
足の速いワンコは髑髏(罠の起動スイッチだったらしい)の脇まで辿りついていたが、ウィンストンはまだ流砂の中であった。イモコもゾンビと接敵こそしていたものの流砂に足を取られたまま。ウルヴェントは砂の届かない遠距離からゾンビをケイオスボルト等で攻撃したが、倒すには至らない。このままではウィンストンがまずいことに。と、イモコ、
「じゃあ、種族パワーで水になって6マスシフト移動。ゾンビの背後で実体化して、そこを槍で突くよ! オープニングシャブ。対反応で相手を1マス押しやって、味方を5マスシフト移動させられる」
というわけで、ゾンビを流砂の中に押しやり、そこでできた隙間にウィンストンを呼び寄せる。ウィンストンは流砂から抜け出した。で、移動させられたゾンビ、当然砂に流され亀裂の底へと落ちていく。可哀想な結末。
流砂さえ凌げれば後は問題ない。残ったゾンビも軽く倒して、一党は先の扉へと進んだ。
で、その扉だが筋力で12の判定をしなければ開かないという。開いた。
「開いたから余は満足じゃ。帰ろう」
ワンコがそう言ったが、帰らない。
その先は三叉路になっていた。左に進む道と真っ直ぐ進む道がある。
左の道からは何かドスーンドスーンと重い音が響いてくる。絶対なんかいる。
真っ直ぐ進むとそこはすぐに行き止まりのようだ。その行き止まりの壁には人骨が埋まっていた。
「撃つ」
ウルヴェントは迷いなく人骨を撃つのだった。
「怪しいものはとりあえず撃つ。スケルトンだったら嫌じゃん」
躊躇なし。友好的なスケルトンだったらどうするのか。
でも、そんなスケルトン見たこと無いからいいのだった。実際、ポンコツスケルトン達だったし。ウルヴェントに遠距離から撃たれまくって、スケルトン達は何もできずに全滅。なんかスケルトン達にもやりたいことあったんだろうに、なにも仕事させてあげないのだった。
「さて、となると左の道に進むしかないみたいだが、何かいるよな」
「大丈夫、さっきからドシーンドシーンって何度も転びまくってるみたいだから、もうそろそろ死んでんじゃね?」
そっかー、死んでるかー。ということで、一党は中へと突入する。
そこはどこか厳かな場所だった。部屋に入って入口の両脇には赤々と灯る炎2つ。大皿か何かに油でも満たして燃やしているのだろうか。その光に照らされて、部屋の奥に石柱が何本も並んでいるのが見える。そしてその手前には腐った巨漢。でかぶつゾンビであった。更に、空間から死人が一体湧いて出た。瞬間移動だろうか? 何らかの秘術を使うゾンビらしい。遠距離から何か攻撃されると鬱陶しい。
でかぶつゾンビは一党の前に立ち塞がる。壁となって、一党を前へと進ませない腹積もりか。だが、そんな相手の意図どおりに展開してやる道理もない。
「でかぶつゾンビにシールドバッシュ! 1マス押しやり、更に転倒させる」
初撃にウィンストンはシールドバッシュを選択。でかぶつゾンビをどかした。そうしてできた間隙をぬって、ワンコが秘術使いの死人に肉薄。ダメージを与えつつマークして釘付け状態に。同時にイモコも秘術使いの死人に近付き、ワンコにダメージ強化パワーを使った上でコマンダーズストライク。さらにアクションポイントも使ってもう一回ワンコにコマンダーズストライクで攻撃させる。
「余計なことさせる前にさっさと倒しちゃえ!」
というわけで、固定ダメージのでかいワンコが攻撃を繰り返し、秘術使いの死人を早い段階で撃破。
もし、これがでかぶつゾンビに道を阻まれていたままだったら危ないところであった。というのも、
「熱っ! 何か炎がこっちに飛んでくるんだけど!?」
入口の脇の炎がトラップで、毎ラウンド火の玉を撃ってきたからだ。でかぶつゾンビに足止めされていたら一党は良い的になっていただろう。また、でかぶつゾンビも強い。マークしてでかぶつゾンビを引きつけていたウィンストンががりがり削られていく。これに加えて秘術使いの死人から遠距離攻撃とか受けていたら一党は一気にぼろぼろになっていたかもしれぬ。
結局、石柱にあったトラップ解除装置を作動させ、でかぶつゾンビを集中攻撃して、一党は勝利を収めたのだった。
◆
そうやって勝利した先には玉座の間があった。巨大な石棺も安置されている。特にモンスター等はいない。安心して一党は室内を探索する。と、宝箱を発見した。中には紙切れが一枚入っている。
「外れ」
とは書いていないようだ。見慣れぬ文字で何事か書かれている。残念ながら、一党には理解できない。
「他に宝無いの?」
じゃあ、石棺の中が怪しいという話になる。イモコが水になって隙間から調べてみたところ、何か金目のものがあるとわかったのだ。一党は早速開けようと試みる。が、あまりの重さに全員筋力判定で失敗した。
「じゃあ、成功するまで判定するよ!」
筋力判定は一日一回とのことだったので、
「じゃあ、何日もかけて判定するよ!」
何日もかけて失敗。そろそろ餓死が見えてくる。
「じゃあ、イモコをもう一回石棺の中に入れて熱しようよ。水蒸気で石棺の蓋も吹っ飛ぶと思う」
なんて仲がいいんだ俺等。
しょうがないから、一旦玉座の間から出ようとする一党。と、その外に人影が見えるではないか。
「なんで中々出てこないんだよ。ずーっと待ってたんだぞ」
片目のサダームであった。一党が筋力判定とかしてる間、ずーっと外で待ってた片目さん。
「じゃあ、お前も石棺開けるの手伝って! 筋力判定してきて!」
だが、片目のサダームは取引を持ちかけてくるではないか。
「石棺を開けてやってもいい。その代わり、お前の手の中にある物をくれ。お前は特別な物を持っているのだ」
「それって清い心?」
ウルヴェントがいけしゃあしゃあと言った。
片目のサダームは一党が手に入れた紙片を欲しているのだという。こいつに渡していいものなのだろうか? 真意看破してみたが、悪意はないようだ。
「でもなあ、こいつゴリアテ一家とか率いてるわけだし、善ってわけじゃないよな」
「その紙片をくれたらゴリアテ一家は放棄する。というか、お前達に譲ろう」
「渡す」
ウルヴェントが即決した。え、いいの?
「これで我が王国の礎となる臣民ができる。呪術王へ一歩近づいた」
ウルヴェントは本気で呪術王になるつもりなのだった。ゴリアテ一家という組織を手に入れて、次は如何なる手を打とうというのか。ほんとにどうするつもりなんだろう。
なお、片目のサダームは石棺も開けてくれた。中から750GP相当のオニキスでできた鷲の彫像、600GP、そしてリングオブクリムゾンサンなる指輪を発見。指輪の効果は追って知らせてくれるとのことなので現時点ではわかりません。
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ついでに、一党が手に入れた紙片を片目のサダームに渡したことを聞いたスプリンター先生はひどく残念がったという話である。
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ウルヴェントが遂に呪術王への一歩を記したところでこの記録を終わる。




