転校生
さあ今日は登校日だ。写真部の先輩に見せるために写真のデータも持ったし忘れ物もないだろう。
いつも登校には電車を使っている。家が近いたっくんとはるちゃんはいつも駅で一緒になる。
「おはよう。ちゃんと宿題やった?」
クラスが同じたっくんは宿題が同じだ。今回は数学の宿題が出ていたはずである。
「…それが全く解けないんだよ。学校ついたら教えてくれ…」
「まあいつものことか…良いけど今度英語の課題出たら教えてね?」
たっくんが数学が苦手なのはいつものことだ。僕は英語以外は得意なのでわからなければ教えて、英語は教えてもらうという方法を取っている。ただ英語に関しては壊滅的なので教えてもらうというより、写させてもらうと言ったほうが正しいかもしれないが。
「拓海と美玖はクラス同じで良いなあ…忘れてても教えてもらえるの羨ましい…」
「春香はどうせ提出しても再提出になるんだからあまり気にすんな。
そういえば聞いたか?今日俺らのクラスに転校生くるらしいぞ。この前クラス委員の仕事で職員室に行ったときに先生が話してた」
そんなに頭悪くないよ、と春香が言っているが誰も相手にしない。毎回赤点ギリギリの人が再提出にならない方が珍しい。
「この時期に転校生か…」
ふと昨日の女の子のことを思い出していた。いや、まさかね…
「拓海たちのクラスは一人辞めちゃったんだっけ?だから転校生入ってくるのかな?」
そういえばほとんど見かけなかったけど、5月くらいに退学した生徒がいたんだっけ。ほとんど会話を交わすことなく見かけなくなっていたのですっかり忘れていた。
「そうだと思う。他のクラスは40人いるけど俺らのクラスだけ39人だからね。結構頭の良い子らしくて、期末テストは平均点最下位クラスから脱するぞ!って張り切ってたよ」
「中間は最下位だったんだっけ…僕らのクラス…」
期末テストもそろそろ近くなってきたし、先生も張り切っているのだろう。まあ、その熱に生徒が付いて行っているかと聞かれたら素直に頷くことはできないが。
「ねえ、また3人集まって美玖の家で勉強会しない?私もわからないところあったら教えてもらいたいし…」
「うーん、僕の部屋なら大丈夫だと思うよ。家が近いとこういうとき便利だね」
そんなことを話していたら、もう学校に着いていた。
教室に入ると大部分のクラスメイトはもう登校していた。転校生のことはもう知れ渡っているようで、噂話で持ちきりである。
超かわいい女の子らしいとか、超かっこいい男だとか随分とハードルが上げられていくのを眺めていた。これで想像通りじゃなかったら転校生の前でため息でも吐くのだろうか…とても失礼だぞ…
まあ、このクラスでそのような心配は無用だろう。なんだかんだいいやつばかりだし。
もう少しでホームルームという頃に先生が入ってきた。
「チャイム鳴ってないがホームルーム始めるぞー!噂にはなっているようだが、転校生が一人いる。男ども喜べ、女子の転校生だ!わからないことも多いだろうから親切にな。よし、入ってこい!」
そう言って入ってきたのは、肌が白く茶髪のボブカット、少したれていてクリっとした目の女の子。そう、昨日の女の子だった。
あの子はクラス全体を見渡した後、僕を見つけたようで微笑みかけてきた。
やっとヒロイン正式に登場です!