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写真を撮ろう

「わかってたわけじゃないけど、たっくんはいつも集合時間の15分前には来ているからね。あの子と話しているときにはもしかしてもういるのかな、って思ってた」

俺は方向音痴だから早めに来ないとな、と言う彼はハッと思い出したように続けた。

「そうだ!あの子はなんなんだ!?お前を見つけて声をかけようとしたら可愛い女の子と楽しそうに話してるからどうしたもんだと…もしかして恋の季節が…!?」

たっくんと会ってから二度目のため息を吐くことに。

「そういうわけじゃないよ。ここで寝てたら倒れてるんじゃないかと心配して来てくれたみたい。

…それはそうと運命の相手がそろそろくるよ」

少しからかうように言った。待ち合わせ時間ギリギリにくるのはいつもはるちゃんだ。

「ごめんごめん、二人とも早すぎるよ…」

少し息を切らしているし、走ってきたのだろうか。

「春香はいつもギリギリだよなぁ。今朝なんてわざわざ迎えに行ったのに、まだ朝食べてるから時間かかるってお前の母さんに言われたぞ?」

「そりゃ出発の1時間前に来られても無理だよ!迎えに来るならもうちょっといい時間にさあ…」

下らない言い合いも赤い糸が繋がっている同士の会話だと、ただのじゃれあいに見えてくるから不思議だ。


そう、僕には『運命の赤い糸』と呼ばれるものが左目で視えるようになっていた。小さい頃の事故で目が見えなくなった後、夢の中で不思議な女性に出会ってからだ。知っている人はなるべく少ないほうが良いと親に言われ、知っているのは両親と妹、たっくんとはるちゃんだけ。なにかができなくなる呪い、と言われた気がしたが今は特に不便を感じているわけではない。

ただ、オンオフ自在というわけではないのがとても鬱陶しい。小学校6年生くらいの頃にカメラのファインダーを通してだと赤い糸が見えないことに気づき、自然とカメラに惹かれていった。高校生になった今は幼馴染のたっくんとはるちゃんと共に写真部に入部し、週末はいろいろな場所に写真を撮りに来ている。

ちなみに幼馴染のたっくんこと山本拓海と、はるちゃんこと天城春香は赤い糸で繋がっている。なので近づけば糸の方向でわかるのだ。小さいころから3人でどこかに行くことが多いので何気に便利機能である。


「美玖!拓海から聞いたんだけど、可愛い女の子と話してたってほんと?美玖も隅に置けないねえ~」

にやにやと笑いながら肘で小突いてくる。

「そんなんじゃないよ…それにもう会うことはないだろうしさ。それよりも写真撮ろう、写真!」

「あの流れで連絡先聞いてないのかよ…」

ボソッと拓海が言ったことをスルーして写真を撮りに行く。梅雨なのにせっかく晴れたんだから、いろいろと撮らないと損だ。

この公園には紫陽花もたくさん植えられている。雨の日の灰色に様々な色を加える様を観るのも良いが、こういった日に観るのも悪くない。

「あ…カマキリだ…」

まだ成長しきっていないカマキリが紫陽花の上を歩いている。シャッターチャンスを逃さないようにしなくては。

後ろではたっくんとはるちゃんがなにやらこそこそ話している。まあ、どうせ下らないことでも話しているんだろう。

「ほら、たっくんとはるちゃんも写真撮らないと!今日なにしにきたのか忘れたの?」

はーい、と応える二人と共に写真を撮っていく。


「今日は結構撮れたかなあ…」

自分にしか聞こえないように呟いた。帰宅後の日課で、今日の写真をチェックしていく。紫陽花の花に乗ったカマキリ…かわいいな。それに寝転がっていた草原もなかなかきれいに映っている。そういえば、あの子は無事に母との待ち合わせは間に合ったのだろうか…

そんなとき、ドンっとドアを大きな音で叩く音が聞こえた。きっと風呂が空いたのだろう。妹からの恒例の合図となっている。

風呂に入ったら寝るか。明日は学校だし、宿題も終わっているので早めに寝ても大丈夫だろう。

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