#018「マッチング」
――思い通りにならない人生だから。
*
「あぁ、無理だな。引き千切れそうにない」
「やはり、駄目ですか。丈夫な革ですね」
「なぁ、一本くらい見逃してないのか?」
「どこに隠したら良いか教えた人間が、そんなケアレス・ミスをすると思いますか?」
「クゥ。こんな薄暗いところに閉じ込めやがって。ときどき、細かい砂が目に入るし、崩れ落ちたりしないだろうな?」
「住み心地が良くないのは、たしかですね。ごめんなさい。私のせいで、とんだ災難に巻き込んでしまって」
「ユウは悪くない。ユウについて行くと決めたのは、俺なんだから。――ここは、どこなんだろうなぁ」
「目隠しをされて、馬車か何かに乗せられて連れられましたから、さっぱり見当が付きませんね」
「ご機嫌は、いかがかな?」
「ケッ。キノコやモグラには、さぞかし快適だろうよ」
「手ぶらでいるところを見ると、食事の時間では無さそうですね」
「ご名答。頭の切れは鈍って無さそうで、何よりです」
「御託は良いから、俺たちをここから出せ!」
「私は結構ですから、ピアだけでも解放してあげてください」
「そんな要求をできる立場ではないということが、まだ分からないのかな? もっとも、ジェーが組織に戻るというのなら、今すぐにでも、そこから出して差し上げますよ。この鍵が欲しいでしょう?」
「あぁ、そうだよ。それこそ、喉から手が出るくらいだよ。この、嫌味野郎」
「ピア。エフを逆撫でしても、何の解決にもなりませんよ」
「ケダモノに逆撫でされるような人間様ではない。――どうだい、ジェー?」
「ユウ。俺なら平気だ。こんな捻くれ人間の誘いに乗ることないぜ」
「ありがとう、ピア。――せっかくですが」
「断るか。いつまで、その強情が続くか楽し、ムハッ」
「いってぇ」
「あぁ、あのときの」
「腕白坊やですね」
『おぉい、ケン。大丈夫か?』
「よく分からないけど、どっか広いところに繋がったみたい。戻れないから、ロープを下ろしてくれよ」
「あっ、ユウ。鍵!」
「これさえ手に入れば、こっちのものです。――よし!」
*
「地下を掘り進めて、思わぬところに繋がったわね」
「偶然というものは、奇妙なものだ」
「おかげで助かりました」
「俺の下敷きになって伸びてた赤毛虫は、何者だったんだ?」
「人間のゴミ屑だよ。忘れろ」
「また会えるとは、夢にも思わなかったよ」
「あら、お母さま。わたしは、どこかで会えると思ってましたわ」
「どうやら我々には、浅からぬ縁があるようだ」
「すみません。また、ご厄介になります」
「また、しばらく、このお喋り鳥と一緒なのか」
「小生意気なガキと一緒とはなぁ」
「まぁ、まぁ。もうすぐ、パイが焼けますよ」




