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#015「カタチあるもの」

――新しいものは、いずれ旧くなる。命あるものは、いずれ屍と化す。ヒトも、モノも、マチも。

  *

「どこもかしこも、人、人、人。波が途切れる様子は、どこにもありませんね」

「もう、すっかり真夜中なのに、昼間みたいに明るい」

「煌々とした灯りが尽きない不夜城という噂は、本当だったようですね」

「自由闊達、明朗快活。気持ちが沸き立ってくるぜ」

「興奮しすぎて、いつぞやのような無茶なことをしないでくださいね」

「お! ユウも喋ってたのか。何だって?」

「丸焼きや剥製にされるようなことは、厳に慎んでくださいね」

「聞こえないぞ、ユウ」

「賑やかを通り越して騒々しいですね。路地へ、一時避難しましょう」

「どこへ行くんだ、ユウ? 俺を置いて行くなって」

  *

「若者が多くて活気がある街だと思わねぇか、ロエ」

「そうね、テオ。商売には、もってこいの街だわ」

「時化た面をした頑固老人がいないだけで、売り上げが全然違うからなぁ」

「品物にイチャモンをつける人間が一人いるだけで、雰囲気が険悪になって敵わないからねぇ」

「鑑札も手に入ったことだ。さっさと売り捌いて豪遊しようぜ」

「良いわねぇ。あたしも賛成だね」

「そうと決まれば、とっとと店支度するぞ」

「張り切りすぎて、身体を壊さないでちょうだいよ」

「んん? 何か言ったか?」

「腰を抜かす真似をするんじゃないよって言ったのよ」

  *

「人混みに酔ってしまったようです」

「雑踏を歩くうちに、周りの人間がユウの生命力を吸い取ってしまったようだな。立てるか?」

「こんなとき思わず、ピアがドラゴン並みの体格だったらと考えてしまいます」

「背中に乗せて、ひとっ飛びできそうだな」

「でも、一歩間違えたら黒焦げ、丸呑み、八つ裂き、圧迫の憂き目に遭いそうですね」

「おやおや? その特徴的なシルエットは」

「いつぞやの旅人と旅鳥のようね」

「これは、奇遇だな」

「また、お会いしましたね。上機嫌ですね、お二人とも」

「この陽気な街で、ウジウジ陰気なことができますかって話だ。おぅ、そうだ。さっきのアレ」

「焼いた甘栗と銀杏なんだけど、二人では量が多くてね。冷めないうちに食べると良いわ」

「香ばしい匂いだな」

「ありがとうございます。お幾らでしたか?」

「タダでやるよ。今宵は、懐が温かいからな。それじゃあ、また」

「スリやペテン師が多いようだから、気をつけて。またね」

「ネエチャンたちこそ、騙されないようにな」

「ご好意に感謝します。お気をつけて」

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