04 騒動と大騒動
「うわっ!?」
馬乗りにされていたとかはなく、とっさに転がってナイフを避けることはできた――けど、どういう状況なの!?
ていうかさっきここで死んでもらうのはっていうことは、意図的にこの状況になってたってこと!?
「なんで、起きっ!?」
だけど、あっちもボクが起きたことは想定外みたいだ。
「おとなしくしてくださっ!」
そのまま転がってるボクを狙ってくる。
だけど、おとなしく死にたくないし。死んだと思ってて、夢じゃないってわかったら死にたくないし、何より生きてるならまだしたいことはあるし!
もとよりこの体は作り上げられていたんだろう。あんな金属の鎧を着ていたと考えれば、当たり前である。
体は思ったように動いて、彼女のナイフを持つ手を掴み組み付くことも簡単だった。
「ちょっと、ボクも簡単には死にたくないんだけど。事情を教えてほしいかな」
「ボ、ボク? なんかイメージと違いますね」
「余計なことは話さなくていいよ?」
なんか悪役みたいだな。だけど、現実生き残るためならこんなものだと思うんだよね。
とりあえずナイフは力づくで放してもらった。
「いつっ……」
「乱暴でごめんね、まだ力加減とかよくわかんなくて」
話してくれなさそうなんだよね。
「早く、早くしないと期限が」
「期限……?」
何の話だろう。この体、実は指名手配犯で、この子はどこかの暗殺者だったとか……さすがに突飛すぎるよね。暗殺者ならこんな簡単に捕まえられないと思うし。
そんなことしていると――そんなことで済ませてはいけない気がするけど、それ以上のインパクトの有る轟音が響いた。
ボクが知ってる限りは、あっちは町の入り口だった気がする。
「!? んぅっ、ぐうっ!」
「あっ! ……何か、嫌な予感しかしないから行こう」
無理やり振りほどいて放ってかれてしまった。ボクは宿をでてその音の方向へと向かって走りだした。
町の入り口にたどり着くと、門は燃えていた。
幸いにも家に燃え移るようなことは起きていないが、その奥に1人の男が立っている。
「こいつはこちらで一時預かる。4日以内に供物を持ってこい、さもなくばこの娘が供物になるだけだ。はっはっはっは!」
高笑いしながら男は町に背を向けて、歩いて行く。
その肩に担がれているのは、あの宿の少女だった。
「うぅ……なんで」
入り口の近くでは消火活動が行われて、さらに視界に1人の女性が目に入る。
宿の女将……つまりは、彼女の母親だ。地面に泣き崩れてしゃがみこんでしまい、知り合いであろう町民は慰めるように近くに寄り添っていた。
一体、この町に何があるっていうんだ。
ボクの中にそんな疑問が残るが、少なくとも今、その答えを示してくれる人はいなかった。