02 そうだ、これは夢なんだ!
町までは少し時間はかかったけど、問題なくたどり着きました。
見れば見るほど和風な町だな。まさか、タイムスリップしたとか……ないよね。それに女になる理由にならないし。
というか、全部が全部じゃないとはいえ、インナーだとすごい恥ずかしくなってきた。女子の服ってなんでこう……気にしないようにしよ。
「誰かそいつを止めて!!」
もじもじしながら町の入り口ふきんの市場を歩いていると、そんな声が響きました。
声の方を確認すると、誰かがこっちに走ってきた。
「え、えっと、ど、どうすればいいんだろう」
「どけぇ!」
よく見ると、なんか荷物を両手で抱えてる。もしかして、強盗?
とはいえ、ボクはそこまで度胸はないので素直にどいて――足を引っ掛けておいた。
「んがっ!?」
マヌケな声をだして、転ぶ強盗犯。
その瞬間に、ボクの周りにいた町民らしき人たちが、強盗に向かって突撃していった。
仲が良い町ってことでいいのかな?
ボクはみなさんに負けて、この場を後にしようかな。今はこんなことに関わっている場合じゃないし。
数分後。
「あの、さっきはありがとうございます」
先ほどのお嬢さんとエンカウントしてしまった。
「い、いえ、偶然あそこにいただけですから」
「でも、あなたがいなかったら、そのまま走り去られていた可能性もあったので!」
ど、どうしよう。
「それで、先ほどからこの辺をうろうろしてるように見えたんですけど、どうかしたんですか? 案内などでしたら、私がしますが!」
「そ、それは、大丈夫。あの、本当に大したことじゃないから」
いえない。この世界が何なのかわからないから、いろいろと見て回ってるとか言えないし、かといって案内ってなると目的地も何もないから、それはそれでむりぃ!
「あ!」
「ごめんなさい!」
ボクはその場から逃げるように走り去った。
ボクが起きた時間は昼ごろだったみたいで、気づけば日が暮れだしていた。
街灯なんてものはなく、夜の飲み屋に提灯やカンテラがつけられているのを見ると、電気なんてものはない世界みたいで、やっぱりタイムスリップを疑ったほうがいいんじゃないかとか思い始める。
でも、そういうのはあくまでフィクションだし、体が変わるなんてことはきいてない。時をかけるあの子だって、そんなに多くの時は飛ばなかったわけだし。
ボクはそんな現実を見てる風の現実逃避をしながら、町の外れにあった大木に座っている。
さすがに夜にこの服は冷えるよね。肌寒くなってきた。
……今更だけど、これは夢だってことは考えられないだろうか。
だって、ボクが女の子になって過去にタイムスリップしたなんてことは、夢以外の何気実現するっていうんだろうか。神様でもいるとかいうなら別だけど。
「そうだよ! これは夢なんだよ!!」
思わず立って、そう口に出してしまう。
だが、キュルルという音と一緒に空腹感がその可能性を著しく低くする。
「夢って痛くないしお腹も減らないと思うんだよね。さっき、足引っ掛けた時も触ったりした感覚はあったし」
「あ、あの~」
下を向いて再び座っていると、後ろから今日どこかで聞いた声が聞こえた。
後ろを振り向くと、お昼の女の子がいる。
「もしも宿に困ってたりしたら、うちにきませんか?」
「……へっ?」
現実であるか夢であるかはわからないけど、この状況において彼女の行動は女神のようだった。