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他人は他人だからどうでもよさそうだけど、やはりどうでもよくないのだろうか

作者: 夏冬春秋

短いです。

ちょっと色んな意味で乱暴かも。

 オレは村山という。高校生だ。今日は街へ買い物に来ていた。そしてそれが終わった。オレは買い物袋を持って駅の地下を歩いていた。そうすると、ある人に出会ったのだ。


「すみません。誰か、お金をめぐんでください。この子の為に」


 こういうのはよく見かける。みんなも慣れているのかそもそも相手にしたくないのか、その人の言葉を無視する。そしてその横を素通りしていく。オレもそうしようと思った。関わりたくはないからな。


 しかし、目はいってしまう。とりあえずオレは遠巻きのその人たちを観察する。


 格好がみすぼらしい。当然か。汚れていて洗えていないのだなという印象だ。


 二人いて、一人は四十ぐらいの母親。もう一人は十歳ぐらいのそいつの娘。親子でこういう所でこういう行いをするのははたしていかなるものかと感じる。娘の方は「あ……あ……」とうめき声のようなものをあげていた。何かに手を伸ばしているようだった。とあるアニメ映画のキャラを連想させた。


 オレは気になり近づいた。


 母親はそんなオレに気がついたのか「お恵みを」と缶詰をオレに突き出した。オレは眉間に皺をよせた。


 母親は腹が肥えていた。娘は骨と皮がくっついているようなぐらいやせ細っている。親子でこうも違うとはな。訝しくはあったが、オレは財布を取り出した。この子の為にまあいいだろうという気持ちになった。なんだか、哀れだった。


「この子はどうしたんですか?」オレは尋ねる。


「この子は生まれつき目が見えなければ話すことも叶いません。私がちゃんと産んであげればよかったのですが……」


 母親は涙ながらにそう語った。


 オレは娘を見た。同情はした。だが、それだけだった。


 オレはなけなしのお小遣いを出した。


「すみませんね。学生なんでたいして出せないっすよ」


 オレはワンコインではなんだかアレだという事で600円出した。やはり痛い出費だ。しかしジャンプの二週間程度の価値だ。二週間ぐらい買うのを我慢すればいい。まあ、人助けに値段なんかどうでもいいか。


「いえいえ。そのお気持ちだけで十分有り難いです」


 母親はそういった。そして深々と頭を下げた。


 オレは「そうっすか」と言って勝手に満足に浸りながら去ろうとした。そうすると、娘がオレの裾を掴んだ。目が見えていないから脇腹ごと掴んでいた。しかし、オレは大目に見た。


「どうしたんだ?」


 オレは娘に聞く。すると、「あ……あ……」と何か言いたいようだった。しかし、口をパクパクさせるだけで何を言いたいのか全く伝わらなかった。


 そしてオレはゾッとする。


 娘は瞳を開けていた。その眼は空洞だった。目玉が存在していなかった。オレは嫌悪感をおぼえた。娘は多分オレにお礼を言いたかったのだろうな。しかし、恐怖以外の何物ではない。娘の空洞となった瞳の中からは何かを訴えているようだった。オレにはまったく伝わらない。感謝であろうなと勝手な解釈をしただけに過ぎない。


「こら。よしなさい。すみません」


 母親はその手を離させた。オレは無言のままその場を去る。 


 少し遠くに来た時振り返り、親子を見た。娘はまるでオレを探すかのように首をあちこちに動かしていた。




「ということがあったんだよなあ」


 オレは昼休みに友人にこの話をした。あれから一か月以上が経っていた。何となく話すべきではないなと思っていた。なんか、偽善者とかそういう風に思われたくなかったからだ。しかし、気のゆるみかもしくは別に話しても困るような内容ではないと判断してか、友人にこの話をしたのだった。


 今でも時々あの駅の地下は利用するのだが、あの親子は見かけなくなった。


「へえ。まあよくいるよな。しかし、同情はしてしまうよな」


「あの歳でそうじゃあね」


「お前にとってその子の価値はそのぐらいと」


「というと?」


「まあ、酷い言い方になるが、あげた金額がお前のその子に対する価値って事だよ」


「ということは、ジャンプ二冊分の価値しかないと」


「命に値段なんてもんはないがさ、強いてつけるとしたらその価値を決める人しだいなんだよな」


「ああ。なるほどね。自分の値段は他人にとってはばらばらと。例えば、タダだったり一万円だったり。人次第で自分の価値というのが決まるわけだな」


「そういうこと。だからさ、大体素通りする人ってその程度と見ているわけだよ。まあ、俺も素通りするタイプだけどさ。とりあえず、価値を見出してあげただけでもいいんじゃない?」


「その理論は考え物だがね」


「ごもっともだ」


「まあさ、最近近くで誘拐事件とかはやってんじゃん?」


「まあ、そうだね」


「人身売買とかされてんのかね?」


「もしそうだったら、どのくらいの値が張るんだろうね」


「まあそれこそ、その子次第だな」


「世知辛い世の中だね」


「あっそう」


「素っ気ないな」


「ところでさ、俺もさ前に子連れの肥えたおばさんをみたぞ」


「へえ。同じ人だろうね」


「そうだな。子供の特徴も同じだったよ。十歳ぐらいで。でも、連れていたのは男の子だったよな」




 オレはちょっと遠出をした。まあ部活で遠くの学校へ行くことになっただけだ。その時に電車を利用した。降りて、外に出ると、何やら子連れのおばさんが「この子の為にお金をください」とせがんでいた。オレはその声にどこか聞き覚えがあった。


 オレはそちらへ近づく。すると、あの時の母親だった。


「こんにちは」


 オレは気さくに声をかけた。母親は怪訝な表情でオレを見た。しばらく考えてから、「お金を少しいただけないでしょうか?」といった。


 オレは嘆息する。そして、子供を見た。


「この子はどうしたのですか?」


 オレは子供を見る。あの時の少女とは違い、六歳ぐらいの女の子だった。母親の袖を掴んでいた。


「実は、この子は生まれつき目が見えなければ満足に話すこともできません。私がきちんと産んであげられれば……」


 セリフはどこかで聞いたことのあるものだった。オレはため息をついた。


「それは大変ですね」


 オレは適当に行った。


「そういえば、最近近くの川で子供の水死体が見つかったようですね」


「は、はあ……?」


 母親は困惑していた。


 オレは一週間前に地元でそういうニュースがあったのを耳にしていた。十歳ぐらいの男の子と女の子の死体らしい。そして、二人とも目がくりぬかれていたらしい。


「まあ、目が見えないから危険な場所へ近づいているなんてわかりませんからね」


「はあ」


「いやはや。まあ、この子も気を付けてあげてくださいね」


 オレはそれだけを伝える。お金などは出さなかった。ムダ金だと思ったからだ。


 踵を返し親子から去っていった。


 駅で切符を買い電車に乗って座席に座った。外の景色を眺めながら、「十円ぐらいあげとけばよかったかもな」とちょっと罪悪感を抱く。それから「まあいいや」とどうでもよくなり、腕を組んで目をつぶって眠った。



とりあえず、そんな感じです。

人によっては不快かもしれませんね。

色々とへたくそですみません。


一応補足します。

母親は子供を誘拐して、目玉をくりぬき、喉を潰して、そういう子供にしたてあげて、お金をあんな形で貰おうとしていた。という話です。

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