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『セカンドブレイン』


 仮想現実空間体感技術の進化。


 五感全てを完全に仮想空間で再現した技術は、西暦2050年頃に合衆国で完成した。

 初期は、巨大なカプセル型のVRマシンに人が入り、脳に五感情報を発信することで仮想世界を再現するもので、主に軍用シミュレーターなどに使用されていた。

 その後、徐々に民間の企業にも技術提供が為され、様々な分野に転用されていくこととなる。


 数ある分野の中でも、当時、最も人気を博したのが仮想現実世界体感多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム――VRMMORPGである。

 技術力向上と共に、民間企業によってVRマシンは小型が進められ、一般家庭でも気軽にVR技術が利用できる社会が訪れていた。

 黎明期では、ヘッドギア型や、椅子型、ベッド型など様々なVRマシンでユーザーは仮想空間での冒険を楽しんでいた。


 しかし、その当時からVR関連の社会問題が多発することとなる。


 VRマシンを使用中の人間は現実世界での五感を失っている。

 そういった人間を狙った種々の犯罪が横行。特に暴行や強姦が多発した。

 


 さらに、愉快犯やテロリストによる、仮想世界での拉致事件が起き始める。

 例を挙げれば、VRMMORPGをプレイしていた数千数万の人々が、ゲームからログアウト不能になり、長期間仮想空間に閉じ込められる、といったものだ。

 これが最も多く、特に、日本では異常とも言えるほどの件数が発生した、原因は定かではない――――。

 毎回拉致される人間が多いため、社会運営に支障を来たすこともあった。

 仮想空間に長期間囚われていたものは、精神に異常を来たす事が多く見られ、事件後のケアにも手間がかかる非常に厄介なケースと言える。


 他にも、新興宗教団体が仮想空間に接続している最中に死ねば、量子体になれる、電子の精霊になれる、別世界に旅立てる、などと信者を唆し、実際に数千人もの人間がそれを実行し帰らぬ人となった。



 VR技術が世の中に浸透してから10年にも満たぬ間に、上記のような事件が起こり続けた結果、VRMMOのプレイヤー人口は激減の一途を辿ることとなった。



 しかし、それから100年程経過した頃、新たな技術の革新が起こる。


 ――――人間は神の領域を土足で踏み荒らしていた。


 生まれたばかりの赤ん坊の脳と脊髄にナノマシン――サーバー上の仮想空間にある仮想体アバターと接続するための超小型のVRマシンを打ち込んだ。

 その試みは、幼少期から脳と仮想空間を繋げ続けることで、今までに無い神経を生やし、従来の脳が持ち得なかった新たなる機能を獲得するに至った。


 仮想空間専用の神経感覚――『セカンドブレイン』と呼ばれるものが誕生した。


 人間は現実と仮想を合わせて、四本の手を、四本の足を、二つの視覚を、二つの嗅覚を、二つの味覚を、二つの聴覚を、その他全ての感覚を二重に手に入れたのだ。

 ――――さらに、現実世界には存在しない感覚まで人々は掌握する。


 こうして、VR技術による現実世界での五感の喪失は無くなった。

 VRマシンの唯一にして最大の欠点は克服されたのだ。

 仮想世界での拉致事件は起こり得ない。

 五感喪失状態の人間が犯罪に巻き込まれることは無い。

 ――――新興宗教団体だけは相変わらず残っていたが。


 人々は、仮想空間で生活しながら、並行して現実で生活することが可能になったのだ。



 それからさらに100年経過した――西暦2250年、VRMMORPGのプレイヤー人口は世界中で爆発的に増加し、溢れかえっていた。




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