エリクサー
美奈子たちは帰っていった。
教師に見つかれば面倒になる。
だからだろう。
最後に美奈子は少し残念そうな顔をしていた。
「またね、コウ」
そう言ってダンジョンを出ていった。
足音が消える。
完全に静かになった。
俺は祭壇を見た。
「……さて」
本番はここからだ。
俺は祭壇に手を置いた。
攻略本の知識。
この守護モンスターにはまだ続きがある。
「確か……ここ」
祭壇の下の石を押す。
ゴゴ……。
石がゆっくり動いた。
隠し通路。
「やっぱりあったな」
俺は中へ入る。
小さな部屋。
そこにあったのは――
骸骨。
ローブを着たまま座っている。
完全に白骨化していた。
「賢者か」
攻略本にも書いてあった。
このダンジョンを作った賢者。
そしてその手元。
小さな瓶。
金色の液体。
俺はそれを拾った。
⸻
エリクサー
⸻
効果。
HP・MP完全回復。
状態異常回復。
ほぼ伝説級のアイテム。
俺は瓶を光にかざす。
「……これ一本で」
「かなりの金になるな」
そして笑った。
「まあ」
「すぐ売るけどな!」
賢者の骸骨を見た。
「悪いな賢者」
「ありがたく金にさせてもらう」
俺は瓶をバッグに入れた。
そしてバッグを開く。
今日集めた魔石。
いくつもある。
普通なら売る。
だが。
「これは使う」
魔石にはもう一つ効果がある。
純度が高いものなら――
能力をわずかに上げる。
最低でも。
0.01。
小さい。
だが。
積み重ねれば大きい。
俺は魔石を一つ握った。
砕く。
光が体に吸い込まれる。
体の奥が少しだけ熱くなる。
さらにもう一つ。
もう一つ。
全部使う。
しばらくして光が消えた。
⸻
【ステータス】
名前:コウ
レベル:12
HP:103
MP:18
筋力:16.05
耐久:15.04
敏捷:19.06
器用:14.03
スキル
斬撃
確定ドロップ
幸運の加護
⸻
「悪くない」
数値はわずかだ。
だがこの積み重ねが後で効く。
しかも俺には――
幸運の加護。
つまり。
レアドロップ。
そして高純度魔石。
普通のプレイヤーより集めやすい。
「金も稼げるし」
「強くもなる」
俺は立ち上がった。
隠し通路を出る。
地下空洞。
もう誰もいない。
静かなダンジョン。
俺は短剣を腰に戻した。
「さて」
「学園戻るか」
エリクサー売れば。
かなりの金になる。
装備も買える。
ポーションも大量に買える。
つまり。
「またレベリングだな」
俺はダンジョンの出口へ歩き出した。
知らないところで。
俺の噂が広がっていることも知らずに。




