???ゴースト
地下空洞の奥。
ゴーストを数体倒し終え、俺はその場に腰を下ろした。
普通なら、ここで帰る。
だが俺は帰らない。
「ここからが本番だ」
俺は自分のステータスを確認する。
⸻
【ステータス】
レベル:7
HP:58
MP:12
筋力:12
耐久:11
敏捷:14
器用:10
ポーション:2
⸻
「まずは条件を作る」
俺は短剣を握り、自分の腕を軽く切った。
痛みが走る。
HPが減る。
さらにゴーストにわざと攻撃を受ける。
そしてポーションで微調整する。
何度か繰り返し、ようやく目的の状態になった。
⸻
【ステータス】
HP:1
MP:1
⸻
「よし」
ここからが一番面倒だ。
俺はその場に立ったまま動かない。
一歩も。
絶対に。
時間だけが過ぎていく。
地下空洞は静かだった。
遠くでゴーストが漂っている。
だが近づいてこない。
一時間。
二時間。
体がだるくなってくる。
「……まだか」
だが動いたら終わりだ。
このイベントは、普通のプレイヤーならまずやらない。
HP1。
MP1。
その状態で三時間待機。
しかも一歩も動かずに。
こんな条件、誰も気付かない。
だが攻略本には書いてあった。
『地下空洞の真のボス』
そして――
三時間が過ぎた瞬間。
空気が変わった。
地下空洞の中心に黒い霧が集まる。
ゆっくりと形になる。
俺は小さく笑った。
「出たな」
現れたのはゴースト。
だが普通のゴーストとは違う。
色が濃い。
そして名前が表示されていない。
⸻
???ゴースト
⸻
「世界で一体」
このモンスターは特殊だ。
出現条件が異常。
しかも倒されたら二度と出ない。
だからほとんどのプレイヤーが知らない。
だがこいつには価値がある。
倒すとスキルを得る、それは固定で確定ドロップというスキルだ。
ゴーストがゆっくりと近づく。
冷たい空気が漂う。
だが俺は慌てない。
理由は単純だ。
「弱いんだよな」
このゴーストは攻撃力が低い。
イベントモンスターだからだ。
条件が難しい代わりに、戦闘自体はそこまで強くない。
ゴーストが爪を振るう。
俺は横に避けた。
HPは1。
絶対に食らえない。
短剣を構える。
「いくぞ」
一歩踏み込む。
ザシュッ。
短剣が霧の体を切る。
ゴーストが揺れる。
もう一撃。
三撃目。
核が割れた。
パリン。
ゴーストは霧となって崩れ落ちた。
そして床に光が落ちる。
小さな結晶。
俺はそれを拾った。
⸻
【スキル結晶】
確定ドロップ
⸻
効果:
モンスターが落とすドロップを視認できる。
落とさないモンスターには何も表示されない。
⸻
「……これだ」
これは序盤では地味に見える。
だが本当の価値は別にある。
このスキルがあると――
レアドロップを持つモンスターが一瞬で分かる。
つまり。
効率よく狩れる。
金も稼げる。
レベルも上がる。
攻略本でもこう書いてあった。
『最強の金策スキル』
俺はスキル結晶を握りしめた。
体に光が流れ込む。
⸻
スキル取得
確定ドロップ
⸻
【ステータス】
レベル:8
HP:1
MP:1
筋力:13
耐久:12
敏捷:15
器用:11
スキル
確定ドロップ(NEW)
⸻
俺は周囲を見渡した。
地下空洞にゴーストが一体いる。
その頭上に――
小さく光る文字が見えた。
ポーション
俺は思わず笑った。
「なるほどな」
これがスキルの効果。
ドロップが見える。
落とすモンスターだけ。
落とさないモンスターには何も表示されない。
つまり。
「もう無駄な狩りはしなくていい」
俺はポーションを一本飲んだ。
HPが回復する。
そして短剣を構えた。
目の前のゴーストを見る。
頭上に表示されている。
ポーション
「よし」
俺は踏み込んだ。
「レベリング再開だ」




