ダンジョンの誘い
光世が騎士に勝った模擬戦のあと、訓練場の空気はしばらく興奮に包まれていて、生徒たちは「転校初日で騎士に勝つとかやばすぎる」「あれもう騎士レベルじゃないか」などと口々に騒いでいた。
だがその中心にいるはずの光世は、周りの騒ぎを特に気にする様子もなく、静かな表情で訓練場を歩いていた。
そして。
真っ直ぐこちらへ来た。
生徒たちが自然と道を空ける。
そのまま俺の前で止まった。
「コウ」
いきなり名前を呼ばれる。
周りが少しざわつく。
光世は落ち着いた目で俺を見る。
「ダンジョン行かないか」
突然の誘いだった。
周りの生徒たちが驚いた顔になる。
「え?」
「光世が誘ってる?」
「なんでコウ?」
そんな声が聞こえる。
俺は少しだけ首を傾けた。
「なんで俺なんだ」
光世は少し笑う。
「なんとなく分かる」
その目は真剣だった。
「お前、強いだろ」
俺は肩をすくめる。
「さぁな」
光世は少しだけ笑った。
「まぁいい」
「付き合えよ」
その言い方は軽かったが、どこか試すような空気があった。
俺は少し考える。
別に断る理由もない。
「いいぞ」
そう答えると、周りの生徒たちが一気にざわついた。
「マジで!?」
「この二人ダンジョン行くの!?」
「やばくない?」
その横で、美奈子が少しだけ不安そうな顔をする。
「大丈夫?」
「まぁな」
俺は軽く答える。
光世はその様子を少しだけ見てから、歩き出した。
「今から行く」
かなり行動が早い。
俺も後ろをついていく。
学園の門を出て、少し歩いた場所にある初心者用ダンジョンへ向かう。
道を歩きながら光世が言う。
「この学園、思ったより弱いな」
かなりストレートな感想だった。
「騎士も悪くないけど、まだ上がいそうだ」
そしてちらっとこちらを見る。
「例えばお前とか」
俺は特に答えない。
ダンジョンの入り口に着く。
中へ入るとすぐにスライムが現れた。
光世が一歩前へ出る。
剣を振る。
スパッ
スライムが一瞬で切れる。
動きは速い。
迷いもない。
「こんなもんか」
光世はそのまま先へ進む。
ゴブリン。
オーク。
モンスターが次々現れる。
だが光世はすべて一撃で倒していく。
明らかに強い。
普通の生徒とはレベルが違う。
だが。
途中でふと光世が止まる。
奥から大きな影が出てきた。
ミノタウロス。
このダンジョンの中ボスだ。
普通の生徒ならかなり苦戦する相手。
光世が剣を構える。
「こいつは少し面白そうだな」
ミノタウロスが咆哮を上げて突っ込んでくる。
光世が踏み込む。
剣を振る。
キンッ
だが。
ミノタウロスの斧がそれを弾いた。
「……」
光世が少し驚く。
その瞬間。
ミノタウロスの拳が振り下ろされる。
ドンッ!!
地面が砕ける。
光世が後ろに飛ぶ。
少し距離が空く。
「なるほど」
光世が少し笑う。
「強いな」
そう言って再び構える。
だがその横を。
俺が通り過ぎた。
ソウルイーターを軽く振る。
シュッ
一瞬。
ミノタウロスの首が落ちた。
巨大な体がそのまま崩れ落ちる。
光世が少し目を見開く。
「……」
俺は剣を肩に担ぐ。
「終わったぞ」
しばらく沈黙が流れる。
そして光世が小さく笑った。
「やっぱりな」
楽しそうだった。
「お前」
「強いじゃん」
俺は肩をすくめる。
「まぁ普通だ」
光世はその言葉を聞いて、少しだけ笑った。
その目は完全に確信していた。
この学園に、自分と同じレベルの奴がいることを。
そして。
それが俺だということを。
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