転校生
人気のないダンジョンを出て学園へ戻る道を歩きながら、俺は肩に担いだソウルイーターを軽く叩き、さっき手に入れたばかりのスキル【無】のことを頭の中で何度も思い返していたが、あのスキルは強力な代わりに発動のタイミングがあまりにもシビアすぎて、実戦で使うにはかなり練習が必要だと改めて感じていた。
攻撃が当たる瞬間、誤差〇・一秒以内で発動しなければならない。
言葉にすれば簡単だが、実際にやろうとするとほぼ反射神経の世界だ。
「まぁすぐ使えるもんでもないか」
俺は小さく呟きながら歩き続ける。
あのダンジョンは経験値もドロップもないから誰も来ない。
だが俺にとっては違う。
ソウルイーターは敵の魂を吸い、スキルを取り込む。
つまりあの場所は、スキルを集めるためのダンジョンみたいなものだった。
そんなことを考えているうちに、学園の巨大な門が見えてくる。
門の前にはいつものように護衛騎士が立っていた。
その中の一人が、俺を見るなり眉をひそめる。
以前俺と戦った騎士だった。
「また外に出ていたのか」
腕を組みながら少し警戒した目でこちらを見る。
「まぁな」
俺は軽く答える。
「ダンジョン行ってただけだ」
騎士は少し黙ったあと、低い声で言った。
「……本当にお前は何者なんだ」
普通の生徒が一人でダンジョンに行くこと自体あり得ない。
しかも俺は一度騎士と戦っている。
疑われるのも当然だった。
「ただの生徒だよ」
俺はそれだけ言って、そのまま学園の門をくぐった。
背中に騎士の視線を感じたが、特に気にすることはなかった。
校舎へ近づくと、いつもよりやけに騒がしいことに気づく。
廊下のあちこちで生徒たちがざわざわしている。
「なんかあったのか?」
俺が横を通ると、近くの生徒の会話が聞こえた。
「今日転校生来るらしいぞ」
「この時期に?」
「なんかめちゃくちゃ強いらしい」
転校生。
この学園で途中転入はかなり珍しい。
しかも“強い”という噂まで出ている。
「ふーん」
俺は特に気にせず教室へ向かった。
教室のドアを開けると、ほとんどの生徒がすでに席についていた。
そして。
「コウくん!」
美奈子がすぐにこちらへ来る。
少し安心した顔だった。
「どこ行ってたの?」
「ダンジョン」
「え!?」
美奈子は驚いた顔をする。
「危ないよ!」
「まぁ大丈夫だ」
そんな話をしていると、教室のドアが開いた。
担任の教師が入ってくる。
その後ろに、一人の男が立っていた。
教室の空気が一瞬で変わる。
銀色に近い明るい髪。
整った顔立ち。
そして立っているだけで分かる、普通じゃない雰囲気。
教師が黒板の前に立つ。
「今日は転校生を紹介する」
教室がざわつく。
「自己紹介しなさい」
男が一歩前へ出た。
落ち着いた目で教室を見渡す。
そして静かな声で言った。
「光世だ」
「よろしく」
それだけ言って静かに立つ。
教室が一気に騒がしくなる。
「かっこよくない?」
「しかも強そうなんだけど」
「雰囲気やばい」
そんな声があちこちから聞こえる。
その中で光世の視線がゆっくり教室を見回した。
そして。
一瞬だけ、俺のところで止まる。
まるで強さを測るみたいな目だった。
だが俺は特に反応しない。
すると光世はほんのわずかに笑った。
興味を持ったみたいに。
「コウくん」
横から美奈子が小さく話しかけてくる。
「あの人…なんかすごい強そう」
「まぁそうだろうな」
俺は軽く答える。
だが美奈子は少し光世を見たあと、すぐに俺の方を見た。
「でも」
少し笑う。
「コウくんの方が強そう」
俺は苦笑した。
その会話を、前に立っていた光世が聞いていたのかもしれない。
光世の視線がもう一度こちらへ向く。
今度は少しだけ鋭い目で。
こうして――
本来ならこの学園で中心になるはずの存在。
光世が、このクラスに現れた。
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