学園大騒ぎ
学園の正門が見えてきた頃には、もう夕方になっていた。
長いダンジョン探索の後だからか、いつもより門が大きく見える気がする。
俺たちが門をくぐると――
「美奈子様!!」
突然、大きな声が響いた。
学園の生徒が何人もこちらへ走ってくる。
「見つかったんですか!?」
「無事だったんですね!」
どうやら美奈子が戻ったことに驚いているらしい。
俺は少し首をかしげた。
「……なんか騒ぎになってないか?」
すると美奈子が少し恥ずかしそうに目を逸らした。
「その……」
「ちょっとだけ、探してもらってました」
ちょっとどころじゃないだろ。
周りを見ると、明らかに人が集まり始めている。
しかも――
「え、あれコウじゃね?」
「なんで美奈子様と一緒にいるんだ?」
「いや、あり得なくない?」
ヒソヒソ声が聞こえてくる。
それもそのはずだ。
この学園では美奈子はかなり有名だからだ。
理由は単純。
男嫌いで有名な貴族の娘。
近づく男子はだいたい無視されるか、冷たい目で見られる。
そんな彼女が――
普通に俺の横を歩いている。
「……」
周りの視線が一気に集まる。
「嘘だろ」
「普通に話してるぞ」
「しかも距離近くない?」
ざわざわと空気が騒がしくなる。
その時、美奈子が少し困った顔で小さく言った。
「コウくん」
「はい」
「……なんか見られてます」
「いや、めちゃくちゃ見られてる」
俺がそう言うと、美奈子は小さく笑った。
「ふふ」
「でもいいです」
そう言って、少しだけ俺の方に近づく。
その瞬間。
「近っ!!」
「距離近い!!」
後ろの男子生徒が叫んだ。
学園の空気がさらに騒がしくなる。
俺は苦笑した。
「なんか面倒なことになってないか?」
「そうですね」
美奈子は楽しそうに笑う。
どうやら本人はあまり気にしていないらしい。
その時だった。
「美奈子様!」
慌てた声が聞こえてくる。
振り向くと、学園の教師が走ってきていた。
「どこに行っていたのです!」
「護衛騎士まで動いて、学園中が大騒ぎだったんですよ!」
教師はかなり焦っている。
美奈子は少しだけ申し訳なさそうな顔をする。
「すみません……」
「でもコウくんを探していて」
その瞬間。
教師が止まる。
「……コウ?」
俺を見る。
そして横にいる騎士を見る。
騎士は小さくため息をついた。
「事情は後で説明します」
「ダンジョンで問題が起きました」
教師の顔が真剣になる。
「問題?」
騎士は少しだけ間を置いて言った。
「レッサードラゴンが出現しました」
一瞬。
空気が止まる。
「……は?」
教師の顔が固まる。
周りの生徒も静かになった。
そして次の瞬間。
「ドラゴン!?」
学園が一気に騒然となった。
教師は慌てて騎士に聞く。
「討伐は!?」
騎士はゆっくり答えた。
「済んでいます」
教師はほっと息を吐く。
「それはよかった……」
そしてふと聞く。
「誰が討伐したのです?」
騎士が少しだけ困った顔をして――
俺を見る。
教師もつられて俺を見る。
そして一言。
「……え?」
周りの生徒が一斉にざわめいた。
「まさか」
「いやいや」
「学生だぞ?」
完全に信じていない空気だ。
俺は肩をすくめる。
「まぁ、たまたまだ」
すると美奈子がすぐに言う。
「たまたまじゃありません!」
「コウくん強いんです!」
また騒ぎが大きくなる。
男子生徒たちの顔が複雑だ。
「なんであいつだけ……」
「美奈子様に名前呼び……」
「しかもドラゴン……?」
俺は思わず苦笑する。
どうやら――
学園生活はしばらく騒がしくなりそうだった。
そしてその時。
美奈子が小さく俺に言った。
「コウくん」
「はい」
「お礼したいです」
「今日」
「カフェ、行きませんか?」
その言葉を聞いて――
後ろの男子生徒が一斉に固まった。
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