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転生したけど攻略本のおかげでチート無双  作者: ワギャ
第一章 攻略本とレベリング
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疑念

レッサードラゴンの死体の前で、洞窟の空気は妙な沈黙に包まれていた。


 俺は普通に立っているだけだが、周りの騎士たちは完全に困惑している。


 当然だろう。


 学生が一人でドラゴンを倒したなんて、普通はあり得ない話だ。


「……本当に君が倒したのか?」


 騎士の一人が低い声で聞いてくる。


 鎧の男は鋭い目で俺を見ていた。


 疑っている顔だ。


 まぁ当然だな。


 俺は肩をすくめた。


「他に誰かいるように見えるか?」


 洞窟の中には俺たちしかいない。


 騎士は少し黙り込む。


 だが、完全には納得していない顔だった。


「……偶然弱っていた可能性もある」


「あるいは最後の一撃だけを……」


 ぶつぶつとそんなことを言っている。


 俺は特に否定もしない。


 別に信じてもらう必要もないからだ。


 その時だった。


「もう!」


 美奈子が一歩前に出る。


「コウくんが倒したに決まってるじゃないですか!」


 少し怒ったような声だった。


 騎士たちは一瞬固まる。


 美奈子は学園でも有名な貴族の娘だ。


 その彼女がここまで強く言うのは珍しい。


「美奈子様……しかし」


「しかしじゃないです!」


 美奈子は腕を組んで騎士を睨む。


「コウくんはすごいんです!」


 洞窟の空気が少し変になる。


 騎士たちは顔を見合わせた。


 どうやら美奈子がここまで肩を持つとは思っていなかったらしい。


 そして小さく咳払いをする。


「……とにかく」


「ここに長くいるのは危険です」


「学園へ戻りましょう」


 騎士の一人がそう言った。


 確かにその通りだ。


 ドラゴンの死体がある場所には、他のモンスターも寄ってくる可能性がある。


 俺は袋を軽く持ち上げた。


 中にはさっきのドロップアイテムが入っている。


「じゃあ帰るか」


 俺たちは洞窟の通路を歩き始めた。


 先頭を騎士が進み、その後ろを俺と美奈子が歩く。


 少しして、美奈子が小さな声で話しかけてきた。


「コウくん」


「はい」


「……本当に大丈夫でした?」


 さっきまで強気だったのに、今は心配そうな顔だ。


 俺は軽く笑う。


「まぁな」


「ちょっと疲れたくらいだ」


「……よかった」


 美奈子はほっとしたように息を吐いた。


 そして少しだけ顔を赤くする。


「その……」


「一人で行ったって聞いて、すごく心配だったんです」


「学園中で探したんですよ?」


 俺は苦笑した。


 そりゃ騒ぎになるわけだ。


「悪かったな」


「いきなりだったから」


「もう」


 美奈子は少し拗ねた顔をする。


「今度はちゃんと言ってください」


「分かった」


 そんなやり取りをしていると、前を歩いていた騎士がちらっとこちらを見る。


 どうやら会話は聞こえているらしい。


 しかもまだ疑っている顔だった。


 俺が本当にドラゴンを倒したのか。


 それとも偶然なのか。


 騎士たちはまだ結論を出していない。


 そして洞窟を抜けると、外の光が差し込んできた。


 久しぶりの青空だ。


 騎士の一人が空を見ながら言う。


「……学園に戻ったら報告が必要になります」


「ドラゴン出現は大問題ですから」


 俺は軽く頷いた。


「そうだろうな」


 すると別の騎士が小さく呟く。


「……それより」


「学生がドラゴンを倒したという話の方が問題かもしれないがな」


 俺は思わず苦笑する。


 どうやら、また面倒なことになりそうだ。


 その時、美奈子が俺の隣で小さく笑った。


「でも」


「ちょっと誇らしいです」


「コウくんが強いって、みんなに分かりますから」


 学園へ続く道を歩きながら、俺は空を見上げる。


 静かな青空。


 だが――


 学園に戻れば、間違いなく騒ぎになる。


 そんな予感がしていた。

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