秘密の狩場
合同授業の集合まで、まだ少し時間があった。
廊下ではDクラスの連中が不安そうに集まっている。
「Cクラスと戦うらしいぞ……」
「終わったな……」
「絶対ボコボコにされる……」
まぁそうなるだろう。
このイベントはゲームでも有名だった。
Dクラス公開処刑イベント。
上位クラスとの実戦訓練。
だが実際には格付けだ。
Dクラスは叩き潰される。
「……でもな」
俺は小さくつぶやく。
それは普通にプレイした場合の話だ。
俺の頭の中には、このゲームの攻略情報がある。
序盤で一番重要なのは――
レベル。
この世界ではレベル差がそのまま強さになる。
そして俺は知っている。
序盤で一番効率よく経験値を稼げる場所を。
「その前に」
俺は方向を変えた。
向かったのは学園の購買部だ。
朝の時間だからまだ人は少ない。
武器、装備、ポーション。
学生向けの装備が並んでいる。
俺は棚を見る。
「……あった」
初級ポーション。
HPを少し回復するだけの安い薬だ。
普通の生徒はあまり買わない。
値段が高いからだ。
だが攻略情報でははっきり書かれていた。
序盤はポーションを惜しむな。
レベルが上がれば簡単に取り返せる。
俺はポーションを三本買った。
残金はほとんどない。
「まぁいい」
すぐ回収できる。
俺は学園の裏山へ向かった。
そこには学生がよく利用する低層ダンジョンの入口がある。
だが俺の目的はそこじゃない。
入口の横。
古びた石壁。
一見ただの壁だ。
だが俺は知っている。
「この辺だったな」
石の隙間に指を入れて押す。
ゴゴ……
鈍い音が響いた。
石壁が少しだけ動く。
その奥に――
細い通路。
「やっぱりあった」
ここはゲームでもほとんど知られていない。
隠し通路。
俺はそのまま中へ入った。
薄暗い通路を進む。
しばらくすると空間が広がった。
小さな地下空洞。
そしてそこにいたのは――
ふわりと浮かぶ白い影。
「……ゴースト」
普通の低層には出ないモンスターだ。
初心者が戦う相手じゃない。
だが俺は焦らない。
ゴーストには弱点がある。
武器が当たりにくい。
普通の攻撃が通りにくい。
だが――
耐久は低い。
ゴーストがこちらに気付いた。
ふわりと近付いてくる。
冷たい空気が漂う。
「来たな」
俺は剣を構えた。
タイミングを待つ。
ゴーストが接近する。
その瞬間。
俺は踏み込んだ。
剣を振る。
ザシュッ。
手応えは軽い。
だがゴーストの体が揺れた。
完全には効いていない。
だが――
「想定通り」
ゴーストの冷気が腕に触れる。
冷たい痛みが走る。
「ちっ」
HPが削れる。
俺はすぐポーションを飲んだ。
傷が少し回復する。
そしてもう一度踏み込む。
剣を振る。
今度は連続で叩き込む。
三撃目。
ゴーストの体が崩れた。
霧のように消える。
そして床に落ちる小さな石。
魔石。
「よし」
体の奥が少し熱くなる。
経験値が入った証拠だ。
普通のスライムよりずっと多い。
俺は周囲を見た。
まだゴーストがいる。
しかも――
かなり多い。
思わず笑う。
「なるほど」
この狩場。
やっぱり効率がいい。
「ここなら」
俺は剣を握り直した。
「すぐレベル上がるな」
そして次のゴーストへ向かった。




