ドラゴン
隠しダンジョンの奥へ進むほど、空気はさらに重くなっていった。
探索スキルで感じる反応も、今までのモンスターとは明らかに違う。
圧力というか、存在感というか――
まるでそこに巨大な生き物が眠っているような感覚だった。
「……これは」
俺は思わず足を止めた。
「間違いなくボスだな」
通路の先には、巨大な石の扉がある。
古代の遺跡みたいな模様が刻まれていて、明らかに普通のフロアとは違う。
つまり――
ボス部屋。
「こんな隠しダンジョンにボスまであるのかよ」
だが、ここまで来て引くつもりはない。
むしろ。
俺の手には、今最高の武器がある。
ソウルイター。
そして探索スキル。
さらに幸運の加護。
「これでドラゴン系とか出たら笑うけどな」
そう呟きながら、俺は石の扉を押した。
⸻
扉は重い音を立てながらゆっくりと開いた。
中は巨大な空間だった。
洞窟というより、地下神殿に近い。
そして。
その中央に――
巨大な影。
赤い鱗。
大きな翼。
鋭い牙。
ゆっくりと持ち上がる長い首。
「……おい」
俺は思わず笑ってしまった。
「本当にドラゴンじゃねぇか」
それは間違いなく――
レッサードラゴン。
完全な成体のドラゴンではないが、それでも普通の冒険者ならパーティーで戦うレベルのモンスターだ。
ドラゴンがゆっくりと目を開いた。
赤い瞳がこちらを見る。
「グルルル……」
低い唸り声。
その声だけで空気が震える。
だが。
俺は剣を構えた。
「いいね」
「スキル持ってそうだ」
次の瞬間。
ドラゴンが咆哮した。
「グオオオオオオオ!!」
洞窟全体が震える。
そして口が大きく開いた。
俺はすぐに理解した。
「ブレスか!」
炎が吐き出される。
巨大な火の奔流。
俺は横へ全力で跳んだ。
炎が床を焼き、石が溶ける。
「……やば」
当たってたら終わってた。
だが。
ドラゴンは動きが大きい。
つまり――
隙も大きい。
俺は床を蹴り、ドラゴンの横へ走る。
巨大な爪が振り下ろされる。
避ける。
風圧が体を揺らす。
「でかいだけなら勝てる」
俺は懐へ潜り込んだ。
そして。
ソウルイターを振り抜く。
「斬撃!」
ザシュッ!!
鱗の隙間に刃が入った。
ドラゴンが怒りの咆哮を上げる。
「グオオオオ!!」
尾が振られる。
俺はギリギリで跳び退いた。
それでも衝撃で転がる。
HPが少し削れる。
「やっぱ簡単じゃないな……」
俺は立ち上がりながらポーションを飲んだ。
だが、その瞬間。
俺は気づいた。
ドラゴンの動き。
攻撃のリズム。
それは――
「……攻略本通りだ」
思い出す。
このタイプのレッサードラゴンは、三回攻撃のあと必ず隙ができる。
「じゃあ」
「次で終わりだ」
ドラゴンが再び突進してくる。
爪。
避ける。
尾。
しゃがんで回避。
そして三撃目。
ブレス。
俺は横へ跳ぶ。
炎が通り過ぎた瞬間――
ドラゴンの首が大きく下がる。
隙。
「ここだ!」
俺は全力で踏み込んだ。
ソウルイターを両手で握る。
そして。
首元へ――
全力の斬撃。
ザシュウウッ!!
刃が深く食い込む。
血が噴き出す。
ドラゴンの体が大きく震えた。
「グオオ……」
巨体がゆっくりと崩れ落ちる。
洞窟全体が揺れた。
⸻
その瞬間。
ソウルイターが激しく光り始めた。
「来た……!」
剣の中に、巨大な力が吸い込まれていく。
【魂吸収】
【スキル取得】
【竜鱗皮膚】
「……おお」
説明が頭に浮かぶ。
【竜鱗皮膚】
【防御力大幅上昇】
【物理ダメージ軽減】
「これは……」
「当たりすぎるだろ」
ソウルイターのスロットを見る。
再生(小)
竜鱗皮膚
残りスロット:1
「あと一つか」
その時だった。
探索スキルが新しい反応を捉える。
「……?」
ダンジョンの入口方向。
人の反応。
しかも。
一人じゃない。
複数人。
「……冒険者か?」
だが、その中に。
一つだけ知っている気配があった。
俺は思わず苦笑する。
「まさか」
「美奈子か?」
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