スキルストック
隠しダンジョンの奥へ進むにつれて、空気が少しずつ重くなっていくのが分かった。
壁は湿っていて、足音が静かに反響する。
普通のダンジョンよりも明らかに雰囲気が違う。
だが――
俺にはもう関係ない。
頭の中には、探索スキルで捉えた反応がはっきりと浮かんでいた。
「……三体か」
少し先の部屋。
モンスターの反応が三つ。
しかも、そのうちの一つはさっきまで戦っていたゴブリンやオークとは違う、少し強い反応だった。
「ちょうどいいな」
俺は黒い剣――ソウルイターを握り直した。
この武器の能力。
斬った相手のスキルを三つまでストックできる。
つまり。
スキル持ちモンスターを倒せば、その能力を手に入れることができるということだ。
「試すにはちょうどいい」
俺は静かに部屋へ足を踏み入れた。
⸻
部屋の中には三体のモンスターがいた。
オークが二体。
そして――
中央に立っている大きな影。
「……トロルか」
身長はオーガより少し低いが、体はさらに分厚い。
緑色の皮膚。
そして特徴的なのは――
体の傷がゆっくりと塞がっていくこと。
「なるほど」
俺は小さく笑った。
「再生持ちか」
攻略本の知識が頭に浮かぶ。
トロル系モンスターの多くは、再生スキルを持っている。
つまり。
こいつを倒せば――
「スキルいただきだな」
俺は床を蹴った。
まずはオーク。
斬撃。
ソウルイターの刃が横に走る。
ザシュッ!!
オークの腹が大きく裂けた。
短剣より明らかに切れ味がいい。
オークが倒れる。
もう一体が叫びながら突進してくる。
俺は体を半歩ずらしながら、剣を振り上げる。
そして――
斬撃。
首元を一閃。
オークの体がそのまま崩れ落ちた。
「よし」
残るは一体。
トロル。
⸻
「グオオオオオ!!」
トロルが腕を振り上げる。
巨大な拳。
振り下ろし。
俺は横へ跳ぶ。
ドンッ!!
地面が大きく凹んだ。
「やっぱパワーもあるな」
俺はソウルイターを構え直す。
トロルの再生能力は厄介だ。
中途半端に傷をつけてもすぐに回復する。
だが――
倒せないわけじゃない。
俺はトロルの周囲を回りながら、タイミングを測る。
拳が振られる。
避ける。
もう一度振られる。
その瞬間。
俺は懐へ潜り込んだ。
「斬撃!」
ソウルイターを全力で振り抜く。
ザシュッ!!
胸が大きく裂けた。
だが。
その傷がゆっくりと塞がり始める。
「やっぱ再生するか」
トロルが怒りの咆哮を上げる。
だが、その動きは単調だ。
俺は距離を取りながら、もう一度タイミングを待つ。
そして。
拳が振り下ろされた瞬間。
横へ回り込む。
そのまま背中へ――
ソウルイターを突き刺した。
ザシュッ!!
刃が深く入る。
トロルが大きく震える。
俺はそのまま剣を引き抜き、首元へ最後の一撃を叩き込んだ。
血が噴き出す。
トロルの体がゆっくりと崩れ落ちた。
⸻
その瞬間。
ソウルイターが紫色に光り始めた。
「……お?」
剣の中に、何かが吸い込まれていく感覚がある。
そして頭の中に声が響いた。
【ソウルイターが魂を吸収しました】
【スキルをストック】
【再生(小)】
「来た……!」
俺は思わず笑った。
やっぱりだ。
トロルのスキル。
再生。
ゆっくりだが、HPが自動で回復する能力。
「これは強い」
ポーションの消費も減る。
長期戦にも強くなる。
完全に当たりスキルだ。
俺はソウルイターを見つめる。
【ストックスキル】
再生(小)
残りスロット:2
「あと二つか」
さらに強いモンスターを倒せば、もっと強いスキルも手に入る可能性がある。
その時だった。
探索スキルが強く反応した。
「……?」
さっきまでなかった反応。
それも――
かなり大きい。
ダンジョンのさらに奥。
今までよりも圧倒的に強い反応が、一つだけ浮かび上がった。
「……ボスか?」
隠しダンジョンの最深部。
間違いなく、ここまでで一番強いモンスター。
だが。
俺は少しも怖くなかった。
むしろ――
笑っていた。
「ソウルイター」
「次のスキル、期待してるぞ」
そう呟きながら、俺はダンジョンのさらに奥へ歩き出した。
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