表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したけど攻略本のおかげでチート無双  作者: ワギャ
第一章 攻略本とレベリング
16/28

オーガ

洞窟の奥から、地面を揺らすような重い足音がゆっくりと近づいてきた。その振動は壁を伝って体の奥まで響いてくるようで、さっきまでのゴブリンやオークとは明らかに違う存在感を放っている。


 暗闇の奥から姿を現したそれを見て、俺は思わず小さく息を吐いた。


「……でかいな」


 身長は三メートル近い。灰色の皮膚に岩のような筋肉、そして手には人間の体ほどもある巨大な棍棒を握っている。


 典型的なパワー型モンスター――オーガだ。


 しかも普通の個体より一回り大きい。おそらくこのモンスターハウスの主みたいな存在なのだろう。


 俺は短剣を握り直しながら、自分の状態を確認した。


 HPは完全ではない。さっきポーションで回復したが、戦闘を繰り返していたせいでまだ万全とは言えない状態だった。


 それでも、ここで引くつもりはない。


「まぁ……レベリングにはちょうどいいか」


 軽く肩を回してから、一歩前に出る。


 その瞬間、オーガの目がこちらを捉えた。


「グオオオオオッ!!」


 洞窟を揺らすような咆哮が響き、巨大な棍棒がゆっくりと振り上げられる。


 次の瞬間――


 ドンッ!!


 棍棒が地面に叩きつけられ、床の石が砕け散った。


 衝撃で小石が跳ね上がり、俺の頬をかすめる。


「……当たったら終わりだな」


 あれをまともに食らえば、HPがどうこうというレベルでは済まないだろう。


 俺は距離を取りながら、オーガの動きを観察する。


 棍棒が横薙ぎに振られる。空気を切り裂く音が耳に届いた瞬間、俺は咄嗟にしゃがみ込んで回避した。


 だが、その風圧だけで体が大きく揺れる。


「重すぎるだろ……」


 ゴブリンやオークとは比べ物にならない破壊力だ。


 それでも、俺は前に踏み込む。


 短剣を構え、オーガの脚を狙って斬りつけた。


 斬撃。


 ザシュッ。


 しかし刃は思ったより浅くしか入らない。分厚い皮膚と筋肉が、ほとんど衝撃を吸収してしまっていた。


「グオッ!」


 オーガの腕が振られる。


 ガンッ!


「ぐっ……!」


 避けきれず、腕の一撃が肩に直撃した。


 次の瞬間、俺の体は宙に浮き、そのまま背中から地面へ叩きつけられる。


 肺の空気が一気に吐き出され、視界が一瞬白くなった。


「……っ、痛ってぇ……」


 HPが大きく削られているのがわかる。


 俺はすぐにポーションを取り出し、栓を抜いて一気に飲み干した。


 体の奥に温かい感覚が広がり、傷がゆっくりと塞がっていく。


 だが、オーガは待ってくれない。


「グオオオッ!」


 再び棍棒を振り上げる。


 振り下ろし。


 ドンッ!!


 俺は横へ転がりながら、ギリギリでそれを回避した。


 さっきまで立っていた場所の床が大きく割れている。


 もし少しでも遅れていたら、間違いなく潰されていただろう。


(正面から殴り合うのは無理だな)


 呼吸を整えながら、頭の中で状況を整理する。


 パワーは圧倒的。防御も高い。まともに削り合えばこっちが先に力尽きる。


 だが、このタイプのモンスターには弱点がある。


 動きが遅い。


 俺は立ち上がり、オーガの周囲を大きく回り始めた。


 棍棒が振り回される。


 避ける。


 もう一度振られる。


 また避ける。


 だが、それだけで体力はどんどん削られていく。


 呼吸は荒くなり、HPも再び半分を切っていた。


「くそ……ポーション減るな」


 もう一本取り出し、飲み干す。


 これで残りは一本。


 次で決めるしかない。


 オーガが大きく吠えながら、こちらへ突進してきた。


 巨大な体が一直線に迫る。


 だが、その動きは直線的だ。


 俺はギリギリまで引きつける。


 そして――


 横へ跳んだ。


 オーガの巨体がそのまま前へ流れ、わずかに体勢を崩す。


 その瞬間を、俺は見逃さなかった。


「ここだ!」


 背後へ回り込み、短剣を全力で突き刺す。


 ザシュッ!!


 刃が背中の筋肉を切り裂いた。


「グオオオオオ!!」


 オーガが激しく暴れる。


 だが、もう遅い。


 俺はさらに一歩踏み込み、もう一度斬撃を叩き込んだ。


 首元。


 深く。


 血が噴き出す。


 巨体が大きく揺れ――


 ドン……


 地面を揺らしながら、ゆっくりと崩れ落ちた。


 洞窟の中に、静寂が戻る。


 俺はその場に座り込み、大きく息を吐いた。


「……はぁ……マジで死ぬかと思った」


 HPはほとんど残っていない。


 最後のポーションを飲みながら、倒れたオーガを見上げた。


 すると、その体がゆっくりと光り始める。


「お?」


 光の粒がいくつも地面に落ちた。


 ドロップだ。


 しかも、数が多い。


 俺は一つずつ拾い上げていく。


 魔石。


 骨。


 そして――


 ひときわ強く光る結晶。


「……スキル結晶?」


 思わず笑みがこぼれる。


「これは……当たりだろ」


 さすが幸運の加護。


 俺はその結晶を手の中で握りしめた。


「さて……」


「どんなスキルだ?」


 結晶を砕いた瞬間、光が体の中へ流れ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ