護衛騎士
カフェを出たあと。
学園の門の外。
街へ続く石畳の道。
「どこ行くの?」
美奈子が隣で聞く。
「買い物」
「買い物?」
「装備とか?」
俺は首を振る。
「ポーション」
「え?」
⸻
数分後。
街の道具屋。
店の棚には赤い瓶が並んでいる。
初級ポーション。
俺が最初に三本だけ買ったやつだ。
美奈子が店を見回す。
「ここ普通の道具屋だよ?」
「うん」
俺は店主を見る。
「ポーションあるだけ全部」
店主。
「……は?」
美奈子。
「え?」
店主が棚を見る。
「いや、全部って」
「50本くらいあるぞ?」
「それでいい」
店主が固まる。
「ご、五十本!?」
美奈子も目を丸くする。
「そんなに何に使うの!?」
俺は普通に答える。
「レベリング」
⸻
金貨を置く。
コトン。
店主が慌てる。
「ま、毎度あり!」
店の奥から箱を持ってくる。
ポーションの箱。
美奈子が呆れる。
「本当に買うんだ……」
「ダンジョン潜るなら多い方がいい」
俺は箱を持ち上げる。
ずしりと重い。
「普通そんな使わないよ!」
「足りないよりいい」
遠くで見ていた学生達。
「え?」
「ポーション50本?」
「初心者がやる量じゃない」
⸻
その時。
「美奈子様」
低い声。
振り向く。
そこにいたのは。
銀の鎧。
長身。
剣を腰に差した男。
「お探ししました」
美奈子が少し困った顔をする。
「アルト……」
周囲の学生がざわつく。
「護衛騎士だ」
「公爵家の」
「強いやつ」
アルトと呼ばれた男は俺を見る。
鋭い目。
「あなたがコウですか」
「そうだけど」
アルトは少しだけ眉をひそめた。
「美奈子様は貴族です」
「庶民が軽々しく近づく存在ではありません」
美奈子が怒る。
「アルト!」
「失礼だよ!」
だがアルトは続ける。
「もしあなたが本当に実力者なら」
「証明してもらいましょう」
周囲。
ざわっ。
「決闘だ」
「来た」
「やばい」
美奈子が慌てる。
「そんなの必要ない!」
だがアルトは俺を見る。
「どうします?」
俺は少し考える。
そして。
アルトを見る。
なるほど。
心の中で思う。
(あー)
(このタイプか)
攻略本に書いてあった。
王都騎士アルト。
序盤に出る。
強キャラ。
でも。
弱点がある。
(確か)
(右側の防御が甘い)
(あと大振り)
つまり。
普通に戦うと強いが。
攻略法を知っていれば。
そこまででもない。
俺はポーションの箱を持ち上げた。
「いいよ」
アルトの目が細くなる。
「受けるんですね」
俺は言う。
「まあ」
「弱点知ってるし」
アルト。
「……?」
周囲の学生。
「え?」
「弱点?」
美奈子。
「コウ?」
俺は普通に言った。
「右側ガラ空きだぞ」
アルトの顔が。
初めて変わった。




