デート
学園の中庭。
その奥にある小さなカフェ。
学生達がよく使う場所だ。
だが今日は様子が違う。
店の窓の外。
遠くの席。
植木の影。
やたら人がいる。
「マジで来たぞ」
「デートだ」
「嘘だろ」
「男嫌いの美奈子様が」
みんなこそこそ見ている。
その中心。
テラス席。
俺と美奈子。
⸻
「ここお気に入りなんだ」
美奈子が少し嬉しそうに言う。
俺はメニューを見る。
ケーキ。
紅茶。
軽食。
「何食べる?」
俺が聞くと。
「え、いいよ」
美奈子が少し慌てる。
「私が誘ったんだし」
「私払うから」
俺は首を振る。
「いや」
「今日は俺」
美奈子が止まる。
「え?」
「いやでも」
「私貴族だし……」
俺は普通に言った。
「関係ないだろ」
「誘われた側だし」
「今日は俺が出す」
遠くの学生達。
「え」
「今の聞いた?」
「奢るって言った」
「相手美奈子様だぞ」
「普通逆だろ」
⸻
注文した。
紅茶。
ケーキ。
軽食。
店員が去る。
少し沈黙。
「……」
「……」
美奈子が少し顔を赤くしている。
「どうした?」
俺が聞く。
「いや、その……」
視線を逸らす。
「男の人に奢られるの初めて」
「え」
俺は驚いた。
「そうなのか」
「うん」
「だってみんな」
美奈子が苦笑する。
「私にいいところ見せようとして」
「無理するんだもん」
「だから嫌だった」
俺は普通に答える。
「まあ」
「金あるし」
美奈子がまた止まる。
「……」
「……」
少し笑った。
「変な人」
⸻
料理が来た。
紅茶の香り。
ケーキ。
美奈子が一口食べる。
「美味しい」
俺も食べる。
「うん」
普通にうまい。
⸻
会計。
店員が言う。
「銀貨三枚になります」
俺は袋から金貨を出す。
コトン。
店員の目が丸くなる。
「き、金貨!?」
遠くの学生達。
「は?」
「金貨?」
「学生だぞ?」
俺は言う。
「釣りでいい」
店員が慌てて頭を下げる。
「ありがとうございます!」
⸻
席に戻る。
美奈子がじっと見てくる。
「……」
「どうした」
「コウって」
「結構お金持ち?」
俺は答える。
「昨日たまたま稼いだ」
「ダンジョンで」
美奈子が驚く。
「そんな簡単に!?」
俺は肩をすくめた。
「まあ運」
少し沈黙。
そして。
美奈子が小さく笑う。
「コウって」
「やっぱり変」
「そうか?」
「うん」
そして。
少し照れながら言う。
「……でも」
「嫌いじゃない」




