転生
目が覚めたとき、俺は天井を見上げていた。
知らない天井だ。
いや、違う。
見覚えはある。
木製の梁。
古びた石壁。
天井からぶら下がるランタン。
俺はゆっくり体を起こした。
「……は?」
部屋は寮の一室のようだった。
簡素なベッド。
木の机。
小さなクローゼット。
窓の外を見る。
そこには広い中庭があり、鎧を着た学生たちが歩いていた。
さらにその奥。
巨大な塔。
そして――
地面にぽっかりと空いた巨大な穴。
ダンジョン。
「……マジかよ」
俺は頭を押さえた。
記憶が一気に蘇る。
昨日の夜。
仕事から帰って、コンビニ弁当を食べて、ゲームの攻略情報を読んでいた。
タイトルは――
《ダンジョン・ブレイド学園》
ダンジョン探索を学ぶ学園が舞台のRPGだ。
プレイヤーは生徒となり、レベルを上げ、装備を集め、クラスを上げていく。
そしてこの世界には絶対的なルールがある。
強いやつが偉い。
その力はすべて数字で決まる。
レベル。
ステータス。
スキル。
そして――
クラス。
俺は急いで制服の胸を見る。
そこに付いていたバッジには、はっきりと書かれていた。
Dクラス
「……終わってる」
この学園は完全実力主義だ。
Aクラス
Bクラス
Cクラス
Dクラス
そしてDクラスは――
最底辺。
ゲームでも、ほとんどのDクラスは途中で消える。
退学。
ダンジョン事故。
モンスターに殺される。
つまりここは――
モブの墓場だ。
「いや待て」
俺は深呼吸する。
落ち着け。
状況を整理しろ。
ここはゲームの世界。
そして俺はそのゲームを――
かなりやり込んでいる。
ストーリー。
ダンジョン構造。
モンスター配置。
レアドロップ。
ほとんど覚えている。
「……なるほどな」
つまり。
攻略サイトも。
攻略本も。
全部――
俺の頭の中にある。
その時、廊下が騒がしくなった。
ドアの外から声が聞こえる。
「急げ! 今日から合同授業だ!」
「Cクラスと戦うらしいぞ!」
俺の記憶が反応する。
ああ。
このイベント。
ゲーム序盤の有名イベントだ。
合同戦闘授業。
学年全体で行う実戦訓練。
そして実際には――
Dクラス公開処刑イベント。
上位クラスがDクラスを叩き潰す。
格付けの儀式だ。
ゲームでもこのイベントでDクラスの士気は完全に折れる。
「……でもな」
俺はゆっくり立ち上がる。
制服を整える。
鏡を見る。
そこには十六歳くらいの少年がいた。
前世の俺とは別人の顔だ。
だが。
頭の中には――
この世界の攻略情報が詰まっている。
「Dクラスね」
俺は小さく笑った。
ゲームでは。
Dクラスの連中は、ただやられるだけの存在だった。
でも。
それは――
正しい攻略法を知らない場合の話だ。
例えば。
この学園のダンジョン。
七層には特定の条件で経験値効率が異常に高い狩場がある。
しかも誰も気付いていない。
さらに低レベルでも取れるレア武器。
隠しスキル。
イベント分岐。
全部知っている。
「つまり」
俺はドアを開ける。
廊下には不安そうな顔をしたDクラスの生徒たちが集まっていた。
誰もが怯えている。
今日の合同授業でボコボコにされるからだ。
でも俺は違う。
「いいじゃん」
俺は小さくつぶやく。
「最初のイベントとしてはちょうどいい」
この世界はゲームだ。
そして俺は――
攻略済みのプレイヤー。
「さて」
俺は廊下を歩き出した。
「まずはレベル上げからだな」
こうして。
俺の攻略人生が始まった。
感想、レビュー貰えたらモチベ上がります!
初めて書き溜めていた作品なので不安もありますがブックマークもしていただけると嬉しいです。




