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EP 4

魔改造、三ツ星の錬金術

「いいか、よく見ておけ。これが『料理』という名の魔法だ」

ゴミ捨て場の横に設置された、即席の野外キッチン。

リアンは、白衣(給食当番用)を羽織り、眼光鋭く食材の山と対峙していた。

目の前にあるのは、ドロドロの魚のアラ、泥付きの野菜クズ、硬い牛スジ肉。

そして、カラフルなパッケージの駄菓子たち。

「まずはスープだ。イグニス! コンロ(ドラム缶)に火をつけろ! 最大火力だ!」

「おうよ! 燃やし尽くしてやるぜぇぇ!」

イグニスが口から紅蓮の炎を吐く。

俺は下処理したマグロの頭と中骨を、網の上で豪快に炙った。

ジュウウウウッ!!

「臭みである血液とぬめりを、炎で焼き切る! 同時に『メイラード反応』で香ばしさを付加するんだ!」

表面がこんがりと焼け、生臭さが消えたところで、大量の野菜クズと共に鍋へ放り込む。

「煮込め! 骨の髄が溶け出し、スープが白濁するまで徹底的にだ!」

グツグツと煮えたぎる鍋。

本来なら数時間かかる工程だが、イグニスのドラゴンブレス(超高温)のおかげで、わずか数十分で乳化が進む。

黄金色に輝く、濃厚な『鮮魚豚骨のようなスープ』の完成だ。

   ◇

「次はメインディッシュの肉だ」

俺は圧力鍋(風魔法で加圧)でトロトロに煮込んだ牛スジ肉を取り出した。

ゼラチン質が溶け出し、箸で切れるほど柔らかくなっている。

「ここで登場するのが、リリスの出した『ゴミ』だ」

俺は『美味ウマスティック・めんたい味』を袋のまま叩き、粉々に粉砕した。

「えっ? お菓子を粉々に……?」

「そうだ。これをパン粉の代わりに、肉にまぶす」

俺はトロトロのスジ肉に小麦粉をはたき、卵液をくぐらせ、砕いた美味スティックの粉をたっぷりと纏わせた。

「美味スティックの原料はコーン(トウモロコシ)と植物油だ。揚げればカリッとした食感を生む。さらに、パウダーに含まれた『めんたい味(魚介エキスと唐辛子)』が、肉に強烈なパンチ力を与える!」

ジュワアアアアッ!!

高温のラードで揚げると、香ばしい匂いが爆発した。

コーンの甘い香りと、スパイシーな魚介の香り。

それは、屋台の前を通るだけで足を止めてしまうような、暴力的な『ジャンクフードの魔力』だ。

   ◇

「仕上げだ。ソースを作るぞ」

俺は鍋に『コーラ飴』を30個投入し、少量の水で煮溶かした。

「飴なんて溶かして……ただの甘いシロップじゃない?」

「甘いだけじゃない。コーラにはシナモン、バニラ、柑橘類……数種類のスパイスが複雑に配合されている。これを煮詰めれば、極上の『ガストリック(カラメルソース)』になるんだ」

黒く艶やかに煮詰まったコーラ飴。

そこへ、俺は最後の隠し味を投入した。

「リリス、『よっちゃん酢イカ(もどき)』の袋に残った『酢』を寄越せ」

「えっ、あの酸っぱいやつ?」

「そうだ。その『酢』をコーラソースに加える!」

ジャァッ!!

甘ったるい香りが、酢の酸味でキュッと引き締まる。

バルサミコ酢のような、芳醇で深みのある黒いソース。

さらに『酢イカ』から染み出したイカの旨味も加わり、もはや駄菓子の領域を超えている。

「完成だ」

俺は丼に黄金スープと茹でた麺(これもイグニスが打った)を入れ、その上に巨大な『駄菓子カツ』をドカンと鎮座させた。

最後に、特製コーラ黒酢ソースを回しかける。

ドンッ!

【黄金スープの駄菓子カツラーメン 〜黒の衝撃を添えて〜】

見た目は、二郎系も裸足で逃げ出すほどのインパクト。

香りは、高級フレンチと場末の屋台が融合したような、背徳的な芳香。

「……で、できた」

その場にいた全員が、ゴクリと喉を鳴らした。

「……試食だ。リーザ、食ってみろ」

「は、はいぃぃ!! 待ってましたぁぁ!!」

リーザが震える手で箸を取り、カツにかぶりついた。

ザクゥッ!!

心地よい音。

そして、ジュワリと溢れる脂とソース。

「んんんんん〜〜〜ッ!!?」

リーザが白目を剥いて天を仰いだ。

「な、なんですのこれぇぇぇ!! 衣がザクザクで、中はトロトロ! めんたい味のピリ辛と、コーラソースの甘酸っぱさが口の中でダンスしてますわぁぁ!」

次はスープと麺をすする。

「はふっ、ずるるっ! ……濃厚! お魚の頭と野菜のクズだったはずなのに、どうしてこんなにクリーミーなんですの!? 止まりませんわ! 箸が、レンゲが止まりませんわぁぁ!」

リーザは一心不乱に麺を啜り、カツを貪り食う。

その姿は、高貴な王女ではなく、完全に『ラーメン中毒者』のそれだった。

「……俺も一口」

懐疑的だったリリスも、恐る恐るスープを飲んだ。

「……っ!! う、うっそ……!」

カチャン、とレンゲを落とす。

「悔しい……! 高級食材をふんだんに使った宮廷料理より……こっちの方が『脳に直接クル』味がする……!」

「ガハハハ! 最高だぜ! これならいける! 聖騎士団の連中もイチコロだ!」

イグニスも丼を抱えて飲み干している。

俺は腕を組み、満足げに頷いた。

「勝てるぞ。……A5ランクのステーキ? 上品なスイーツ? そんなもので、この『暴力的な旨味』には勝てない」

これは、人間のDNAに刻まれた「ジャンクへの渇望」をハックする料理だ。

一度食べれば忘れられない。匂いを嗅げば抗えない。

「さあ、開店準備だ。……このゴミ捨て場を、学園一の『行列店』に変えてやるぞ」

俺たちの瞳には、もはや絶望の色はなかった。

あるのは、下剋上を成し遂げる野心と、食欲を刺激するスパイスの輝きだけだった。

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