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EP 3

リリスの暴走、100連ガチャの悲劇

「――お待たせしましたわ! 私の『黄金の指先』の出番ですわね!」

ゴミ捨て場の横、という最悪の立地に設けられた俺たちの陣地。

そこに、リリスがふんすと鼻息を荒くして現れた。

彼女の手には最新型の魔導スマホ。画面には【食材召喚ガチャ】というアプリが表示されている。

「状況は把握していますわ。メイン食材はあるけれど、味の決め手となる調味料がない……そうですわね?」

「ああ。特にスパイスと、ソースのベースになる甘味が足りない」

リアンは頷いた。

市場で手に入れた廃棄食材は、ポテンシャルは高いが『癖』が強い。

魚のアラの生臭さ、スジ肉の獣臭さ。これらを消し、旨味に昇華させるには、強力なパンチ力のある調味料が必要不可欠だ。

「任せてください! 今月の私のお小遣い(魔法石)を全投入して、最高級の『ドラゴンペッパー(UR)』や『天使の砂糖(SSR)』を引いてみせますわ!」

リリスは自信満々に胸を張った。

彼女のスキル【課金召喚ガチャ・サモナー】。

魔力を込めた課金石を消費することで、異世界の食材やアイテムをランダムに呼び出す能力だ。

「さあ、見なさい! これが勇者の娘の財力……じゃなかった、運命力ですわ!」

リリスが画面の『10連召喚』ボタンを連打する。

ピロリン♪ ピロリン♪

「行くわよ! 100連、一気回し!!」

画面が眩い光に包まれる。

イグニスやリーザが「おおっ!」と身を乗り出す。

狙うは虹色の光(UR)。最低でも金色の光(SSR)が欲しいところだが――

シュゥゥン……。

画面から溢れ出したのは、なんとも頼りない『青白いノーマル』と『茶色のコモン』だけだった。

「……え?」

リリスの動きが止まる。

そして、虚空からボトボトと大量の『物体』が降り注いだ。

ドサッ! バラバラバラッ!

俺たちの足元に積み上がったのは、色とりどりの派手なパッケージたち。

美味ウマスティック・めんたい味』 ×50本

『シュワシュワ・コーラ飴』 ×30個

『よっちゃん酢イカ(もどき)』 ×20袋

『ベビースター(的な)揚げ麺』 ×大量

「…………は?」

全員が絶句した。

そこにあるのは、タロウマートの駄菓子コーナーで1個10円や20円で売られている、安っぽいお菓子ジャンクフードの山だった。

「う、嘘よ……! URは!? スパイスセットは!? なんで『美味スティック』しか出ないのよぉぉぉ!!」

リリスが頭を抱えて絶叫する。

「ぶ、物欲センサー……! 『調味料が欲しい』って念じすぎたせいで、センサーが反応してゴミ排出テーブルに移行したんだわ!」

「ゴミって言うな。美味スティックは美味いぞ」

俺は足元に転がってきた『めんたい味』を拾い上げた。

「終わった……。100連も回したのに……全部ハズレ……」

「これじゃ料理に使えねぇぞ? そのまま食うのか?」

リリスは涙目で地面に崩れ落ち、イグニスは呆れて袋を開けようとしている。

リーザだけは「お菓子パーティーですわ!」と喜んでいるが、これでは「三ツ星の味」には程遠い。

誰もがそう思った。

だが――俺だけは違った。

ビリッ。

俺は『美味スティック』の封を開け、匂いを嗅いだ。

強烈なシーズニングパウダーの香り。塩、化学調味料、唐辛子、魚介エキスパウダー。

次に『コーラ飴』を舐める。

強烈な甘みと酸味、そしてカラメルの苦味。

「……ふっ、くくくっ」

俺の口から、抑えきれない笑いが漏れた。

「リアン? 壊れちゃった?」

「……いや。勝ったぞ、リリス」

俺はリリスの肩をガシッと掴んだ。

「え?」

「これは『ハズレ』じゃない。……『大当たり』だ」

俺はお菓子の山を見渡した。

「いいか、お前ら。駄菓子ジャンクフードを馬鹿にするなよ? これは現代の食品科学が生み出した、『旨味の結晶体』なんだ」

子供が夢中になる味。それはつまり、人間の脳が「美味い」と感じる成分(糖分、脂肪、塩分、旨味調味料)が、黄金比で配合されているということだ。

「スパイスがない? 砂糖がない? ……ここにあるじゃないか」

俺は『美味スティック』を粉々に砕いてみせた。

「このパウダーは、数種類のスパイスと魚介エキスが凝縮された『魔法の粉』だ。……これを衣に使えば、スジ肉の臭みを消し飛ばし、爆発的な旨味を与えることができる」

「えっ……お菓子を、衣に?」

「コーラ飴もだ。これを煮詰めれば、複雑なスパイスと酸味を含んだ極上の『ガストリック(甘酸っぱいソース)』になる」

「飴を……ソースに?」

俺の脳内で、レシピが組み上がっていく。

廃棄食材という『素材の力』。

駄菓子という『化学の力』。

そして俺の『技術』。

この三つが融合した時、それはA5ランクのステーキすら凌駕する『暴力的な美味』へと進化する。

「立て、リリス。お前のガチャ運は死んでなかった」

俺はニヤリと笑い、中華鍋を構えた。

「さあ、調理開始だ。……このガラクタたちで、学園祭の客全員の舌を『中毒』にさせてやるぞ」

こうして、史上最安・史上最強の「駄菓子錬金術」が幕を開けた。

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