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第四章 予算ゼロの学園祭!

学園祭、予算ゼロの宣告

「……えー。全員、席につけ」

朝のホームルーム。

担任のクルーガ先生が、いつにも増して死んだ魚のような目で教室に入ってきた。

その手には、分厚い書類の束と、一通の豪奢な封筒が握られている。

「今日は大事な知らせがある。……来月、『ルミナス学園祭』が開催されることになった」

教室がどっと沸いた。

学園祭。それは学生の本分であり、青春の1ページ。

特にこの学園では、国中から貴賓や商人が集まる一大イベントだ。

「今回はクラス対抗の『模擬店レース』が行われる。ルールは簡単だ。三日間で最も高い売上を叩き出したクラスが優勝だ」

先生が黒板にチョークを走らせる。

【優勝賞品:リベラ理事長による『なんでも願いを叶える権』】

「……だそうだ。予算の増額でも、校則の改正でも、退学取り消しでも、何でも通るらしい」

その言葉に、クラスメイトたちの目の色が変わった。

「すげぇ! つまり、校庭に闘技場を作ってもいいってことか!」(イグニス)

「お菓子食べ放題の法律を作れますわね……!」(リーザ)

「僕の家の借金も帳消しに……!」(元裏切り者のバロン君)

欲望が渦巻く教室。

だが、リアンだけは冷静に先生の手元を見ていた。

あのクルーガ先生が、ただの吉報を持ってくるはずがない。

「……喜ぶのはまだ早いぞ、お前ら」

先生は重々しくため息をつき、手にした封筒を俺の机に置いた。

「模擬店の出店には『運営資金』が支給される。……通常は金貨50枚(500万円相当)だが」

俺は封筒を開けた。

中に入っていたのは、金貨……ではなく、一枚のペラペラの紙切れだった。

【請求書】

第3演習場・正門修理費(破壊者:リアン班)

魔の森・環境復旧費(水没・クレーター修復)

クルーガ教師・胃薬代(半年分)

その他・精神的慰謝料

差引支給額:金貨 0枚

「…………」

教室に静寂が走る。

俺は紙切れをヒラヒラとさせた。

「……先生。これ、印刷ミスですか?」

「現実だ。理事長からの直筆メッセージ付きだぞ。『自業自得よ♡』とな」

先生は遠い目をして、窓の外を見た。

「つまり、我が1年Aクラスの予算はゼロだ。水の一杯も仕入れられん」

「な、なんですってぇぇぇ!?」

リーザが悲鳴を上げた。

予算がないということは、食材が買えない。つまり、試食ができないということだ。

「ま、まだだ! 場所さえ良ければ、客からの寄付や前借りでなんとかなる!」

クラウスが食い下がる。

そうだ。立地は商売の命。メインストリートの入り口さえ確保できれば、水商売でも稼げる。

「……場所については、厳正なる抽選(という名の理事長の采配)の結果、ここになった」

先生が広げた学園見取り図。

俺たちのクラス『1-A』の文字が書かれていたのは――

【校舎裏・第2焼却炉横(ゴミ捨て場前)】

「……ゴミ捨て場じゃねぇか!!」

イグニスが机を叩き割った(また請求書が増える音がした)。

「臭い! 汚い! 人が来ない! 三重苦ですわ!」

「こんな場所でティータイムなんて無理だよぉ! 映えないよぉ!」

リーザとキュララが絶望の声を上げる。

メインストリートには、生徒会や貴族クラスの豪華なテントが並ぶ予定だ。

対して俺たちは、ハエが飛ぶゴミ捨て場の横で、予算ゼロで店を出せというのか。

「……詰んだな」

「解散だ。不貞寝しよう」

クラスの空気が一瞬でお通夜になった。

誰もが諦めかけた、その時。

「……ふっ、くくくっ」

静まり返った教室に、俺の忍び笑いが響いた。

「リアン? 何がおかしいんだ。気が触れたか?」

クラウスが心配そうに見てくるが、俺は椅子から立ち上がり、不敵な笑みを浮かべた。

「予算ゼロ? ゴミ捨て場の横? ……上等じゃないか」

「えっ?」

「勘違いするなよ、お前ら。俺たちは何だ? 優等生か? 金持ちか? ……違うだろ」

俺は黒板の『予算0』の文字を指差した。

「俺たちは『問題児』だ。……レールの上を走るだけの連中にはできない戦い方がある」

前世、三つ星シェフとして厨房に立っていた頃、俺は学んだ。

最高の食材を使えば、美味いのは当たり前。

だが、真の料理人は――『廃棄寸前の食材』すらも、魔法のように至高の一皿に変えることができる。

「金がないなら、拾えばいい。……ゴミ捨て場? 最高の立地だ。そこには『宝の山』が眠っているかもしれないからな」

「た、宝……?」

「そうだ。……行くぞ、野郎共」

俺は制服の袖をまくり上げ、呆然とするクラスメイトたちに号令をかけた。

「目指すは早朝の市場。……捨てられる運命にある『廃棄食材』を、根こそぎ強奪してくるぞ」

「……は?」

ポカンとする全員を置いて、俺は教室を出た。

逆境? ハンデ?

望むところだ。

金ピカのエリートたちが鼻で笑うような『ゴミ』で、奴らの高級料理をねじ伏せてやる。

料理人シェフの血が、これ以上なく騒いでいた。

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